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二章 誘惑の秘宝と王女の日記
7.ディランとエミリー
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ディランはエミリーと手を繋いだまま、王宮の廊下を歩く。誰にも見られたくなくて2人に隠蔽魔法をかけた。
ディランは、とにかく、チャーリーの影響下にある場所から抜け出したかった。あてもなく歩いていたが、王族専用の小さな庭園が近くにあることを思い出して、そちらに向かう。数え切れないほど訪れた庭園は、ディランたちを優しく迎えてくれた。
「子供の頃からよく遊んでいた庭園なんだ」
「素敵な場所ですね」
庭園は庭師の手が行き届いていて、夏らしい明るいの花々が咲き乱れている。ディランは、一番近い日陰のベンチに手を繋いだままエミリーと並んで座った。話をするのには少し暑いので、周囲の温度を魔法で下げる。魔力を使っていると自然に気持ちが落ち着いてきた。
(ちゃんと伝えなきゃ)
ディランは呼吸を整えてエミリーに身体を向ける。エミリーも姿勢を正して、ディランを見上げていた。ディランは、エミリーの真っすぐな瞳に勇気づけられて口を開く。
「エミリー、僕は君のことが好きだ。ずっと一緒に居られるなら、何よりも幸せだと思う」
ディランが緊張しながら言うと、エミリーは強張っていた表情を緩ませる。
「でもね、エミリー。僕は君にも幸せになってもらいたいんだ」
エミリーはキョトンとした顔でディランを見上げている。自分自身の幸せより、エミリーの笑顔を守りたい。ディランはそう強く感じていた。
「王族になることは楽しいことばかりじゃない。善意で近づいてくる者は少ないし、信じていた人間に裏切れれることだっていくらでもある。僕は王籍を抜けることになっているけど、この立場の全てを捨てることはできないんだ。もうすぐ父上が王になれば国王の息子に、兄上が継いだあとも王弟だ。継承権がなくなった後も、それは変えられない。だから、兄上が強引に進めるために言ったこととか、王族からの申し出だからとか一旦忘れて、僕との婚約について、もう一度真剣に考えてほしいんだ。僕を選んでもらえたら嬉しいけど……もし他に気になる人がいるなら、僕は……」
「ディラン殿下」
エミリーがディランの言葉を遮るように声を上げる。エミリーはちょっと怒っていて、ディランは戸惑ってしまう。
「殿下の言葉を遮るなような無作法な事をして申し訳ありません。でも、その後に続く言葉は聞きたくなくて……私、たぶん殿下の言いたいことの半分も分かってないんですけど……でも、私……ディラン殿下のそばにいたいんです」
ディランを睨むように見ていたエミリーの瞳に、じんわりと涙が滲んでくる。ディランは今にも零れ落ちそうなエミリーの涙を、指ですくい取るように拭った。
「ありがとう、エミリー。泣かせてごめんね。僕にとっては大切なことだったんだ。もう、言わないよ」
「分かっています……ディラン殿下は優しいから……でも、私も殿下の事が大好きで……だから……」
「うん。僕も大好きだよ」
ディランがエミリーの頭をそっと撫でると、エミリーはポロポロと泣き出してしまった。ディランは慰めの言葉の代わりに、エミリーを引き寄せて抱きしめる。
「エミリー、僕の婚約者になってくれる? 学院を卒業したら結婚しよう」
「はい……よろしくお願いします」
エミリーはしゃくりあげながら、恥ずかしそうに返事をする。ディランは遠慮がちに回されたエミリーの腕に安心して、泣き止むまでエミリーをギュッと抱きしめていた。
ディランは、とにかく、チャーリーの影響下にある場所から抜け出したかった。あてもなく歩いていたが、王族専用の小さな庭園が近くにあることを思い出して、そちらに向かう。数え切れないほど訪れた庭園は、ディランたちを優しく迎えてくれた。
「子供の頃からよく遊んでいた庭園なんだ」
「素敵な場所ですね」
庭園は庭師の手が行き届いていて、夏らしい明るいの花々が咲き乱れている。ディランは、一番近い日陰のベンチに手を繋いだままエミリーと並んで座った。話をするのには少し暑いので、周囲の温度を魔法で下げる。魔力を使っていると自然に気持ちが落ち着いてきた。
(ちゃんと伝えなきゃ)
ディランは呼吸を整えてエミリーに身体を向ける。エミリーも姿勢を正して、ディランを見上げていた。ディランは、エミリーの真っすぐな瞳に勇気づけられて口を開く。
「エミリー、僕は君のことが好きだ。ずっと一緒に居られるなら、何よりも幸せだと思う」
ディランが緊張しながら言うと、エミリーは強張っていた表情を緩ませる。
「でもね、エミリー。僕は君にも幸せになってもらいたいんだ」
エミリーはキョトンとした顔でディランを見上げている。自分自身の幸せより、エミリーの笑顔を守りたい。ディランはそう強く感じていた。
「王族になることは楽しいことばかりじゃない。善意で近づいてくる者は少ないし、信じていた人間に裏切れれることだっていくらでもある。僕は王籍を抜けることになっているけど、この立場の全てを捨てることはできないんだ。もうすぐ父上が王になれば国王の息子に、兄上が継いだあとも王弟だ。継承権がなくなった後も、それは変えられない。だから、兄上が強引に進めるために言ったこととか、王族からの申し出だからとか一旦忘れて、僕との婚約について、もう一度真剣に考えてほしいんだ。僕を選んでもらえたら嬉しいけど……もし他に気になる人がいるなら、僕は……」
「ディラン殿下」
エミリーがディランの言葉を遮るように声を上げる。エミリーはちょっと怒っていて、ディランは戸惑ってしまう。
「殿下の言葉を遮るなような無作法な事をして申し訳ありません。でも、その後に続く言葉は聞きたくなくて……私、たぶん殿下の言いたいことの半分も分かってないんですけど……でも、私……ディラン殿下のそばにいたいんです」
ディランを睨むように見ていたエミリーの瞳に、じんわりと涙が滲んでくる。ディランは今にも零れ落ちそうなエミリーの涙を、指ですくい取るように拭った。
「ありがとう、エミリー。泣かせてごめんね。僕にとっては大切なことだったんだ。もう、言わないよ」
「分かっています……ディラン殿下は優しいから……でも、私も殿下の事が大好きで……だから……」
「うん。僕も大好きだよ」
ディランがエミリーの頭をそっと撫でると、エミリーはポロポロと泣き出してしまった。ディランは慰めの言葉の代わりに、エミリーを引き寄せて抱きしめる。
「エミリー、僕の婚約者になってくれる? 学院を卒業したら結婚しよう」
「はい……よろしくお願いします」
エミリーはしゃくりあげながら、恥ずかしそうに返事をする。ディランは遠慮がちに回されたエミリーの腕に安心して、泣き止むまでエミリーをギュッと抱きしめていた。
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