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夕食はアンソニーの歓迎会を兼ねていたようで、全員揃ってテーブルを囲んだ。
お父様と王妃様が揃う席にお母様がいるのはとても珍しい。
夕食会は滞りなく進んだけれど、どこかピリピリとした緊張感がずっと続いていた。
お父様や王妃様、そしてお兄様も私達同様にアンソニーが来る事を知らされておらず、そのせいでお父様の機嫌が悪いらしい。というのを、ルーカスが隣に座るお兄様からこっそり教えてもらったらしい。
…………うん、お母様のやりそうな事だよね。
まさかお父様にも伝えていないとは思わなかったけれど、お母様は昔から私達の嫌がる事をするのが大好きだものね。
夕食会も無事に終わり、部屋に戻ろうとするアンソニーを王妃様が引き留めた。
「シャーロットとルーカスと仲良くしてあげてね。もしこの子達に何かあれば私はすぐに駆け付けますから。」
「僕からもお願いするよ。2人は僕の可愛い妹弟だ。何かあってからでは遅いからいつも目を光らせているのだけれど…………くれぐれもよろしく、ね?」
「はい。ご心配無く。」
ーー3人とも柔かに笑って話してる筈なのに、空気がピリピリとして痛い…………。
「シャーロット。オリビアが会いたがっていたから明後日お城へ呼んでおいたよ。明後日は学園もお休みだよね。一緒にお茶でもしてあげて。」
「まあ!勿論ですわ。楽しみにしてます!!」
あのお茶会以来、オリビア様は何かと私の心配をしてくれているから元気な姿をお見せしなくちゃ。
意気揚々と返事をする私に目を細めてお兄様が頭を優しく撫でてくれる。
お兄様は私がいくつになっても子供扱いして頭を撫でたり甘やかしたりするのだけれど、それが恥かしくもあり、嬉しくもある。
撫でてくれるお兄様の温かな手が私は大好きだから。
「おやすみ」と、私とルーカスの頭をポンポンとしてお兄様が自室へと戻っていった。
「君達は本当に仲が良い兄妹なんだね。」
「ええ。勿論よ。」
「お兄様は何でも出来て凄いんだぞ!僕達の自慢なんだから!」
…………弟よ。えへん!と胸を張ってお兄様の事を得意げに話す貴方の姿…………可愛過ぎます。
思わず頭をいい子いい子と撫でると、「何?」というように首をコテンと傾げるルーカス。…………貴方は私を萌え死にさせる気ですか。
「僕には無い感情だね。」
そう小さく呟いてから「おやすみ」と手を振りアンソニーも自室へと戻って行った。
「仲の良い私達が羨ましいのかしら……。」
「さあね。でもお姉様、アイツなんかに簡単に絆されないでよね。アイツ、かなり性格が捻じ曲がってるんだから。」
「分かってるわ。あの人いつも目が笑っていないもの。…………早くヒロインに出会って癒されるといいわね。あ、勿論私達の関わっていないところでだけれど。」
「…………お姉様は本当に甘いよ。そんなに優しいのによく悪役になろうなんて思えるよね。絶対ムリ。」
ハァ~と溜息を吐くルーカスにオーウェン様も無言で頷き同意している。
何よ。私だってやれば出来るんですからね!
ギャイギャイ話しながら、私とルーカスも部屋へと戻ったのだった。
「シャーロット、会いたかったわ!!体調はもういいの?」
「オリビア様!お久しぶりです!もうすっかり元気で学園にだって毎日通っていますわ!」
2日後に約束通りお城を訪れたオリビア様を正面玄関まで出迎え、オリビア様の手を引き私の部屋まで誘導する。
2階にある私の部屋へ向かう為に正面玄関から続く大階段を上りながら、オリビア様が手を引く私を見て目を細めた。
「本当に良かった。私の可愛い可愛いシャーロットに何かあれば、この先どうやって生きていけばいいのか分からなくなっていたところよ。」
「ふふっ。オリビア様、大袈裟ですよー。」
照れながらオリビア様の手を引く私を、何故かウットリと見つめるオリビア様。
オリビア様は小さい頃から私を可愛い可愛いと言って甘やかしてくれる。
あの侍女長に色々言われた頃、心を閉ざしていた私をいつも気にかけてお城に来る度に遊んでくれた優しい人だ。
「…………オリビア様のあれは本気だから怖いよね。昔からお姉様への愛情が重すぎるよ。」
「フフフッ。そこがオリビアのいいところなんじゃないか。僕がオリビアを婚約者に選んだ理由はそこだからね。シャーロットを心から愛してくれている人じゃないと僕はいらないから。」
「…………お兄様の愛も相当重いよ。」
「フフフッ。勿論、ルーカスの事も愛しているよ。僕は可愛い妹弟の為だったら何だって出来るからね。」
「…………僕への愛はほどほどでお願いします。」
私達の後ろからついて来るお兄様とルーカスが何やら楽しそうに話している。
いや?ルーカスが若干引いているように見えるのは気のせいかな?
