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終章 王子様の決断
1.帰都命令
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ディランはトーマスや秘密部隊のイチたちと共に、『隠れ里』に寝泊まりしながら事後処理に追われた。『隠れ里』の住民襲撃事件の捜査を終え、魅惑草が残っていないかの調査に移った頃、王都から至急の知らせがやってくる。
『今すぐトーマスとともに王都に戻れ』
チャーリーの直筆で書かれた文字には珍しく焦りがみえる。
「これって、本当にチャーリー殿下の文字か?」
「ま、間違いありません」
使者はトーマスに詰め寄られて青い顔をしている。ディランは魔法を使って調べてみたが、偽りはなさそうだ。
「トーマス、本物だよ。急ごう。兄上が焦るなんて嫌な予感しかしないよ」
ディランは、使者に掴みかかりそうなトーマスを魔法で止めた。悪事を犯していない人間相手に、力で真実を確かめようとするのはやめてほしい。
「何があったんだろうな?」
「新学期が始まっている時期だし、気になるよね」
ディランはトーマスと話しながら、出発の準備をする。事件は想定より早く片付いたが、それでも夏季休暇終了には間に合っていない。
「殿下の伝言はいつも簡潔すぎるんだよな。さっぱり、状況が分からない」
「トーマスだけじゃなくて、僕も呼び戻すって……まさか、エミリーに何かあったわけじゃないよね?」
「まぁ、戻ってみるしかないよな」
ディランが青くなると、トーマスがポンッと肩を叩く。確かに何も知らない二人で推測しあっていても意味がない。
「ディラン殿下、トーマス様。こちらの馬をお使いください」
「ありがとう」
ディランたちは準備を終えると、イチが用意してくれた馬に飛び乗る。最短の道を選んで、急いで王都を目指した。
馬を替えながら進み、王都に入ったのは出発してから2日目の深夜だった。王都に入るための門は閉められていたが、ディランたちのことは秘密部隊の人間が待っていた。チャーリーがこんな優しい気遣いをすることはないので、ディランは気を引き締める。
「何があったか説明してくれる?」
「我々は発言の許可を頂いておりません。到着すれば分かることです」
トーマスが拳を握ってディランを見たが首を振って止める。揉めている方が時間がかかる。
秘密部隊の一人に先導されて、ディランたちは暗くなった王都を馬で進む。王宮に向かっているのは分かるが、チャーリーの執務室やディランの私室がある方向ではない。この先にあるのは王宮に隣接しているシクノチェス国立病院だけだ。
「「……」」
トーマスも気がついたのだろう。いつになく険しい顔をしている。
しばらく馬を走らせて見えてきたのはやはり病院で、入口にはルークが近衛騎士に支えられるようにして待っていた。
「ルーク、何があったの? エミリーは!?」
ディランは馬から飛び降りてルークに駆け寄る。遠くから見たときから分かっていたが、ルークは体中に包帯を巻いている。近衛騎士に支えられていないと、一人では立っていることも難しい様子だ。
「ディラン、病院だから声を落とせ」
トーマスがディランに追いついてきて小声で諭す。
「殿下、申し訳ありません」
ルークはふらつきながらも、ディランの前に跪いて詫びる。悲痛な様子にディランの血の気がサッと引いた。
「殿下、エミリー様はご無事です。怪我もされてません」
付き添いの近衛騎士が、ディランの様子に気がついて慌てて説明をはじめる。エミリーはルークたちに守られて怪我はなかったが、念の為、この病院に入院中のようだ。
「ルーク、脅かさないでよ……。エミリーを守ってくれてありがとう」
「しかし、我々が至らないせいで、エミリー様に怖い思いをさせてしまいました」
ルークは頭を下げたままで顔は見えないが、それでも声から悔しさが伝わってくる。
「とにかく中に入ろう。ルークの部下たちも無事?」
「はい。入院中ですが、問題ありません」
