田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十四章 熱闘!男達の炒飯対決

EP 5

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【納豆】ネバネバの魔物と、意外な中毒性
​翌日の朝食時。
カイト農場の食堂に、不穏な空気が漂っていた。
​「……カイト様。先ほどから、何か妙な匂いがしませんこと?」
​風紀委員長リベラが鼻をひくつかせた。
腐敗臭とも、古い靴下の匂いともつかない、独特の芳香が厨房の方から流れてくる。
​「あら、リベラも気づいた? 私、てっきり昨日のリュウの靴下が置きっぱなしなのかと思ったわ」
ルチアナが顔をしかめる。
​「俺じゃねぇよ!」
リュウが即座に否定する。
​その時、厨房からカイトが満面の笑みで現れた。
彼の手には、藁(わら)で編まれた小さな包みが乗ったお盆がある。
​「みんな、おはよう! すごいものができたよ!」
​カイトがテーブルの中央にその包みを置いた瞬間、匂いの濃度が急上昇した。
​「うっ……! カイト、何それ!? 腐ってるの!?」
リーザが鼻をつまんで後ずさる。
​「腐ってないよ! 『発酵』だよ!」
​カイトは目を輝かせながら説明した。
​「昨日、炒飯で使った『ダンジョン大豆』が余ったでしょ? あれを茹でて、裏山の『聖なる稲藁』に包んで、一晩保温しておいたんだ。そしたら……見て!」
​カイトが藁の包みを開いた。
中には、茶色い豆が詰まっている。
カイトが箸を入れて持ち上げると――。
​ネバァァァァァ…………ッ!
​白く、太く、力強い糸が引いた。
Sランク大豆とSランク藁菌の融合により、粘り気もSランク級だ。
​「ヒィィッ!? 糸引いてるわよ!? 完全に傷んでるじゃない!」
ラスティアが絶叫する。
​「これは……生物兵器か?」
デュークも警戒して身構える。
異世界(ファンタジー)の住人たちにとって、納豆は未知の恐怖だった。
​だが、この匂いに反応した男たちがいた。
​「……!!」
​元日本人サラリーマン・リュウと、和の心を持つ鬼神・龍魔呂である。
二人はガタッと椅子を蹴って立ち上がり、納豆の前に詰め寄った。
​「こ、この香りは……まさか……」
リュウの声が震える。
​「……『納豆』か」
龍魔呂が目を細めた。
​「なっ、納豆!? あの極東の島国の、伝説の発酵食品ですか!?」
リベラが驚く。
​「そうだ。……カイト、醤油と辛子はあるか?」
「あるよ! あと刻みネギも!」
​「でかした!」
​リュウが納豆の器を受け取り、慣れた手つきでかき混ぜ始めた。
カッカッカッカッ……!
空気を含ませるように、高速で攪拌する。
糸が白くなり、ふんわりとした泡立ちが生まれる。
​「くっ……! なんて強力な粘りだ! 箸が重い!」
​「そこに醤油を垂らせ。……香りが爆発するぞ」
龍魔呂が指示を出す。
​醤油を入れた瞬間、独特のアンモニア臭が、芳醇な食欲をそそる香ばしさへと変化した。
そこに辛子の黄色と、ネギの緑が彩りを添える。
​「完成だ……。これぞ日本の朝!」
​リュウが、炊きたての白米(Sランク米)の上に、トロリと納豆をかけた。
​「い、いくわよ……毒見よ……」
​恐る恐る、リベラがスプーンを伸ばした。
彼女は意を決して、ネバネバご飯を口に運ぶ。
​「……ん?」
​リベラの動きが止まった。
​「……臭くない? いえ、口に入れると……旨味が……」
​Sランク大豆の濃厚なコク。
発酵によるアミノ酸の爆発的な旨味。
それが白米の甘みと絡み合い、口の中でとろけていく。
​「……美味しいですわ!!」
​リベラが開眼した。
​「なんですかこれ! チーズのような濃厚さと、豆の甘み! ご飯が止まりませんわ!」
​「嘘でしょ? ……私も一口」
ルチアナも食べる。
「あら! 本当だわ! 糸が引くのが面白いし、肌にも良さそう!」
​「俺にもよこせ!」
デュークも一口で平らげる。
「ぬう……。見た目は最悪だが、味は一流だ。力が漲る気がする」
​「でしょ!? 納豆は体にいいんだよ!」
カイトが嬉しそうに笑う。
​結局、最初は悲鳴を上げていた女性陣も、「意外とイケる」「ご飯泥棒だわ」と納豆の虜になった。
食堂には、ズルズルと納豆ご飯をすする音が響き渡る。
​だが、この成功がカイトの「発酵熱」に火をつけてしまった。
​「納豆がいけるなら……『あれ』もいけるかも!」
​カイトが不穏なことを呟いた。
納豆など序の口。
世界最臭と恐れられる、あの「海の生物兵器」に手を出すことを、まだ誰も知らなかった。
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