田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
122 / 180
第十二章 ファミレス12時間耐久レース

EP 2

しおりを挟む
【脱走】筋肉痛で動けない。そうだ、天魔窟(楽園)へ行こう
​地獄の早朝ランニングと、1000回のスクワットが終わった後の昼休憩。
カイト農場の食堂は、戦場のような静けさに包まれていた。
​「……うぐっ……手が……震えて……」
​風紀委員長リベラが、フォークを持ったまま小刻みに震えている。
彼女の目の前にあるのは、デューク教官監修の『筋肉定食(茹でたササミとブロッコリーのみ)』だ。
​「……フォークが、重いですわ……。ササミが……逃げていきますの……」
​カチャカチャカチャ……。
震動でササミを突き刺すことすらできない。彼女の腕の筋肉は、完全に限界を迎えていた。
​「もう……無理……」
​隣の席では、創造神ルチアナがテーブルに突っ伏し、白い灰のようになっている。
​「私、神よ……? なんでこんな、生まれたての子鹿みたいにプルプル震えなきゃいけないの……?」
​「脚が……私の美脚が……丸太のように感覚がないわ……」
​魔王ラスティアも椅子から立ち上がれない。
午前中のトレーニングだけで、カイト農場の女性陣(世界最強クラスの面々)は完全に壊滅していた。
​「……皆さん、聞いてください」
​その時、テーブルの下からひょっこりとルナが顔を出した。
彼女もまた、エルフ特有のひ弱さでプルプル震えているが、その瞳だけは異様な輝きを放っていた。
​「……こ、このままでは、午後の『対人戦闘訓練(実戦)』で殺されますぅ」
​「!?」
​全員が息を呑む。
相手はあの竜王デュークだ。筋肉痛の状態で戦えば、物理的に挽肉にされる未来しか見えない。
​「リベラさん……このまま法を守って死にますか? それとも、法を破って生き延びますか?」
​「……法より、今は筋肉(マッスル)の脅威が勝りますわ」
​リベラが苦渋の決断を下した。
生命の危機を前に、風紀委員長のプライドなどササミより軽い。
​「で、でも逃げるってどこへ? 農場の外周はデュークの結界が……」
​フレアが怯える。
だが、ルナはニヤリと笑い、食堂の窓の外に見える「ネオン街」を指差した。
​「……あそこへ行くのですぅ」
​「あそこって……天魔窟?」
​「はい。あそこには、『デモンズ・ガスト』という、24時間営業の聖域(ファミレス)がありますぅ」
​「ファミレス……!」
​その甘美な響きに、女性陣の目の色が変わった。
​「ふかふかのソファ……! 空調の効いた店内……!」
​「そして何より……『ドリンクバー』がありますぅ!」
​ルナが悪魔の囁きを続ける。
​「何時間座っていても怒られません。メロンソーダも飲み放題。……そこなら、デュークさんの筋肉も届きませんよぉ」
​「行くわ!!」
​ルチアナがガバッと顔を上げた。
​「私、行く! メロンソーダの海に溺れるのよ!」
​「私も行きますわ! ササミはもうこりごりです!」
​意見は一致した。
作戦名は『オペレーション・ドリンクバー』。
​「……でも、移動手段は? 歩くなんて無理よ?」
​「大丈夫ですぅ。……丁度いいところに、タクシーがいますから」
​ルナが視線を向けた先。
校庭の隅で、午前の重り引きで疲れ果て、日向ぼっこをして昼寝をしている始祖竜ポチの姿があった。
​   ◇
​「……おい、起きなさいトカゲ」
​『……んご? 誰がトカゲだ……』
​ポチが目を開けると、そこには鬼気迫る形相の美女軍団が立っていた。
​「私たちを天魔窟まで運びなさい。今すぐに」
​『あぁ? なんで俺が……今は休憩中だぞ……』
​「言うことを聞くなら、ファミレスで『山盛りフライドポテト』を奢ってあげるわ」
​『!!』
​ポチの鼻がピクリと動いた。
デュークの監視下で、彼もまたササミ地獄に喘いでいたのだ。
​『……ポテト。塩多めか?』
​「ええ。ケチャップとマヨネーズもつけ放題よ」
​『……乗れ。最短ルートで飛ばすぞ』
​交渉成立。
ポチが翼を広げ、低空飛行の態勢をとる。
女性陣は筋肉痛の体に鞭打ち、転がるようにポチの背中によじ登った。
​「急いで! デュークが戻ってくるわ!」
​「全員乗った!? 出して!」
​『おうよ! 舌噛むなよ!』
​バサァァァァッ!!!
​ポチが強風を巻き起こし、空へと舞い上がった。
​「ああっ!? 貴様ら、何処へ行くぅぅぅ!!」
​食堂から出てきたタンクトップ姿のデュークが、空を見上げて絶叫する。
​「スクワットがまだ900回残っているぞォォォ!!」
​「知るもんですかぁぁぁ!!」
「筋肉ダルマのバーカ!!」
​ルチアナとラスティアが、空の上から「あっかんべー」をした。
遠ざかるカイト農場。
眼下に広がるのは、欲望とカロリーの楽園、天魔窟。
​「待っててね、私のドリンクバー……!」
「待ってろ、俺のポテト……!」
​こうして、地獄のブートキャンプからの大脱走劇は成功した。
向かう先は、ふかふかソファの聖地。
だが彼女たちはまだ知らない。
ファミレスという場所が、一度入ったら抜け出せない「時間泥棒の迷宮」であることを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...