【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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一章 役目を終えて【ミシュリーヌ】

第24話 被害状況

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 説明が終わると、ギルド長の支持でフリルネロ公爵領の地図が運び込まれた。大きな地図を机の上に広げて、皆で囲むように覗き込む。

 地図には、あちこちに赤いバツや青いバツが日付を添える形で書き込まれている。被害にあった場所らしいが、浄化が終了していることを考えれば、多すぎることがミシュリーヌにも分かった。

「これは領内のギルド長会議で使われたものの写しだ。ここのギルドの管轄以外は、書き込めていないものもあるが、状況は理解してもらえると思う」

 ギルド長の説明によると、フリルネロ公爵領にはギルドの支部が五つ存在するらしい。簡単に言うと、領地の真ん中にある領都と、それを囲むように東西南北に存在する四つの大きい街に配置されているようだ。

「青いバツと赤いバツの違いはなんですか?」

「赤が冒険者ギルドで特に問題視している規模の襲撃だ。青も問題ではあるが浄化前に戻ったと思えば、可笑しくはない」

「浄化前に戻った……第三都市にある水晶の状態が気になりますね」

 浄化装置ともいうべき水晶は、どの領地でも、領地の中央に作られた神殿に置かれている。フリルネロ公爵領の神殿は第三都市とも呼ばれる領都にある。

「聖女様がテキトーに浄化したせいで、こんなことになっているのか?」

「ニコラ……」

 ヤニックが呆れた顔をニコラに向ける。ミシュリーヌはギルド長に目で謝られたが、『ミーシャ』は浄化の関係者ではないので曖昧に笑って返した。

「浄化は確実に行われました。ただ、今の状況を考えると失敗していたと言われても仕方ありません」

「……」

 ミシュリーヌには、フリルネロ公爵領での浄化で特別なことが起きた記憶はない。オーギュストも問題なく浄化できたと確認してくれていた。最初は幼い頃だから失敗したのかもしれないと思ったが、よく考えてみれば、公爵領より前に浄化した王都では問題が起きていないのだ。

 では、なぜ百年以上は保つと言われた浄化に綻びがみえるのか?

 ミシュリーヌが失敗していないと仮定した上で一番あり得るのは、引き継いだ神官が浄化を怠っていた場合だろう。ただ、証拠も何もない中で、ミシュリーヌが言及するのは難しい。

「とにかく、この街の患者の治療が終わったら、第三都市の神殿に行ってみます」

 商会の出発には間に合わないが、ミシュリーヌなら一人でも安全に向かうことは可能だ。現地で様子を見て判断するしかない。

「……」

 ミシュリーヌはそう思ったが、ヤニックとギルド長は難しい顔をしている。

「どうされました?」

「王都から応援を呼べるなら、神殿に行くのはその者たちと合流してからの方が良い」

 ギルド長の言葉にヤニックが力強く頷いて同意する。

「俺もそう思う。俺達の説明だけで呼び寄せるのは難しいだろうか?」

「可能だとは思いますが……」

 できれば、水晶の状態を確かめて伝え、その状況に合った人材を連れてきてほしい。王都からここまでの移動はかなりの日数がかかる。二度手間だけは避けたい。

「何で悩むんだ? 浄化をやり直すなら、聖女様を王都から連れてこないと意味ないじゃん。ミーシャが行っても何もできないだろう?」

 ニコラが当たり前のように言った言葉で、ミシュリーヌは固まる。『ミーシャ』の今の設定は神官だ。この国に聖女は一人しか存在しておらず、三人を信頼していても伝えることは難しい。もっとも、今の状態で水晶を浄化すると魔獣が領境に逃げて隣接領や領境付近の村々が危険になるので、聖女であるミシュリーヌでも、すぐに浄化することはできない。

「……」

「何? 俺なんか変なこと言った? 馬鹿な俺でも神官が水晶の浄化まではできないことは知ってるよ。神官は水晶が魔素に侵されないように、守っているんだよな?」

 ニコラの問いかけにミシュリーヌは曖昧に頷く。神官も浄化を行っているが、魔素による侵食に拮抗する程度の力しかないというのが正確だ。

「ニコラの言う通りだな。でも、俺は同じ助言をする」

 ミシュリーヌが訂正しようか迷っていると、ヤニックがそんなことを言う。

「今の神殿は、若い女性が近づいて良い場所じゃない」

 神殿は浄化の際に暮らしていた場所でもある。そこまで警戒する理由がミシュリーヌには分からない。ヤニックに補足を求めたが、返ってきた答えもミシュリーヌの知る神殿とはかけ離れていた。

 フリルネロ公爵領の神殿には『浄化薬を盗みにくる荒くれ者から神官を守る』という名目で、ガラの悪い護衛がウロウロしているらしい。

「ミーシャの言うとおり、神殿がオーギュスト殿下を陥れようとしているなら、聖女様でも穏便に中に入れるとは思えない」

「それなら、王都からの応援を待ったほうが良さそうですね」

 ミシュリーヌは納得して、応援を待つことにした。公爵領の状況は、王都に伝わってこないのが不思議なほど異常な状態のようだ。
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