田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十六章 月兎の初陣と、鬼神の深夜食堂

EP 8

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【飯テロ】絶品! 砂肝のアヒージョと出汁巻き卵
​「お待たせした」
​龍魔呂が、グツグツと音を立てる耐熱陶器(カスエラ)をカウンターに置いた。
立ち上る湯気と共に、ニンニクと鷹の爪、そして芳醇なオリーブオイルの香りが、爆発的に広がる。
​「わぁぁ……!」
​キャルルが目を輝かせた。
一品目は、『Sランク砂肝と人参のアヒージョ』だ。
​「熱いから気をつけろ。……バゲットを浸して食うのが流儀だ」
​「い、いただきます!」
​キャルルはフォークを手に取り、まずはオイルの中で踊る「砂肝」を刺した。
フーフーと息を吹きかけ、口へ運ぶ。
​カリッ、コリッ……!
​「んんっ!? お、美味しいっ!!」
​キャルルの目がまん丸になった。
表面はオイルでカリッと揚がり、中は砂肝特有のコリコリとした弾力。
噛めば噛むほど、肉の旨味とニンニクのパンチが口の中で暴れまわる。
​「そして……私の大好きな人参さん!」
​次は、一口大にカットされた鮮やかなオレンジ色。
パクり。
​ホクッ……ジュワァ……♡
​「あまーーーーいッ!!」
​キャルルがカウンターをバンバン叩いた。
油で煮込まれたカイト農場の人参は、驚くほど甘く、ホクホクとした食感に変わっていた。
​「信じられない……! オイルの塩気とニンニクの刺激が、人参の甘さを極限まで引き立てています! これは永久機関です!」
​「ふっ、分かってるじゃないか」
隣でリュウがニヤリと笑う。
「そこに、バゲットを浸してみな」
​言われた通り、オイルをたっぷり吸わせたバゲットを齧る。
サクッ、ジュワッ。
小麦の香りと旨味オイルの洪なだれ水。
キャルルの脳内で、幸せの鐘が鳴り響いた。
​「んぐ、んぐ……! し、幸せぇぇ……!」
​そこへ、龍魔呂がスッと細長いグラスを差し出した。
​「口直しだ。『キャロット・フィズ』」
​鮮やかなオレンジ色のカクテル。
キャルルが口をつける。
シュワワ……。
炭酸の刺激と共に、フレッシュな人参の香りと、柑橘系の爽やかな酸味が駆け抜ける。
​「うわぁっ! さっぱり! アヒージョの油を一瞬でリセットしてくれます!」
​「計算尽くされてるだろ?」
リュウが得意げだ。
​「さて、次は……少し趣向を変えるぞ」
​龍魔呂が再び厨房に向いた。
今度は四角い銅製の卵焼き器だ。
ジューッという優しい音が響く。
卵液を注ぎ、手首を返して巻く。その所作は、剣の達人のように無駄がなく美しい。
​「へい、お待ち」
​出されたのは、湯気を上げる『黄金出汁巻き卵』。
大根おろしが添えられている。
​「き、綺麗……。まるで宝石箱やぁ……」
​キャルルが箸を入れる。
その瞬間だった。
​ジュワアァァァァ……!
​卵の断面から、閉じ込められていた「お出汁」が滝のように溢れ出したのだ。
​「ええっ!? スープ!? 中からスープが!?」
​「Sランク地鶏の卵と、特製のアゴ出汁を限界まで含ませている。……こいつは飲む卵焼きだ」
​龍魔呂が静かに告げる。
キャルルは震える手で、熱々の卵を口へ放り込んだ。
​フルフルッ、トロォ……。
​「はふっ、はふっ……ん~~~~っ♡」
​噛む必要すらなかった。
舌の上で卵が解け、濃厚な出汁の旨味が五臓六腑に染み渡る。
優しい。
激戦で疲れた身体を、内側から癒やしてくれる慈愛の味だ。
​「……龍魔呂さん」
​キャルルは空になった皿を見つめ、潤んだ瞳で龍魔呂を見上げた。
​「私……決めました」
​「ん?」
​龍魔呂がグラスを拭く手を止める。
キャルルは真剣な眼差しで、爆弾発言をした。
​「私、このお店に就職します! いえ、むしろ永久就職(結婚)させてください! 私の胃袋は、もう貴方なしでは生きていけません!」
​「……そうか。だが求人は出してないぞ」
​龍魔呂は困ったように眉を下げ、しかし少しだけ嬉しそうに、サービスのアイスクリームを出してくれた。
​最高の料理と、最高の男。
キャルルの心と胃袋は、完全に陥落した。
……だが、この「抜け駆け」が、翌日とんでもない修羅場を招くことを、今の彼女は知る由もなかった。
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