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三章 犯人を追って【オーギュスト】
第15話 夜明け
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朝日が射し込んでくるのを感じて、オーギュストは伸びをした。結局、夜の間に訪問者が来ることはなかった。オーギュストは徹夜だが、アダンはベッドで、ミシュリーヌは隣で寝袋に包まれてスヤスヤと眠っている。
眠る許可を出したのはオーギュストだが、敵陣の真ん中で穏やかに眠る二人には驚く。アダンに至っては結界どころか変装まで解けていて、ただの少年になっている。
「あれ? ここどこだっけ?」
先に目覚めたのはアダンだ。オーギュストは聞こえないふりをして見守る。
「……任務中だ!」
アダンはすごい勢いで魔法を発動させて、ミシュリーヌの姿に戻っていく。魔法の発動前にオーギュストの結界の中にいることを確認していたようなので、今回はギリギリ許される範囲ということにする。
「おはようございます」
アダンが恐る恐る声をかけてくる。
「おはよう」
オーギュストは返事をしながら、マジックバッグから箱をいくつか取り出した。笑顔を返すのは正直苦手だ。
「身支度が済んだなら、好きなものを食べておけ。誰かが来たら食べそこねるぞ」
アダンはコクコクと頷きながら近づいてくると、箱の一つを開けて歓声を上げた。食事の入った箱を大切そうに抱えて笑顔を見せたので、オーギュストが怒っていないことは伝わっただろう。
……
オーギュストが食事を終えてもミシュリーヌは眠っている。かわいい寝顔を眺めていたい気もするが、場所が場所なので仕方なく起こす。ミシュリーヌは眠そうな目を擦りながら洗面所に消えていった。
「簡易の建物なのに、シャワーやトイレまで付いているなんて驚きです」
「異世界から来た聖女様のおかげだな」
聖女様が生まれた異世界は、衛生的な場所だったらしい。当時の魔導師が聖女様から聞き取りをして、『水洗トイレ』を魔道具で再現したようだ。本当かどうかは怪しいが、聖女様から出された浄化の旅に出る条件だったと伝わっている。素晴らしい技術だが、時が経った今でも、使う魔石が高価すぎて一般には普及していない。
……
ミシュリーヌが戻って来て、オーギュストの隣に座ると、少しして扉がノックされる。
「ミシュリーヌ妃、起きているかい?」
声の主はヘクターだ。
「どうしましょう?」
アダンが昨日と同じように結界を張る。
「普段のミシュリーヌなら、絶対に寝ている時間だが……この状況では眠れていないだろうから、対応すべきだろうな」
オーギュストは言い終えると、自身とミシュリーヌに隠蔽魔法をかける。アダンの結界にも魔法を上掛けし、部屋全体にかかった結界を解いた。
「ぐっすり眠ってしまいました」
ミシュリーヌが赤い顔で申告してくる。よく分からないが、恥ずかしそうだ。
「眠れてよかったな」
髪を撫でると、ミシュリーヌは小さく頷いた。
扉がもう一度ノックされ、返事を待たずに開いた扉からヘクターが顔を出す。
「一晩経って落ち着いたかい? 食事をとっていないようだね……」
「申し訳ありません」
アダンがベッドに横たわったまま泣きそうな声で言う。ヘクターへの警戒心が隠しきれていないが、本物のミシュリーヌも同じような態度を取りそうなので結果的には良いだろう。
「私も手紙で説得したんだが、オーギュストは来ないみたいだよ。兄上の護衛の方が大事らしい。浄化が終わったからと言って態度を変えるなんてひどいよね。あいつは君の護衛だったのにさ」
「……」
アダンは返事をしなかったが、ヘクターはミシュリーヌの精神を削るような言葉をさらに続けた。祝賀パーティでミシュリーヌが追い詰められた理由がよく分かる。
ヘクターはミシュリーヌを心配するような事を言いながら、わざと傷つく言葉を挟み込んでいる。
オーギュストは拳を固く握ったが、後ろから抱きつかれて冷静さを取り戻す。
「オーギュスト様がわたくしのそばに居てくださるから、何を言われても平気ですわ」
「そうだね。ミシュリーヌに嫌だと言われても、離れられる気がしないよ」
ミシュリーヌからは、言葉とは違い不安が伝わってくる。オーギュストは本当に平気だと思えるように本心を伝えた。
