田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
44 / 180
第四章 学園生活と地下アイドル

EP 4

しおりを挟む
転生者の痕跡と、海への誘い
 鬼神カレーによる学食革命から数時間後。
 生徒や教師たちが満腹で幸せな夢を見ている頃、カイトは腹ごなしに学園内を散策していた。
「へえ、さすが魔法学園。図書館も迷路みたいだなぁ」
 カイトが迷い込んだのは、校舎の地下深くにある『禁書図書館』だった。
 本来なら厳重な結界で封印されている場所だが、引率の女神ルチアナが「あー、ここ埃っぽいわね。換気しとくわ」と結界ごとドアを吹き飛ばしていたため、カイトはフリーパスで入ってしまったのだ。
「うーん、読めない字ばっかりだ」
 棚には、古びた魔道書や歴史書が並んでいる。
 カイトが適当に一冊の本を手に取った時だった。
 ピリッ。
 指先に静電気が走ったような感覚があった。
 その本は、他の豪華な装丁の本とは違い、ボロボロの革表紙で、背表紙には何も書かれていない。
 だが、カイトの本能が「これを読め」と告げていた。
「なんだろう……。懐かしい感じがする」
 カイトはページを開いた。
 そこに書かれていた文字を見て、彼は息を呑んだ。
『4月1日。 今日から異世界生活が始まる。マジでスマホが圏外だ。詰んだ』
「――!!」
 見間違えるはずがない。
 ひらがな。カタカナ。漢字。
 それは、この世界には存在しないはずの「日本語」だった。
「これ、日本人が書いた日記だ……!」
 カイトは夢中でページをめくった。
 筆跡は乱れており、書いた人物の苦悩が滲んでいる。
『5月。魔法が使えるようになった。でもウォシュレットがないのが辛い』
『8月。魔王を倒せと言われた。ブラック企業かよ。帰りたい』
『12月。勇者と呼ばれてチヤホヤされ始めた。でも、飯が不味い。味噌汁が飲みたい。米が食いたい』
「わかる……! わかるよ、先輩……!」
 カイトは激しく同意した。
 この手記の主は、数百年前、あるいは数千年前の「勇者」なのだろう。
 伝説に残る偉業の裏で、彼は故郷の味と文明の利器を求めて孤独に戦っていたのだ。
「苦労したんだなぁ……」
 カイトの目頭が熱くなった。
 俺にはポチや龍魔呂さん、みんながいる。美味しい野菜も作れた。
 でも、この先輩はたった一人で……。
 しんみりとした気持ちで、カイトは最後のページを開いた。
 そこには、震える文字でこう記されていた。
『勇者を引退したら、南の海へ行きたい。
 新鮮な魚が食いたい。
 刺し身。寿司。海鮮丼。
 あぁ……醤油とワサビで、脂の乗ったマグロを腹いっぱい食いたい……』
 日記はそこで終わっていた。
 彼が海に行けたのか、寿司を食べられたのかは分からない。
 カイトは本を閉じた。
 そして、静かに目を閉じた。
 ……。
 …………。
 グゥゥゥゥ~~~~ッ。
 盛大な腹の虫が、静寂を破った。
「……海鮮」
 カイトの脳内から「先輩への同情」が消え去り、代わりに巨大な文字が浮かび上がった。
 【 シ ー フ ー ド 】
「そ、そういえば! ピザのバリエーションを増やすなら、シーフードピザだよな!」
 カイトの口の中に、幻の味が広がる。
 プリプリのエビ。弾力のあるイカ。濃厚なホタテ。
 それがチーズと絡み合い、こんがりと焼けたピザ生地の上で踊る光景。
「やばい、ヨダレが出てきた……! 先輩の無念(食欲)、俺が晴らすしかない!」
 カイトは本を棚に戻し(一礼してから)、猛ダッシュで地上へと駆け上がった。
 †
 地上では、神々が退屈そうに待っていた。
「遅いなカイトの奴。迷子にでもなったか?」
「あら、カイト様ならあそこで走ってきますわよ」
 ルナが指差す先から、カイトが息を切らして戻ってきた。
「みんな! 大変だ!」
「どうしたカイト殿! 敵襲ですか!?」
 ルーベンスが身構える。
 カイトは真剣な眼差しで、拳を突き上げた。
「海へ行くぞ!!」
「……は?」
「海だよ、海! ここから南へ行けば港町があるはずだ! そこで新鮮な魚介類をゲットして、シーフードピザを作るんだ!」
 カイトの熱意に、全員がキョトンとした。
 だが、すぐにそれぞれの思惑が動き出す。
「海か……。フン、塩ラーメンの出汁を探すのも悪くない」
 竜神デュークがニヤリとする。
「海鮮……。刺し身に合う日本酒でも造るか」
 龍魔呂が渋く頷く。
「海! 水着! カイトとのビーチデート! 行くに決まってるでしょ!」
 魔王ラスティアと不死鳥フレアがハイタッチする。
「きゅぅ!(魚!)」
 ポチも尻尾を振って賛成だ。
「決まりだね! 学園長先生に挨拶して、すぐに出発だ!」
 †
 数分後。
 正門で見送りに来たマーリン学園長は、涙を流してカイトの手を握っていた。
「カイト様……! 本当に、もう行かれるのですか? もっと滞在して、カレーの作り方を……」
「あはは、長居すると迷惑かけちゃいますから。それに、海が僕を呼んでいるんです!」
 カイトは爽やかに笑った。
 学園長は内心で(助かった……これ以上いたら校舎が消滅するところだった……)と安堵しつつも、深々と頭を下げた。
「どうかご武運を! 貴方様が蒔いてくださった『農業の種』、大切に育てますぞ!」
「はい! 期待してます!」
 カイト一行を乗せた馬車が、砂煙を上げて出発する。
 その背後には、ジャングル化した演習場と、カレーの匂いが染み付いた校舎、そして「農業こそ最強の魔法である」と洗脳されたエリート生徒たちが残された。
 目指すは南。
 潮風香る港町「ルナミス」。
 そこには、新鮮な魚介類だけでなく、一人の貧乏な歌姫と、過保護な海の女王が待ち構えている。
 カイト農場の勢力拡大(と宴会)の旅は、まだ終わらない。
 次回、待望の水着回!
 「海だ! 水着だ! 密漁だ!?」へ続く!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...