田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十章 ザワザワするカイト達

EP 3

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【新曲】リーザ『GO! GO! 五円御縁☆スパチャ伝説』で物理的に埋まる
​天魔窟の中央広場には、カジノ客の射幸心を煽るための特設野外ステージが設置されていた。
普段は妖艶な踊り子が舞うその場所に、今は「賽銭箱」という名の巨大な集金ボックスを抱えたアイドルが立っていた。
​「みんなー! こんばんわー! カイト農場の歌姫、リーザちゃんだよー!」
​フリフリの衣装(ポケット多め)に身を包んだリーザが、満面の笑みで叫ぶ。
観客は、ギャンブルで勝ったばかりの魔族や、これから勝負に向かうオークたち。欲望にまみれた彼らにとって、リーザのキラキラしたオーラは眩しすぎた。
​「今日は、この街にピッタリの新曲を持ってきたの! 聴いてね! タイトルは……『GO! GO! 五円御縁☆スパチャ伝説』!!」
​「タイトルが直球すぎるだろ!」
​ステージ袖で、会計係のルーベンスがツッコミを入れるが、爆音のイントロがかき消した。
BPM185。心臓を叩くような高速ビートだ。
​(デデデン! デデデン! チャリーン!💰)
​「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ!」
​リーザが激しくステップを踏む。
​「五円御縁! 五円御縁! ハイ!(ハイ!)♪
五円御縁! 五円御縁! ハイ!(フッフー!)♪」
​その掛け声に合わせて、観客の魔族たちがノリ始めた。
「五円? よく分からんが景気のいい曲だ!」
「縁起が良さそうだぜ!」
​「皆の御縁も 五円から!(そーれ!)♪
私に頂戴 御縁玉!(ちょーだい!)♪
お賽銭箱はここよ 電子の海だよスパチャよろしく!(チャリンチャリン!)♪」
​リーザが巨大な賽銭箱を掲げる。
すると、客席から「俺の勝ち分を持ってけー!」「女神(アイドル)への貢ぎ物だー!」と、小銭どころか金貨や宝石が投げ込まれ始めた。
​「いいわ! その調子よ!」
​リーザの目が「¥」の形に光る。
そして曲は、ルーベンスが最も恐れていたBメロへ突入した。
​「スーパーで買い物 お会計(えー?)♪
財布の中身は 全部五円(マジー!?)♪
ジャラジャラ出したら レジのおばちゃん♪
笑顔でブチ切れ 『両替してこーい!』(ごめんなさーい!)♪」
​「やめろぉぉぉッ!!」
​ルーベンスが頭を抱えてうずくまった。
それは実話だ。
リーザが以前、カイトから貰った大量の小銭(五円玉)だけで買い物をしようとし、レジを大渋滞させて店員をキレさせた事件。それを歌詞にするとは、なんと恥知らずな!
​だが、観客には大ウケだった。
「あるある! 小銭って邪魔だよな!」
「俺たちが両替してやるぜー!」
​興奮した客たちが、財布の中身をぶちまけ始めた。
ステージ上に、金貨の雨が降り注ぐ。
​「一円じゃ 軽すぎるし(ふわふわ)♪
百円じゃ 生々しい(ギラギラ)♪
五十円は 愛が重いわ~(おっも~い…)♪
五円が丁度よい 距離感~(ジャストフィット!)♪」
​リーザは金貨の雨を巧みに避け……きれずに、徐々に足元が埋まっていく。
だが歌うのを止めない。
なぜなら、サビこそが稼ぎ時だからだ!
​「黄色でピッカピッカ! ラッキーカラー!(イェッタイガー!)♪
穴が開いてる 見通し良好☆♪
だ、け、ど!♪」
​リーザが絶叫する。
​「チリも積もれば 山となる!(フッフー!)♪
御縁が集まれば アイドルになれるわ!(オレモー!)♪
君の五円で 推しを育てて♪
目指せ! 銀河のスーパーアイドル!(ワッショイ!)♪」
​「うおおおおッ!! 育ててやるぜぇぇぇッ!!」
​ドサササササッ!!
興奮が頂点に達したオークの富豪が、持っていた「金貨の麻袋」をステージに放り投げた。
それに続いて、四方八方から金塊、宝石、札束が投げ込まれる。
​「きゃっ!? ちょっ、多すぎ……!」
​「GO! GO! 五円! 愛の値段はプライスレス(だけど五円は欲しい!)♪」
​最後のフレーズを歌い切った瞬間。
リーザの姿は消えていた。
そこにあるのは、うず高く積まれた「財宝の山」だけ。
​「……リ、リーザちゃん!?」
​最前列でペンライトを振っていたカイトが目を丸くする。
シーンと静まり返る会場。
すると、金貨の山の中から、ニョキッと一本の手が突き出され、ピースサインをした。
​「……(ぶはっ! 大漁よ!)」
​リーザは埋もれながらも、しっかりと賽銭箱を抱きしめていたのだ。
そのド根性に、会場から割れんばかりの拍手が巻き起こった。
​「すげぇ! あいつこそ真の強欲アイドルだ!」
「俺たちの負けだ!」
​   ◇
​一方、カジノタワーの最上階。
その光景を見ていたキュルリンは、持っていたキャンディを噛み砕いた。
​「……なんなの、あの女」
​彼女の額に青筋が浮かぶ。
自分のカジノで使われるはずだった金が、あのアイドルの懐(賽銭箱)に吸い込まれていく。
それは、賭博王としてのプライドを逆撫でする光景だった。
​「私の客から搾取するなんて……いい度胸ね」
​キュルリンは目を細め、モニターの中のリーザ(金貨の山)を睨みつけた。
​「カイトお兄さんだけじゃなく、あの泥棒猫たちも……全員、私のゲームで丸裸にしてあげるわ!」
​リーザのライブは、期せずして「天魔窟vsカイト農場」の全面戦争のゴングを鳴らしてしまったようだ。
ルーベンスがステージ上で必死に金貨を回収(両替)している姿だけが、哀愁を誘っていた。
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