ディランは跪いたままのルークに手を貸して立たせる。魔法で抱き上げてしまおうかとも思ったが、ルークに先回りして拒否されたので肩を貸してルークの病室まで送った。
『今すぐトーマスとともに王都に戻れ』
チャーリーの直筆で書かれた文字には珍しく焦りがみえる。
「これって、本当にチャーリー殿下の文字か?」
「ま、間違いありません」
使者はトーマスに詰め寄られて青い顔をしている。ディランは魔法を使って調べてみたが、偽りはなさそうだ。
「トーマス、本物だよ。急ごう。兄上が焦るなんて嫌な予感しかしないよ」
ディランは、使者に掴みかかりそうなトーマスを魔法で止めた。悪事を犯していない人間相手に、力で真実を確かめようとするのはやめてほしい。
「何があったんだろうな?」
「新学期が始まっている時期だし、気になるよね」
ディランはトーマスと話しながら、出発の準備をする。事件は想定より早く片付いたが、それでも夏季休暇終了には間に合っていない。
「殿下の伝言はいつも簡潔すぎるんだよな。さっぱり、状況が分からない」
「トーマスだけじゃなくて、僕も呼び戻すって……まさか、エミリーに何かあったわけじゃないよね?」
「まぁ、戻ってみるしかないよな」
ディランが青くなると、トーマスがポンッと肩を叩く。確かに何も知らない二人で推測しあっていても意味がない。
「ディラン殿下、トーマス様。こちらの馬をお使いください」
「ありがとう」
ディランたちは準備を終えると、イチが用意してくれた馬に飛び乗る。最短の道を選んで、急いで王都を目指した。
馬を替えながら進み、王都に入ったのは出発してから2日目の深夜だった。王都に入るための門は閉められていたが、ディランたちのことは秘密部隊の人間が待っていた。チャーリーがこんな優しい気遣いをすることはないので、ディランは気を引き締める。
「何があったか説明してくれる?」
「我々は発言の許可を頂いておりません。到着すれば分かることです」
トーマスが拳を握ってディランを見たが首を振って止める。揉めている方が時間がかかる。
秘密部隊の一人に先導されて、ディランたちは暗くなった王都を馬で進む。王宮に向かっているのは分かるが、チャーリーの執務室やディランの私室がある方向ではない。この先にあるのは王宮に隣接しているシクノチェス国立病院だけだ。
「「……」」
トーマスも気がついたのだろう。いつになく険しい顔をしている。
しばらく馬を走らせて見えてきたのはやはり病院で、入口にはルークが近衛騎士に支えられるようにして待っていた。
「ルーク、何があったの? エミリーは!?」
ディランは馬から飛び降りてルークに駆け寄る。遠くから見たときから分かっていたが、ルークは体中に包帯を巻いている。近衛騎士に支えられていないと、一人では立っていることも難しい様子だ。
「ディラン、病院だから声を落とせ」
トーマスがディランに追いついてきて小声で諭す。
「殿下、申し訳ありません」
ルークはふらつきながらも、ディランの前に跪いて詫びる。悲痛な様子にディランの血の気がサッと引いた。
「殿下、エミリー様はご無事です。怪我もされてません」
付き添いの近衛騎士が、ディランの様子に気がついて慌てて説明をはじめる。エミリーはルークたちに守られて怪我はなかったが、念の為、この病院に入院中のようだ。
「ルーク、脅かさないでよ……。エミリーを守ってくれてありがとう」
「しかし、我々が至らないせいで、エミリー様に怖い思いをさせてしまいました」
ルークは頭を下げたままで顔は見えないが、それでも声から悔しさが伝わってくる。
「とにかく中に入ろう。ルークの部下たちも無事?」
「はい。入院中ですが、問題ありません」
ディランは跪いたままのルークに手を貸して立たせる。魔法で抱き上げてしまおうかとも思ったが、ルークに先回りして拒否されたので肩を貸してルークの病室まで送った。
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