階段も中程まで上がったところで、オリビア様が階段の手摺りに手を置く。
と、手摺りがグラリと揺れ音を立てて下に崩れ落ちた。
「キャアッ!!」
「オリビア様!!」
体重をかけていたオリビア様も手摺りと一緒にバランスを崩し一階へ落下しそうになる。
私は繋いでいた手を全力で引っ張り、オリビア様の落下を阻止する事に成功したのだけれど、その反動で今度は私が落下しそうになってしまった。
私は咄嗟にオリビア様と繋いでいた手を離す。
オリビア様を道連れにするという最悪の事態を回避出来た事にホッとした次の瞬間、フワリと体が宙に投げ出された。
ーー落ちる!!
強い衝撃を覚悟してギュッと目を瞑るけれど、落下直前に何か温かいモノに包まれたお陰で、確かに落ちた筈なのに想像ほどの衝撃を受けなかったのだ。
「大丈夫ですか?」
耳元で少し掠れた声に囁かれて目を開けると、目の前にオーウェン様の顔があって心臓がドキンと高鳴る。
「ロッティー!!怪我は!?」
「お姉様!!」
「シャーロット!!」
状況が把握出来ずにいるとバタバタとお兄様達が慌てて階段を下りて来た。
「どこか痛むところはありませんか?」
「!?」
またオーウェン様に耳元で囁かれてドキドキと鼓動が激しくなる。
段々と状況が見えてきて、私はオーウェン様を下敷きに床に倒れ込んでいた。
落下直前にオーウェン様が私を抱き留め身を挺して守ってくれたのだ。
「オーウェン様こそお怪我は!?」
「私は大丈夫です。」
ガバッと身を起こして私の下敷きになったままのオーウェン様の体をペタペタと触り怪我がないか確認する。
「シャ、シャーロット様……!」
「頭は?頭は打ってないですか!?」
「ちょっ……」
顔を近付けオーウェン様の頭をワサワサと触っていると、後ろからベリッと凄い勢いでオーウェン様から引き剥がされる。
驚いて後ろを振り返れば、お兄様とルーカスが怖い顔をして立っていた。
「ロッティー、怪我はしていない?」
「はい!オーウェン様が私を庇ってくださったので……」
お兄様に返事をしてから再びオーウェン様に怪我がないかを確認しようとしたのだけれど、お兄様が私の腕を掴んだまま離してくれないのでオーウェン様に近寄ることができない。
「ロッティー、もう少し自重しようか?」
「そうだよ!お姉様、もっと自分の行動に危機感を持たなくちゃ駄目だよ!」
「…………本当にごめんなさい。まさか落ちるとは思わなくて……。」
「「そっちじゃないよ。」」
え?
怖い顔の2人にハモって指さされた先には、真っ赤な顔をしたオーウェン様が座ったまま固まってしまっていた。
「ロッティーに体を触られたり頭を撫でられれば、どんな男もこんな骨抜きの状態になってしまうさ。中には勘違いしてしまう者もいるかもしれないから気を付けないとね。」
「お姉様の可愛さは男心を狂わせるんだから!」
…………ルーカスよ。貴方、何言ってるの。そんな訳ないじゃないの。
私がやれやれと呆れ顔でルーカスを見ると、逆にお兄様とルーカスからジト目までプラスされた呆れ顔で見返されてしまった。
…………なんで?
