ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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新天地ってドキドキするよね

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「ユーカ様。そちらに生えている赤色の香草を採ってくれませんか?」

「これでいいの?」


微笑みながら頷くグレイソンさんに摘んだ香草を渡すと、グレイソンさんは微笑んだまま私の頭を優しく撫でてくれた。

銀髪銀目のグレイソンさんはいつも微笑みを絶やさない優しい雰囲気のイケメンさんだ。

周りを威嚇しまくっていたサイラスとは全然似てないはずなのに、グレイソンさんに頭を撫でられるとサイラスと重なって見えて胸がキュンと苦しくなる。

サイラスもいつも頭を撫でてくれてたからなぁ。

私がサイラスを想ってボーッと見ていたらグレイソンさんの眉が気遣わしげに下げられたのに気付いて、慌ててエヘヘと笑って誤魔化した。


「今度はいつ出発されるのですか?」

「明後日。今度は暖かい国へ行くって言ってたよ」

「明後日……先週戻られたばかりだというのに、まったくフータ様は……」


グレイソンさんの下がっていた眉の間に皺が寄る。
私から受け取る香草を籠に入れながらブツブツとフータへの文句が止まらない。


私がフータに連れられてここへ来てもうすぐ1年になる。

獣人の国から遥か遠く離れたこの国は、大昔にフータが人間の生態を学ぶ為に利用していたらしい。
この屋敷と周りを見渡す限りの土地は全部フータの所有地らしく、山や草原が辺り一面に広がっていてとても長閑な良い場所だ。
フータは年に何回かフラリとこの屋敷にやって来て数日滞在し帰って行く。
グレイソンさんがこの屋敷の管理を任されるようになってからは毎年このパターンだったみたい。

だから1年前にフータが私を連れて暫くここで暮らすと言った時には驚いたんだって。


「フータ様にはいつも驚かされますが、ユーカ様をお連れになった時が一番驚きました。嬉しい驚きでしたけれど」


そう言ってパチッとウィンクをしたグレイソンさんに私が悶えたのは言うまでもない。……イケメンウィンクの威力たるや凄まじく私は悶えまくった。…………イケメン、恐るべし。

フータはこの屋敷を拠点にして1年前から私を色々な国へ旅に連れて行ってくれている。
1~2週間で戻る時もあれば1ヶ月くらい滞在してから戻る時もあるけど、いつでもグレイソンさんは笑顔で出迎えてくれるから、ホッとするんだよね。

旅の交通手段はフータ。

フータが体を大きく変化させて私を背中に乗せてくれる。
不死鳥は何でも有りなのか?と首を傾げる私にフータがニヤリと笑い『何でも有りだ』と、まるで悪代官のようなしたり顔をして言ってきたので、なんだかそれ以上は怖くて聞けなかった。

フータ的に船や馬車での移動は遅過ぎて我慢出来ないらしい。

まあ、フータが空を飛べば馬車で何日もかかるところが数時間だもんね。そりゃそうか。

でも、グレイソンさんは私を乗せてフータが空を飛ぶのをあまり賛成していない。


「レディが鳥の背に乗って空を移動などとは言語道断です。第一、危ないではありませんか。ユーカ様に何かあったらどうするおつもりです!」


こうして、グレイソンさんがフータに懇々とお説教をするという光景が、毎回の旅立つ前に見られるお決まりパターンになっていた。

グレイソンさんの努力も虚しくフータには全然効いてないけどね。
私もフータの背中に乗って空を飛ぶのは気持ち良くて好きだからその方がいいんだけど。ごめんね、グレイソンさん。


「色々な国を旅されてみてどうですか?」


香草を摘み終わって屋敷へ戻る道中、グレイソンさんにジッと見つめられながら聞かれた。
グレイソンさんは私がここに来てから、いつも私の様子を気にかけ見守ってくれている。

私はグレイソンさんを見上げてニコッと笑って見せた。


「新しい国へ入る前はいつもドキドキするけど楽しいよ。色んな国や人がいて、それを直に感じることが出来て、とっても興味深いし、勉強になるなぁって思うしね」

「そうですか」

「あ、でも食事の好みが合わない国も結構あるんだよね。そういう所へ行くと、早くここへ帰ってグレイソンさんのご飯が食べたいって思っちゃう」

「フフッ、それは光栄です。ユーカ様が戻られましたら腕に縒りをかけて料理をお作りいたしますね」

「うん!楽しみ~!」


目を細めて私の頭を撫でてくれるグレイソンさんとそんな話しをしながら、夕暮れに染まる道をゆったりと歩いてフータの待つ屋敷へと戻ったのだった。
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