147 / 180
第十四章 熱闘!男達の炒飯対決
EP 7
しおりを挟む
【二派】くさや戦争勃発! 臭いけど美味い派 vs 焼却処分派
「捨てなさい! 今すぐに!」
「埋めて! コンクリートで固めて地中深くに封印して!」
カイト農場の庭先は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
紫色の煙が立ち込める中、風紀委員長リベラと創造神ルチアナが、鼻をハンカチで押さえながら金切り声を上げている。
足元では、世界最強の神獣フェンリルと始祖竜ポチが、白目を剥いてピクピクと痙攣している。もはや虫の息だ。
「カイト! あなた正気!? 友達(ペット)を殺す気!?」
魔王ラスティアが、風魔法で必死に煙を押し返そうとする。
「ええ~……でも、これ高級品なんだよ?」
カイトが、網の上でこんがり(そしてド紫色に)焼けた干物をトングで掴んだ。
「ほら、焼きたてだよ! 誰か食べてみない?」
「「「絶対イヤ!!!」」」
女性陣が全力で拒絶する。
生理的嫌悪感。生存本能が「それを口に入れるな」と警鐘を鳴らしているのだ。
だが、その猛毒の煙の中へ、ふらりと歩み寄る男たちの姿があった。
「……待て」
「捨てるとは穏やかじゃないな」
元勇者リュウ、財務卿ルーベンス、そして鬼神・龍魔呂だ。
彼らは煙を吸い込んでも顔色一つ変えない。それどころか、その瞳は恍惚と輝いていた。
「リュウ!? あなた鼻が壊れたの!?」
リーザが叫ぶ。
「フッ……リーザちゃん。君にはまだ早いか」
リュウがニヒルに笑った。
「この匂いを『臭い』と感じるうちは、まだ子供だ。……俺たちのような、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人(ノンベエ)にとっては、これは『芳香(アロマ)』なんだよ」
「正気!?」
「その通りだ」
ルーベンスも頷く。
「激務に追われる日々……。疲れ切った肝臓が求めているのは、甘い菓子ではない。塩気と、発酵のクセ……そして酒精を受け止める強力な肴だ」
ルーベンスが、カイトの手から焼きたてのくさやをひょいと摘んだ。
そして、躊躇なく口に放り込む。
パクッ。
モグモグ……。
「ヒッ……食べ……!?」
リベラが悲鳴を上げる。
ルーベンスは目を閉じ、噛み締めた。
そして、カッと目を見開いた。
「……美味い!!」
「凝縮された魚の旨味! 鼻に抜ける強烈な発酵臭! それが脳髄を刺激し、唾液腺を崩壊させる!」
「ほう、やはりか」
龍魔呂も一口食べる。
「……素晴らしい塩梅だ。噛めば噛むほど味が染み出してくる。これはただの干物ではない。『酒を呼ぶ魔物』だ」
「酒……!」
その単語が出た瞬間、男たちの目の色が変わった。
そう、くさや単体では完成しない。
この強烈な個性を受け止める、清冽にして芳醇な「日本酒」があってこそ、真の芸術となるのだ。
「カイト、酒はあるか? 焼酎か、日本酒だ」
リュウが尋ねる。
「あ、ごめん。料理酒しかないや……」
「なんと……!」
男たちが絶望する。
くさやを前にして酒がない。それは拷問に等しい。
「……待て」
その時、龍魔呂が鋭い視線を館の方角へ向けた。
彼の鬼神としての感覚が、ある「気配」を捉えていた。
「……匂うぞ。この館のどこかから、極上の『大吟醸』の香りが漏れている」
「えっ? お酒なんてないよ?」
「いや、ある。……誰かが隠し持っているはずだ」
龍魔呂の視線が、こっそりと後ずさりしようとしていたルチアナの背中に突き刺さった。
「ッ!?」
ルチアナの肩がビクッと跳ねた。
「……ルチアナ。貴様、部屋に隠しているな?」
「し、知らないわよ! 私、お酒なんて……」
「目は口ほどに物を言うぞ」
龍魔呂が、くさやを齧りながら、ゆらりとルチアナに近づいていく。
その目は、肴を前にした酒飲みの、執念に満ちた捕食者の目だった。
「ひっ……!」
ルチアナが逃げ出す。
だが、酒を求める男たちの包囲網からは逃れられない。
こうして、くさやの是非を巡る戦争は、「幻の大吟醸」を巡る鬼ごっこへと発展していった。
「捨てなさい! 今すぐに!」
「埋めて! コンクリートで固めて地中深くに封印して!」
カイト農場の庭先は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
紫色の煙が立ち込める中、風紀委員長リベラと創造神ルチアナが、鼻をハンカチで押さえながら金切り声を上げている。
足元では、世界最強の神獣フェンリルと始祖竜ポチが、白目を剥いてピクピクと痙攣している。もはや虫の息だ。