お父様と王妃様が揃う席にお母様がいるのはとても珍しい。
夕食会は滞りなく進んだけれど、どこかピリピリとした緊張感がずっと続いていた。
お父様や王妃様、そしてお兄様も私達同様にアンソニーが来る事を知らされておらず、そのせいでお父様の機嫌が悪いらしい。というのを、ルーカスが隣に座るお兄様からこっそり教えてもらったらしい。
…………うん、お母様のやりそうな事だよね。
まさかお父様にも伝えていないとは思わなかったけれど、お母様は昔から私達の嫌がる事をするのが大好きだものね。
夕食会も無事に終わり、部屋に戻ろうとするアンソニーを王妃様が引き留めた。
「シャーロットとルーカスと仲良くしてあげてね。もしこの子達に何かあれば私はすぐに駆け付けますから。」
「僕からもお願いするよ。2人は僕の可愛い妹弟だ。何かあってからでは遅いからいつも目を光らせているのだけれど…………くれぐれもよろしく、ね?」
「はい。ご心配無く。」
ーー3人とも柔かに笑って話してる筈なのに、空気がピリピリとして痛い…………。
「シャーロット。オリビアが会いたがっていたから明後日お城へ呼んでおいたよ。明後日は学園もお休みだよね。一緒にお茶でもしてあげて。」
「まあ!勿論ですわ。楽しみにしてます!!」
あのお茶会以来、オリビア様は何かと私の心配をしてくれているから元気な姿をお見せしなくちゃ。
意気揚々と返事をする私に目を細めてお兄様が頭を優しく撫でてくれる。
お兄様は私がいくつになっても子供扱いして頭を撫でたり甘やかしたりするのだけれど、それが恥かしくもあり、嬉しくもある。
撫でてくれるお兄様の温かな手が私は大好きだから。
「おやすみ」と、私とルーカスの頭をポンポンとしてお兄様が自室へと戻っていった。
「君達は本当に仲が良い兄妹なんだね。」
「ええ。勿論よ。」
「お兄様は何でも出来て凄いんだぞ!僕達の自慢なんだから!」
…………弟よ。えへん!と胸を張ってお兄様の事を得意げに話す貴方の姿…………可愛過ぎます。
思わず頭をいい子いい子と撫でると、「何?」というように首をコテンと傾げるルーカス。…………貴方は私を萌え死にさせる気ですか。
「僕には無い感情だね。」
そう小さく呟いてから「おやすみ」と手を振りアンソニーも自室へと戻って行った。
「仲の良い私達が羨ましいのかしら……。」
「さあね。でもお姉様、アイツなんかに簡単に絆されないでよね。アイツ、かなり性格が捻じ曲がってるんだから。」
「分かってるわ。あの人いつも目が笑っていないもの。…………早くヒロインに出会って癒されるといいわね。あ、勿論私達の関わっていないところでだけれど。」
「…………お姉様は本当に甘いよ。そんなに優しいのによく悪役になろうなんて思えるよね。絶対ムリ。」
ハァ~と溜息を吐くルーカスにオーウェン様も無言で頷き同意している。
何よ。私だってやれば出来るんですからね!
ギャイギャイ話しながら、私とルーカスも部屋へと戻ったのだった。
「シャーロット、会いたかったわ!!体調はもういいの?」
「オリビア様!お久しぶりです!もうすっかり元気で学園にだって毎日通っていますわ!」
2日後に約束通りお城を訪れたオリビア様を正面玄関まで出迎え、オリビア様の手を引き私の部屋まで誘導する。
2階にある私の部屋へ向かう為に正面玄関から続く大階段を上りながら、オリビア様が手を引く私を見て目を細めた。
「本当に良かった。私の可愛い可愛いシャーロットに何かあれば、この先どうやって生きていけばいいのか分からなくなっていたところよ。」
「ふふっ。オリビア様、大袈裟ですよー。」
照れながらオリビア様の手を引く私を、何故かウットリと見つめるオリビア様。
オリビア様は小さい頃から私を可愛い可愛いと言って甘やかしてくれる。
あの侍女長に色々言われた頃、心を閉ざしていた私をいつも気にかけてお城に来る度に遊んでくれた優しい人だ。
「…………オリビア様のあれは本気だから怖いよね。昔からお姉様への愛情が重すぎるよ。」
「フフフッ。そこがオリビアのいいところなんじゃないか。僕がオリビアを婚約者に選んだ理由はそこだからね。シャーロットを心から愛してくれている人じゃないと僕はいらないから。」
「…………お兄様の愛も相当重いよ。」
「フフフッ。勿論、ルーカスの事も愛しているよ。僕は可愛い妹弟の為だったら何だって出来るからね。」
「…………僕への愛はほどほどでお願いします。」
私達の後ろからついて来るお兄様とルーカスが何やら楽しそうに話している。
いや?ルーカスが若干引いているように見えるのは気のせいかな?
