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二章 無事を祈って【オーギュスト】
第15話 所有者
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その後も商会の監視は続けられたが、他に容疑者が浮上してくることはなかった。ルネは別の商会にも現れ、魔獣草を買い付けている。かなり重いと思うが、いつも一人だ。尾行をしている団員の報告によると、ルネに親族や恋人はなく誰かと接触した形跡もない。それは騎士団に協力を仰いで仕事中の様子を確認してもらっても変わらなかった。
買い付けはルネ一人の犯行で間違いない。そう結論付けた直後に、次の動きがあった。倉庫の魔獣草が別の男たちによって運び出されたのだ。
男たちの追跡が第一部隊により開始され、彼らが王都を十分に離れたところで、倉庫の捜査も本格的に始まった。
しばらくして、オーギュストはヌーヴェル伯爵から呼び出しを受けた。会議室に向かうと、事件の捜査にあたる者たちが集まっている。
「魔獣草を運搬している者たちの身元が判明いたしました」
オーギュストが席につくと、追跡を任されている小隊の隊長が説明をはじめる。魔獣草を公爵領に運んでいるのは、創業したばかりの運送会社らしい。浄化が終わり国が落ち着いてきたこともあり、新たな会社を立ち上げる者も増えている。
「公爵領に恨みがありそうな人間はいないようだな」
オーギュストが渡された資料には、関わる者たちの家族や親類を調査した情報も記載されている。出身地は王都にほど近い伯爵領の者が多いようだが、特に気になるところはない。
「彼らは、おそらく白ですね。報告によると、何を運んでいるのかも分かっていないようです。警戒心もあまりないので、そこを犯人に利用されたのではないでしょうか」
はじめは、追跡班も警戒しながら距離をとって追っていたようだ。しかし、運送会社は他の商会などと同様に、旅をする一般人の同行も許していた。そのため、今は追跡班のうち数人も運送会社一行に加わっているらしい。魔獣草も他の荷物と同様に馬車に積み込まれていることを確認している。
「公爵領近辺での受け渡しが重要になりそうだな。気を緩めることなくあたってくれ」
「もちろんです。また、動きがありましたら報告いたします」
小隊長は恭しく頭を下げて、別の小隊長に場所を譲る。報告は倉庫についての捜査に移るようだ。
現在、魔獣草は全て倉庫から運び出されており、中は空の状態らしい。出入りする者もいないという。
「倉庫の名義は一昨年に亡くなった男爵になっています。現在、男爵位は甥にあたる人物が継いでいるのですが、男爵家に倉庫の所有を知る者はおりませんでした」
「相手は爵位持ちとのことで私も同行しましたが、嘘をついているようには見えませんな」
小隊長の報告に、ヌーヴェル伯爵が補足する。男爵は領地の運営だけで手一杯といった様子だったようだ。魔導師団で極秘に調べたところ、前男爵が急に事故で亡くなったことで後継者指名がなされておらず、爵位を誰が継ぐかで揉めたらしい。
「前男爵とルネの接点は?」
「調査中ですが、今のところ見つかっておりません」
どこかで隠れた接点がある可能性も捨てきれないが、亡くなった時期から考えると男爵家が代替わりでバタバタしていることを犯人が利用したと考える方が妥当だろう。
男爵家は十年以上前から倉庫を所有しており、国に保管されている書類に不備はない。前男爵が所有していた倉庫を勝手に使ったか、男爵家に倉庫の存在を知る者がいないことから考えて、正式な国の書類を偽造した可能性すらある。それができる人物となると限られるが、現在分かっている犯人像とは一致している。
「そろそろ、ルネを捉えた方が良さそうだな」
これ以上、泳がさても得る情報はない。それに、秘密裏に動いているとはいえ、そろそろ犯人に魔導師団の動きが漏れていてもおかしくない。ここ最近は騎士団や文官に問い合わせを行っているので、犯人がどこの上層部にいたとしても避けようがない。慎重な犯人なら調査の手が伸びてきたら自分に伝わるようにしてあるだろう。ルネが犯人と接触したことがあるなら、消される可能性もある。
「私もそう思いましたので、部隊は編成済みですぞ。もちろん、護衛もつけてあります」
「この件は伯爵に任せて良いか?」
「畏まりました。今すぐに始めてもよろしいですかな?」
伯爵が楽しげに了承する。この雰囲気は何かを企んでいそうだ。今の時期から考えると新人の研修課題にでもするのだろう。オーギュストはそう思いながらも、止めることなく黙って頷いた。魔獣という共通の敵が減った今は、対人対応が重要になってくる。早めに経験を積んでおくほうが彼らのためになる。ミシュリーヌと同じくらいの年頃だからどうしても心配してしまうが、彼らも立派な魔導師団員だ。
オーギュストの頭に愛らしい笑顔が浮かんで、静かに息を吐く。
ミシュリーヌは無事に過ごしているだろうか?
