田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
42 / 180
第四章 学園生活と地下アイドル

EP 2

しおりを挟む
実技試験? いえ、開墾です
 王立魔法学園の広大な演習場。
 普段は攻撃魔法の訓練が行われるその場所に、数百人の生徒たちが集められていた。
 彼らは皆、仕立ての良いローブや制服を着た、各国の貴族や有力者の子供たちだ。
 その視線の先にある教壇には、麦わら帽子を被った青年――カイトが立っていた。
「えー、今日は特別授業ということで、野菜の育て方を教えます。土作りはとっても大事で……」
 カイトがニコニコと話し始めた時、生徒の一人が声を荒げて遮った。
「馬鹿馬鹿しい! 帰らせてもらう!」
 立ち上がったのは、派手な金髪をかき上げた男子生徒だった。
 胸には公爵家の紋章。この学園の生徒会長にして、筆頭魔術師のレオンだ。
「僕たちはエリート魔術師だぞ? なぜ泥にまみれて、下民の仕事である『農業』など学ばねばならんのだ!」
 レオンの言葉に、取り巻きの生徒たちも同調する。
 「そうだそうだ!」「土いじりなんて汚らわしい!」
 カイトは困ったように眉を下げた。
「うーん……。農業は大事だよ? 美味しいご飯がないと、魔法を使う元気も出ないでしょ?」
「黙れ! どうしても授業をしたいなら、僕たちを納得させる『魔法』を見せてみろ! それが出来なければ即刻退場だ!」
 レオンが杖を突きつける。
 典型的な「噛ませ犬」ムーブである。
 後ろで見ていた龍魔呂がサングラスの奥で目を光らせ、竜神デュークが指を鳴らそうとしたが、カイトが手で制した。
「わかったよ。じゃあ、まずは『土作り』の実演を見てもらうね」
 カイトは演習場の真ん中へと歩き出した。
 そこは魔法の演習で踏み固められ、岩のように硬くなった荒れ地だ。
「土を耕すには、いい道具が必要なんだ。……おいで、『雷霆(らいてい)』」
 カイトが右手をかざす。
 シュンッ!
 空間転移で彼の手元に現れたのは、かつて勇者カイルが持っていた伝説の神造兵装だった。
 バチバチと紫電を放つ禍々しい剣。
「なっ……あれは、伝説の聖剣『雷霆』!? なぜ農夫が持っている!?」
 レオンが驚愕する。
 だが、次の瞬間、さらに信じられないことが起きた。
「よし、『耕しモード』!」
 ガシャン、ガガガッ!
 カイトの呼びかけに応じ、聖剣が変形した。
 刀身が折れ曲がり、柄が伸び、先端が幅広の刃へと変わる。
 一瞬にして、聖剣は神々しい輝きを放つ「万能鍬(くわ)」へと姿を変えたのだ。
 『(主よ! いつでも掘れます! 土を! 大地を!)』
 雷霆の喜びの振動が伝わってくる。
「いくよー! 『鬼神流・天地開墾(グランド・ティリング)』!」
 カイトは龍魔呂から見様見真似で教わった型で、鍬を振り下ろした。
 ドガァァァァァァァァァンッ!!!!