階段も中程まで上がったところで、オリビア様が階段の手摺りに手を置く。
と、手摺りがグラリと揺れ音を立てて下に崩れ落ちた。
「キャアッ!!」
「オリビア様!!」
体重をかけていたオリビア様も手摺りと一緒にバランスを崩し一階へ落下しそうになる。
私は繋いでいた手を全力で引っ張り、オリビア様の落下を阻止する事に成功したのだけれど、その反動で今度は私が落下しそうになってしまった。
私は咄嗟にオリビア様と繋いでいた手を離す。
オリビア様を道連れにするという最悪の事態を回避出来た事にホッとした次の瞬間、フワリと体が宙に投げ出された。
ーー落ちる!!
強い衝撃を覚悟してギュッと目を瞑るけれど、落下直前に何か温かいモノに包まれたお陰で、確かに落ちた筈なのに想像ほどの衝撃を受けなかったのだ。
「大丈夫ですか?」
耳元で少し掠れた声に囁かれて目を開けると、目の前にオーウェン様の顔があって心臓がドキンと高鳴る。
「ロッティー!!怪我は!?」
「お姉様!!」
「シャーロット!!」
状況が把握出来ずにいるとバタバタとお兄様達が慌てて階段を下りて来た。
「どこか痛むところはありませんか?」
「!?」
またオーウェン様に耳元で囁かれてドキドキと鼓動が激しくなる。
段々と状況が見えてきて、私はオーウェン様を下敷きに床に倒れ込んでいた。
落下直前にオーウェン様が私を抱き留め身を挺して守ってくれたのだ。
「オーウェン様こそお怪我は!?」
「私は大丈夫です。」
ガバッと身を起こして私の下敷きになったままのオーウェン様の体をペタペタと触り怪我がないか確認する。
「シャ、シャーロット様……!」
「頭は?頭は打ってないですか!?」
「ちょっ……」
顔を近付けオーウェン様の頭をワサワサと触っていると、後ろからベリッと凄い勢いでオーウェン様から引き剥がされる。
驚いて後ろを振り返れば、お兄様とルーカスが怖い顔をして立っていた。
「ロッティー、怪我はしていない?」
「はい!オーウェン様が私を庇ってくださったので……」
お兄様に返事をしてから再びオーウェン様に怪我がないかを確認しようとしたのだけれど、お兄様が私の腕を掴んだまま離してくれないのでオーウェン様に近寄ることができない。
「ロッティー、もう少し自重しようか?」
「そうだよ!お姉様、もっと自分の行動に危機感を持たなくちゃ駄目だよ!」
「…………本当にごめんなさい。まさか落ちるとは思わなくて……。」
「「そっちじゃないよ。」」
え?
怖い顔の2人にハモって指さされた先には、真っ赤な顔をしたオーウェン様が座ったまま固まってしまっていた。
「ロッティーに体を触られたり頭を撫でられれば、どんな男もこんな骨抜きの状態になってしまうさ。中には勘違いしてしまう者もいるかもしれないから気を付けないとね。」
「お姉様の可愛さは男心を狂わせるんだから!」
…………ルーカスよ。貴方、何言ってるの。そんな訳ないじゃないの。
私がやれやれと呆れ顔でルーカスを見ると、逆にお兄様とルーカスからジト目までプラスされた呆れ顔で見返されてしまった。
…………なんで?
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