オーギュストは不意に心配になるが、遠いフリルネロ公爵領に向かって祈ることしかできなかった。
買い付けはルネ一人の犯行で間違いない。そう結論付けた直後に、次の動きがあった。倉庫の魔獣草が別の男たちによって運び出されたのだ。
男たちの追跡が第一部隊により開始され、彼らが王都を十分に離れたところで、倉庫の捜査も本格的に始まった。
しばらくして、オーギュストはヌーヴェル伯爵から呼び出しを受けた。会議室に向かうと、事件の捜査にあたる者たちが集まっている。
「魔獣草を運搬している者たちの身元が判明いたしました」
オーギュストが席につくと、追跡を任されている小隊の隊長が説明をはじめる。魔獣草を公爵領に運んでいるのは、創業したばかりの運送会社らしい。浄化が終わり国が落ち着いてきたこともあり、新たな会社を立ち上げる者も増えている。
「公爵領に恨みがありそうな人間はいないようだな」
オーギュストが渡された資料には、関わる者たちの家族や親類を調査した情報も記載されている。出身地は王都にほど近い伯爵領の者が多いようだが、特に気になるところはない。
「彼らは、おそらく白ですね。報告によると、何を運んでいるのかも分かっていないようです。警戒心もあまりないので、そこを犯人に利用されたのではないでしょうか」
はじめは、追跡班も警戒しながら距離をとって追っていたようだ。しかし、運送会社は他の商会などと同様に、旅をする一般人の同行も許していた。そのため、今は追跡班のうち数人も運送会社一行に加わっているらしい。魔獣草も他の荷物と同様に馬車に積み込まれていることを確認している。
「公爵領近辺での受け渡しが重要になりそうだな。気を緩めることなくあたってくれ」
「もちろんです。また、動きがありましたら報告いたします」
小隊長は恭しく頭を下げて、別の小隊長に場所を譲る。報告は倉庫についての捜査に移るようだ。
現在、魔獣草は全て倉庫から運び出されており、中は空の状態らしい。出入りする者もいないという。
「倉庫の名義は一昨年に亡くなった男爵になっています。現在、男爵位は甥にあたる人物が継いでいるのですが、男爵家に倉庫の所有を知る者はおりませんでした」
「相手は爵位持ちとのことで私も同行しましたが、嘘をついているようには見えませんな」
小隊長の報告に、ヌーヴェル伯爵が補足する。男爵は領地の運営だけで手一杯といった様子だったようだ。魔導師団で極秘に調べたところ、前男爵が急に事故で亡くなったことで後継者指名がなされておらず、爵位を誰が継ぐかで揉めたらしい。
「前男爵とルネの接点は?」
「調査中ですが、今のところ見つかっておりません」
どこかで隠れた接点がある可能性も捨てきれないが、亡くなった時期から考えると男爵家が代替わりでバタバタしていることを犯人が利用したと考える方が妥当だろう。
男爵家は十年以上前から倉庫を所有しており、国に保管されている書類に不備はない。前男爵が所有していた倉庫を勝手に使ったか、男爵家に倉庫の存在を知る者がいないことから考えて、正式な国の書類を偽造した可能性すらある。それができる人物となると限られるが、現在分かっている犯人像とは一致している。
「そろそろ、ルネを捉えた方が良さそうだな」
これ以上、泳がさても得る情報はない。それに、秘密裏に動いているとはいえ、そろそろ犯人に魔導師団の動きが漏れていてもおかしくない。ここ最近は騎士団や文官に問い合わせを行っているので、犯人がどこの上層部にいたとしても避けようがない。慎重な犯人なら調査の手が伸びてきたら自分に伝わるようにしてあるだろう。ルネが犯人と接触したことがあるなら、消される可能性もある。
「私もそう思いましたので、部隊は編成済みですぞ。もちろん、護衛もつけてあります」
「この件は伯爵に任せて良いか?」
「畏まりました。今すぐに始めてもよろしいですかな?」
伯爵が楽しげに了承する。この雰囲気は何かを企んでいそうだ。今の時期から考えると新人の研修課題にでもするのだろう。オーギュストはそう思いながらも、止めることなく黙って頷いた。魔獣という共通の敵が減った今は、対人対応が重要になってくる。早めに経験を積んでおくほうが彼らのためになる。ミシュリーヌと同じくらいの年頃だからどうしても心配してしまうが、彼らも立派な魔導師団員だ。
オーギュストの頭に愛らしい笑顔が浮かんで、静かに息を吐く。
ミシュリーヌは無事に過ごしているだろうか?
オーギュストは不意に心配になるが、遠いフリルネロ公爵領に向かって祈ることしかできなかった。
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