田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十章 ザワザワするカイト達

EP 9

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【伝説】親番ルナ。天和・大三元・字一色(トリプル役満)
​卓上の空気は、極限まで張り詰めていた。
いや、正確には「一方的な虐殺」の空気が支配していた。
​「糞ッ! 次だ! 『魔王城の権利書』を賭ける!」
​ルーベンスが血走った目で叫び、懐から新たな書類を叩きつけた。
彼は既に、魔王軍の予算、自分の退職金、そしてあろうことか「魔王ラスティアの身柄」まで賭けて負けていた。
​「ちょっとルーベンス! 勘弁してよ!」
​後ろで見ていたラスティアが悲鳴を上げる。
​「さっきは私を賭けて負けたじゃない! 私、キュルリンのメイドになるなんて嫌よ!?」
​「うるさい! 勝てば取り戻せるんだ!」
​ギャンブル沼にハマった男の典型的な思考だ。
それを見ていたカイトも、なぜか対抗心を燃やして手を挙げた。
​「じゃあ、こっちは**『農場の権利書』**だよ! あと、ポチの所有権も賭ける!?」
​『ぐるるる……(マジかよこの雀鬼共は!? 俺をチップ扱いすんな!)』
​足元でポチが恐怖に震えている。
カイト農場の全てが、この卓上に積まれていた。
​「えへへ……いいねぇ、ゾクゾクするねぇ♡」
​キュルリンは恍惚の表情を浮かべた。
彼女のイカサマは完璧だ。ルーベンスの手牌は透けて見えるし、自分のツモは自由に操作できる。
(馬鹿なカモたち。この局でトドメを刺して、皆まとめて吹き飛ばしてあげるよ♡)
​そして迎えた、南場・オーラス。
親番(ディーラー)は、ここまで鳴かず飛ばずの東家・ルナだ。
​全自動卓から牌がせり上がる。
ルナの前に、14枚の牌が並んだ。
​その瞬間。
​ゴゴゴゴゴ……ッ!
​ルナの小さな背中から、**『七色のオーラ』**が立ち昇った。
​「……ん?」
​キュルリンの動きが止まる。
なんだ? このプレッシャーは。
ただの子供だと思っていたエルフから、神々しいまでの光が溢れ出している。
​ざわ……ざわ……
​卓上の空気が歪む。
イカサマで作られた磁場が、強制的に書き換えられていくような感覚。
​「な、何……? 何が起きているの?」
​キュルリンの額に冷や汗が伝う。
ルーベンスは眼鏡を拭きながら不思議そうに言った。
​「ルナが親だろ? 配牌が配られただけだが、それが何か?」
​「ま、まさか……」
​立会人のリベラだけが、その異常事態に気づき、口元を押さえた。
​「ルチアナ様! ルナさんの手牌を! あれを!」
​「え? なになに?」
​ルチアナが覗き込む。
​「ルナ! あんたそれ!!」
​「え?」
​ルナはキョトンとして、自分の手元にある牌を見つめた。
​「なんかぁ、全部キラキラしてて綺麗ですねぇ。……これ、あがってるんですかぁ?」
​コトッ。
ルナは無造作に、配られたばかりの14枚の牌を倒した。
​白・白・白 發・發・發 中・中・中 東・東・東 南・南
​文字(漢字)の牌しかない。
しかも、三元牌(白發中)が全て揃っている。
そして何より、「第一巡目」。まだ誰も牌を捨てていない。
​「……はい?」
​時が止まった。
​「て、天和(テンホー)……?」
​キュルリンの声が裏返る。
配牌の時点でアガリ形が完成している、天文学的確率の役。
だが、それだけではない。
​「大三元(ダイサンゲン)……そして、字一色(ツーイーソー)……!?」
​リベラが震える声で役を読み上げた。
役満、役満、役満。
麻雀のルールにおける破壊神。
​親のトリプル役満。
点数にして、14万4000点(※ローカルルール適用なら青天井)。
​「ひ、ひいいぃッ!? な、なんだそれはぁぁぁッ!!」
​キュルリンが絶叫し、椅子から転げ落ちた。
イカサマ? 積み込み?
そんな次元ではない。これは「世界そのものがルナに味方した」結果だ。
​「つ、つまり……」
​リベラは六法全書を開き、契約内容を確認した。
​「この点数により、キュルリン殿はトビ(破産)……いや、即死ですわ。よって……」
​彼女は呆然としながら宣告した。
​「賭けられていた『ラスティア』『魔王城』『農場』『ポチ』……そして担保になっていた『天魔窟の全権利』は……全てルナさんの物になります」
​「な、なんですってぇぇぇぇ!?」
​全員が絶叫する。
ルーベンスは泡を吹いて気絶し、カイトは「すごい! ルナ天才!」と拍手している。
​大陸最大の裏社会・天魔窟。
そのオーナーが、たった今、可愛らしいエルフの少女に変わった瞬間だった。
​「わぁ~、私がオーナーですかぁ?」
​ルナは状況をよく理解していないまま、首をコテンと傾げ、キュルリンに向かって無邪気に微笑んだ。
​「てへ☆」
​その笑顔は、どんな魔王よりも、どんな賭博王よりも、恐ろしく、そして最強だった。
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