田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
84 / 180
第八章 スローライフな学校を作る

EP 4

しおりを挟む
働かない三柱と、ラーメン屋台のオヤジ
​夜の帳が下りたカイト農場の一角に、赤提灯が揺れていた。
そこには、木造のリヤカーを改造した古き良き屋台が店を構えている。
暖簾(のれん)には達筆な文字で『麺屋 覇王』と書かれていた。
​「……カイトよ。食ってみろ。ついに完成したぞ」
​屋台の主、竜王デュークがドンブリを差し出した。
普段の威厳あるローブ姿ではなく、ねじり鉢巻に前掛けという、完全に「ラーメン屋の頑固オヤジ」スタイルである。
​「おぉ、いい香りだねデューク」
​カイトが受け取ったラーメンは、黄金色に輝いていた。
スープは、凶悪な魔獣(※カイトが狩った余り)の骨を三日三晩煮込み、麺は世界樹の葉を練り込んだ特製麺。具材には、分厚い角煮のようなチャーシューが鎮座している。
​「今回のスープは、豚骨とドラゴンの骨のダブルスープだ。コクが違うぞ」
​「へぇ~、いただきます」
​カイトがスープを啜る。
濃厚な旨味が口内で爆発し、食べた瞬間に体中の魔力回路が強制的に活性化する感覚。普通の人なら魔力酔いで気絶するレベルだが、カイトには「ちょっと元気が出るスープ」程度だ。
​「うん! 美味い! デューク、腕上げたね」
​「ふッ、そうだろうそうだろう! 麺の湯切りに『時空魔法』を使った甲斐があったというものだ」
​竜王が満足げに腕を組んだ、その時だった。
​「……ちょっと、デューク。いい加減にしてよぉ……」
​闇の奥から、ゾンビのような足取りで一人の美女が現れた。
不死鳥フレアだ。
普段の優雅さはどこへやら、髪はボサボサ、目の下には濃いクマができている。その背中からは、負のオーラが立ち昇っていた。
​「あら、フレア。顔色が悪いよ? ラーメン食べる?」
​カイトが心配して声をかけるが、フレアはデュークを睨みつけたまま、屋台のカウンターをバンッ! と叩いた。
​「ラーメンなんて食べてる場合じゃないわよ! 西の大陸で起きた『邪神の欠片』の封印修復、あれ貴方の担当エリアでしょ!? なんで私が残業して直してるのよ!」
​フレアの悲痛な叫びが夜空に響く。
世界の調停者としての業務。その大半をデュークがサボり、真面目なフレアが肩代わりしているのが現状だ。
​しかし、デュークは湯切りザルを持ったまま、冷徹に言い放った。
​「黙れ小娘。今、麺が伸びる」
​「世界と麺、どっちが大事なのよぉぉぉッ!!」
​「愚問だな。麺だ」
​「キーーーッ!! もう嫌ぁ! 仕事したくなぁい!!」
​フレアはその場に崩れ落ち、カウンターに突っ伏して泣き出した。
​「私だって……私だって、たまにはオシャレして街コンに行きたいわよぉ……。こんな残業ばかりじゃ、お肌も荒れるし、婚期も逃すし……不死鳥なのに過労死しちゃうわよぉ……」
​「あーあ、また始まった」
​屋台の隅で、すでにラーメンを啜っていた銀髪の青年――狼王フェンリルが、替え玉を注文しながら呆れたように言う。
​「おいオヤジ、ニンニク増しだ。……フレア、諦めろ。こいつに何を言っても無駄だ。それより、明日は俺と喧嘩(あそ)ぼうぜ?」
​「フェンリル! 貴方もよ! 昨日、東の国で氷山を作って放置したでしょ! あの後始末書を書いたの、誰だと思ってるの!?」
​フレアの怒りの矛先がフェンリルに向く。
だが、フェンリルは「知らねーよ」とそっぽを向き、餃子にタレをつけていた。
​「うぅ……うぅ……どいつもこいつも……」
​涙で化粧が崩れ、パンダのようになったフレア。
カイトはそんな彼女を見かねて、そっとコップを差し出した。
​「フレア、これ飲む?」
​「……カイト様ぁ……」
​差し出されたのは、ルチアナが隠し持っていた地球の酒、『ストロングな缶チューハイ』だ。
フレアはそれをひったくると、プシュッと開けて一気に煽った。
​「ぷはぁーっ!! ……うっ、美味しい……でも、虚しい……」
​アルコールが回り、泣き上戸モードに突入したフレアは、カイトの手をギュッと握りしめた。
​「ねぇカイト様ぁ~、聞いてくださいよぉ~。私、3000年も生きてるのに、まだ彼氏いないんですよぉ? おかしいと思いません? 私、世界一美しいはずなのにぃ~」
​「うんうん、フレアは綺麗だよ」
​「でしょぉ~!? なのに、寄ってくるのは封印された邪神とか、脳筋のドラゴンとかばっかり! 私が欲しいのはねぇ、優しくてぇ、強くてぇ、野菜を育ててくれるような殿方なんですよぉ!」
​それは完全に目の前の人物のことだが、カイトは「そんな人が見つかるといいねぇ」と、孫を見るような目で頭を撫でている。
​「ううっ……カイト様のバカぁ……優しさが染みるぅ……」
​「よしよし。デューク、彼女に特製ラーメンを一杯」
​「承知した。……フン、泣くほど腹が減っていたなら、最初からそう言えばいいものを」
​デュークは手際よく麺を茹で上げ、ドンブリに注ぐ。
目の前に置かれた熱々のラーメン。
フレアは涙を拭い、箸を手に取った。
​「……いただきます……ズルッ……うっ、美味しい……悔しいけど美味しいわよ、このラーメンバカァ……」
​文句を言いながらも、胃袋を掴まれているフレアは完食し、最後は笑顔で寝落ちした。
その寝顔を見ながら、デュークとフェンリル、そしてカイトは静かにスープを啜る。
​「……まあ、あいつも苦労人だな」
​「お前が言うな、デューク」
​カイトのツッコミは、夜風に消えた。
こうして、世界の均衡は(主にフレアの犠牲によって)今日も保たれているのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...