 轟音。
 そして、衝撃波。
 カイトが鍬を地面に突き立てた瞬間、演習場全体……いや、学園の敷地そのものが激しく揺れた。
「じ、地震かぁぁ!?」
「結界が割れるぞぉぉ!」
 生徒たちが悲鳴を上げてしがみつく。
 土煙が晴れた後。
 そこには、信じられない光景が広がっていた。
 カチカチだった荒れ地が、まるで高級羽毛布団のようにフカフカの黒土に変わっていたのだ。
 しかも、深さ2メートルまで完璧に耕され、空気を含み、石ころ一つない理想的な土壌になっている。
 所要時間、わずか一振り(1秒)。
「……は?」
 レオンは口をパクパクさせた。
 これは農業ではない。地形変動魔法(テラフォーミング)だ。
 土属性の最上級魔法使いが100人掛かりで数日かかる工事を、この男は鍬一本で終わらせた。
「ふぅ。いい土になったね! 次は種まきだ!」
 カイトは爽やかな笑顔で汗を拭った。
「ルナちゃん、肥料と水やりをお願いできるかな?」
「はいな! お任せくださいまし!」
 次に進み出たのは、銀髪の美少女ルナだ。
 彼女はカイトが蒔いた「ラディッシュの種(早生種)」に向かって、世界樹の杖を構えた。
「生徒の皆さんに、エルフ流の『成長魔法』をお見せしますわ! ……あ、ちょっと魔力込めすぎちゃったかも?」
 ドクンッ。
 嫌な音がした。
 ルナの杖から放たれた緑色の閃光が、種に着弾する。
「大きく、美味しくな~れ☆ 【超・豊穣の森(ギガ・フォレスト)】!」
 ズゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!
 地面が裂け、種が発芽した。
 だが、それは可愛い双葉ではなかった。
 直径1メートルはある極太のツルが、触手のようにのたうち回りながら天空へ昇っていく。
「ギャアアアアッ!? なんだこれぇぇぇ!?」
「しょ、植物が襲ってくるぅぅ!」
 演習場は一瞬にして、熱帯雨林……いや、「魔界樹の原生林」と化した。
 ラディッシュの葉は屋根より高く茂り、その実は家ほどの大きさになって地面から突き出している。
 さらに、過剰な魔力変異により、ラディッシュが「キシャーッ!」と鳴いている。
「あわわ……。レオン様! 飲み込まれます!」
「くっ、火魔法で焼き払え……うわぁぁぁ!」
 レオンたちが抵抗しようとするが、魔界ラディッシュの生命力は魔法を吸収してさらに巨大化する。
 生徒たちはツルに巻かれ、空中に吊り下げられた。
「あーあ……。ルナ、またやりすぎだ」
 後ろで見ていた龍魔呂が呆れて呟く。
 だが、カイトの反応は違った。
「すごい! たった数秒で収穫できるサイズになるなんて! 魔法って便利だなぁ!」
 カイトは巨大ラディッシュ(唸り声を上げている)に近づき、ペチペチと叩いた。
「よしよし、元気な子だ! さあ、収穫の時間だよ!」
 カイトが雷霆(鍬モード)を振るうと、暴れていたラディッシュが一瞬でおとなしくなり、綺麗にスライスされて皿の上に落ちた。
 カイトはそれを一切れつまみ、ツルに捕まっているレオンの口に放り込んだ。
「ほら、食べてみて! 採れたてだよ!」
「むぐっ……!?」
 レオンは抵抗しようとしたが、口の中に広がった瑞々しい甘さと辛味に、目を見開いた。
 魔力をたっぷりと吸った野菜。
 それは、彼が今まで食べてきた高級料理が霞むほどの、生命の味だった。
「う……うまい……。なんだこれは……」
 レオンの目から涙がこぼれた。
 完敗だ。
 土作りで地形を変え、育成で魔界を作り、味で魂を震わせる。
 これが……これが「農業」なのか!?
 カイトはニッコリと笑って、生徒たちを見渡した。
「どうかな? 農業って、奥が深くて面白いでしょ?」
 ツルに吊るされた数百人のエリート生徒たちは、首がもげるほど激しく頷いた。
「「「はいぃぃぃッ! 参りましたぁぁぁッ!!」」」
 こうして、王立魔法学園の実技試験は、カイトによる「演習場のジャングル化(および生徒の洗脳)」という形で幕を閉じた。
 この日以降、学園には「園芸部」が新設され、最も人気のあるエリート部活となるのだが、それはまた後の話。
 だが、問題はまだ終わらない。
 カイトはお腹を空かせていたのだ。
「うーん、動いたらお腹空いたな。学食に行ってみようか!」
 次回、カイトが学食の「薄味スープ」に絶望し、鬼神龍魔呂が厨房をジャックする!
 「学食革命! 鬼神のカレーライス」へ続く!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...