【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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二章 無事を祈って【オーギュスト】

第14話 倉庫

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 オーギュストたちが身を潜めて待っていると、スラリとした長身の男が先程の麻袋を担いで商会から出てきた。団員からの無言の肯定でオーギュストはそれがルネであることを知る。

 ルネは殺気の籠もるギラリとした目で周囲を見回すと、オーギュストたちに気づくことなく歩き出した。

「マジックバッグは使っていないようだな」

 オーギュストが現場に出向いたのは、魔獣草をマジックバッグに入れて運ぶ可能性があったためだ。マジックバッグは他者から見ると普通のバッグと変わらない。製作者より魔力が高いと思われるオーギュストが、現場で魔法に干渉して確認する必要があった。

「資料どおり、ルネにマジックバッグを使えるほどの魔力がないからか。あるいは証拠を残さないためか……」

 事件の大きさから考えて、犯人たちを取りまとめている人間ならマジックバッグを用意できただろう。ただ、マジックバッグには魔法で製作者を刻むことが義務付けられており、所有者は魔導師団へ届け出る必要がある。ミシュリーヌには安物だと言って服に合わせていくつも渡してきたが、マジックバッグはそんなに簡単に扱って良いものではない。

 もちろん、違法に製作している可能性もあるが、オーギュストが鑑定すれば製作者が分かってしまう。犯人がその事を知っていたかは不明だが、一番手っ取り早い証拠は与えてくれないようだ。マジックバックを製作できるのは魔力が高い限られた人間だけで高位貴族がほとんどだ。製作者は主犯又は主犯に近い立場の協力者である可能性が高い。

「どうされますか?」

「このまま、私も尾行に参加する。別行動をとるから、いつも通りにやってくれ」

 オーギュストは団員から離れると、上空に飛んで遠くから様子を伺う。任せてしまっても良かったが、どこかでマジックバッグを持った者が待機している可能性もある。何も掴めないまま、この場を離れるのも嫌だった。

 実行犯のルネは現役の騎士団員だ。平民出身の叩き上げのようだが、資料によると融通の利かない真面目すぎる性格とある。そんな男がどうして卑劣な犯行に手を染めてしまったのだろう。地方出身ではあるようだが、公爵領には縁もゆかりもない。オーギュストの頭には、嘆願書を揉み消していた魔導師団員の顔がちらつく。

 オーギュストは嫌な気持ちを引きずりながら、上空をゆっくりと進んだ。ルネは途中で馬に乗ると、人の少ない道を選んで王都の端まで進む。昔からある倉庫街だ。

 魔獣が増え、街同士の行き来が減っていた時期には閑散としていたが、浄化が進んだ今は活気づいている。新しく建て直された倉庫の周りには、大きな荷物を運ぶ者たちが溢れていた。

 ルネは新しい倉庫には目もくれず、奥へ奥へと進んでいく。人の気配がなくなり古い倉庫に囲まれた一角で、他に比べると、さらに年季の入った倉庫に入っていった。


 しばらくして出てきたルネは手ぶらだったので、魔獣草はこの倉庫に保管しているのだろう。保存状態が心配になるが、すぐにフリルネロ公爵領に運んでしまうのかもしれない。

 ルネは倉庫に鍵をかけると、馬に乗って去っていった。オーギュストは、魔導師団員のうち二人がルネを追っていったのを見届けて、倉庫の前に降り立つ。この場に残った魔導師団員が倉庫を遠巻きにしながら、トラップの有無などを調べ始めていた。

「魔法を仕掛けられた形跡はありません。中を確認しますか?」

「いや、今は必要ない。魔獣草が倉庫の中にあるのは確実だからな。あの男が何か仕掛けている可能性もあるから、踏み込むのは証拠を揃えてからにしよう」

 魔法によるトラップなら、相手に気づかれることなく倉庫内を調べることは可能だ。だが、ルネにはあまり魔力がない。そういった人間が侵入者を確認する方法も知っているが、気配に敏感な人間を欺けるかどうかは微妙なところだ。危険を犯すほどの理由もない。

「とりあえず、二人はこの倉庫の監視に付いてくれ。隊長には私から報告しておこう」

「畏まりました」

 オーギュストはこの場を二人に任せて魔導師団に戻る。第一部隊の隊長に状況を報告すると、すぐに応援が倉庫へと向かった。
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