少し重い言葉になってしまったが、ミシュリーヌは笑っている。オーギュストは腰に回されたミシュリーヌの小さな手に、自分の手を重ねた。
眠る許可を出したのはオーギュストだが、敵陣の真ん中で穏やかに眠る二人には驚く。アダンに至っては結界どころか変装まで解けていて、ただの少年になっている。
「あれ? ここどこだっけ?」
先に目覚めたのはアダンだ。オーギュストは聞こえないふりをして見守る。
「……任務中だ!」
アダンはすごい勢いで魔法を発動させて、ミシュリーヌの姿に戻っていく。魔法の発動前にオーギュストの結界の中にいることを確認していたようなので、今回はギリギリ許される範囲ということにする。
「おはようございます」
アダンが恐る恐る声をかけてくる。
「おはよう」
オーギュストは返事をしながら、マジックバッグから箱をいくつか取り出した。笑顔を返すのは正直苦手だ。
「身支度が済んだなら、好きなものを食べておけ。誰かが来たら食べそこねるぞ」
アダンはコクコクと頷きながら近づいてくると、箱の一つを開けて歓声を上げた。食事の入った箱を大切そうに抱えて笑顔を見せたので、オーギュストが怒っていないことは伝わっただろう。
……
オーギュストが食事を終えてもミシュリーヌは眠っている。かわいい寝顔を眺めていたい気もするが、場所が場所なので仕方なく起こす。ミシュリーヌは眠そうな目を擦りながら洗面所に消えていった。
「簡易の建物なのに、シャワーやトイレまで付いているなんて驚きです」
「異世界から来た聖女様のおかげだな」
聖女様が生まれた異世界は、衛生的な場所だったらしい。当時の魔導師が聖女様から聞き取りをして、『水洗トイレ』を魔道具で再現したようだ。本当かどうかは怪しいが、聖女様から出された浄化の旅に出る条件だったと伝わっている。素晴らしい技術だが、時が経った今でも、使う魔石が高価すぎて一般には普及していない。
……
ミシュリーヌが戻って来て、オーギュストの隣に座ると、少しして扉がノックされる。
「ミシュリーヌ妃、起きているかい?」
声の主はヘクターだ。
「どうしましょう?」
アダンが昨日と同じように結界を張る。
「普段のミシュリーヌなら、絶対に寝ている時間だが……この状況では眠れていないだろうから、対応すべきだろうな」
オーギュストは言い終えると、自身とミシュリーヌに隠蔽魔法をかける。アダンの結界にも魔法を上掛けし、部屋全体にかかった結界を解いた。
「ぐっすり眠ってしまいました」
ミシュリーヌが赤い顔で申告してくる。よく分からないが、恥ずかしそうだ。
「眠れてよかったな」
髪を撫でると、ミシュリーヌは小さく頷いた。
扉がもう一度ノックされ、返事を待たずに開いた扉からヘクターが顔を出す。
「一晩経って落ち着いたかい? 食事をとっていないようだね……」
「申し訳ありません」
アダンがベッドに横たわったまま泣きそうな声で言う。ヘクターへの警戒心が隠しきれていないが、本物のミシュリーヌも同じような態度を取りそうなので結果的には良いだろう。
「私も手紙で説得したんだが、オーギュストは来ないみたいだよ。兄上の護衛の方が大事らしい。浄化が終わったからと言って態度を変えるなんてひどいよね。あいつは君の護衛だったのにさ」
「……」
アダンは返事をしなかったが、ヘクターはミシュリーヌの精神を削るような言葉をさらに続けた。祝賀パーティでミシュリーヌが追い詰められた理由がよく分かる。
ヘクターはミシュリーヌを心配するような事を言いながら、わざと傷つく言葉を挟み込んでいる。
オーギュストは拳を固く握ったが、後ろから抱きつかれて冷静さを取り戻す。
「オーギュスト様がわたくしのそばに居てくださるから、何を言われても平気ですわ」
「そうだね。ミシュリーヌに嫌だと言われても、離れられる気がしないよ」
ミシュリーヌからは、言葉とは違い不安が伝わってくる。オーギュストは本当に平気だと思えるように本心を伝えた。
少し重い言葉になってしまったが、ミシュリーヌは笑っている。オーギュストは腰に回されたミシュリーヌの小さな手に、自分の手を重ねた。
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