「カイト! あなた正気!? 友達(ペット)を殺す気!?」
魔王ラスティアが、風魔法で必死に煙を押し返そうとする。
「ええ~……でも、これ高級品なんだよ?」
カイトが、網の上でこんがり(そしてド紫色に)焼けた干物をトングで掴んだ。
「ほら、焼きたてだよ! 誰か食べてみない?」
「「「絶対イヤ!!!」」」
女性陣が全力で拒絶する。
生理的嫌悪感。生存本能が「それを口に入れるな」と警鐘を鳴らしているのだ。
だが、その猛毒の煙の中へ、ふらりと歩み寄る男たちの姿があった。
「……待て」
「捨てるとは穏やかじゃないな」
元勇者リュウ、財務卿ルーベンス、そして鬼神・龍魔呂だ。
彼らは煙を吸い込んでも顔色一つ変えない。それどころか、その瞳は恍惚と輝いていた。
「リュウ!? あなた鼻が壊れたの!?」
リーザが叫ぶ。
「フッ……リーザちゃん。君にはまだ早いか」
リュウがニヒルに笑った。
「この匂いを『臭い』と感じるうちは、まだ子供だ。……俺たちのような、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人(ノンベエ)にとっては、これは『芳香(アロマ)』なんだよ」
「正気!?」
「その通りだ」
ルーベンスも頷く。
「激務に追われる日々……。疲れ切った肝臓が求めているのは、甘い菓子ではない。塩気と、発酵のクセ……そして酒精を受け止める強力な肴だ」
ルーベンスが、カイトの手から焼きたてのくさやをひょいと摘んだ。
そして、躊躇なく口に放り込む。
パクッ。
モグモグ……。
「ヒッ……食べ……!?」
リベラが悲鳴を上げる。
ルーベンスは目を閉じ、噛み締めた。
そして、カッと目を見開いた。
「……美味い!!」
「凝縮された魚の旨味! 鼻に抜ける強烈な発酵臭! それが脳髄を刺激し、唾液腺を崩壊させる!」
「ほう、やはりか」
龍魔呂も一口食べる。
「……素晴らしい塩梅だ。噛めば噛むほど味が染み出してくる。これはただの干物ではない。『酒を呼ぶ魔物』だ」
「酒……!」
その単語が出た瞬間、男たちの目の色が変わった。
そう、くさや単体では完成しない。
この強烈な個性を受け止める、清冽にして芳醇な「日本酒」があってこそ、真の芸術となるのだ。
「カイト、酒はあるか? 焼酎か、日本酒だ」
リュウが尋ねる。
「あ、ごめん。料理酒しかないや……」
「なんと……!」
男たちが絶望する。
くさやを前にして酒がない。それは拷問に等しい。
「……待て」
その時、龍魔呂が鋭い視線を館の方角へ向けた。
彼の鬼神としての感覚が、ある「気配」を捉えていた。
「……匂うぞ。この館のどこかから、極上の『大吟醸』の香りが漏れている」
「えっ? お酒なんてないよ?」
「いや、ある。……誰かが隠し持っているはずだ」
龍魔呂の視線が、こっそりと後ずさりしようとしていたルチアナの背中に突き刺さった。
「ッ!?」
ルチアナの肩がビクッと跳ねた。
「……ルチアナ。貴様、部屋に隠しているな?」
「し、知らないわよ! 私、お酒なんて……」
「目は口ほどに物を言うぞ」
龍魔呂が、くさやを齧りながら、ゆらりとルチアナに近づいていく。
その目は、肴を前にした酒飲みの、執念に満ちた捕食者の目だった。
「ひっ……!」
ルチアナが逃げ出す。
だが、酒を求める男たちの包囲網からは逃れられない。
こうして、くさやの是非を巡る戦争は、「幻の大吟醸」を巡る鬼ごっこへと発展していった。
10
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~
eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。
行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。
無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。
彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。
ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~
eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!
転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜
eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる