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四章 平和を願って【ミシュリーヌ】
第21話 内緒で【オーギュスト】
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ミシュリーヌは隠しているつもりのようだが、心配ごとは他にもありそうだ。オーギュストはミシュリーヌを慎重に観察しながら、明日からのことを考える。
出たとこ勝負のオーギュストたちとは違い、ミシュリーヌの旅はかなり綿密に計画を立てている。前回の反省を活かして、クリストフもつけた。思い出してみても、ミシュリーヌが心配するような穴は見当たらない。
「寂しい?」
オーギュストは他に思いつかなくて、願望も込めて聞いてみた。ミシュリーヌの頬がほのかに赤く染まる。どうやら当たりらしい。
「そんな、わたくしは……」
「私は寂しいよ」
オーギュストが嬉しさを隠して頬を撫でると、ミシュリーヌは困った顔をしてジーッと見つめてくる。弱音を吐いても許されるか悩んでいる気がして、オーギュストは静かにミシュリーヌの反応を待った。
「その……王都を出てから、ずっと一緒でしたので……」
ミシュリーヌの瞳がじわりと潤む。見られたくなかったのか、オーギュストの胸元に顔を埋めた。
「すぐにミシュリーヌのもとに戻って来るよ」
「絶対ですよ。なるべく早……急がなくて大丈夫ですから、怪我などには気をつけて下さいね」
ミシュリーヌが慌てて訂正するので、オーギュストはクスリと笑う。潤んだ瞳で睨まれて、謝罪の代わりに口づけを落とした。
「怪我をしないように急ぐよ」
不意打ちに弱いミシュリーヌは、恥ずかしそうに視線を彷徨わせている。その顔に憂いは見当たらない。
「些細なことでも、気になることがあるなら言ってほしいな」
オーギュストはそれでもしつこく聞いたが、具体的な不安はやはりないようだ。マリエルとクリストフがいるから大丈夫だと言われて、それはそれで複雑な気持ちになる。
ミシュリーヌは話して落ち着いたのかウトウトしていて眠そうだ。隠し切れなかった心情が伝わっていないと分かって、オーギュストも安心して瞳を閉じた。
翌朝、オーギュストは宿の前でミシュリーヌたちと別れたふりをして、姿を消して後を追った。すぐに街を出るつもりだったが、昨晩のことがあったので予定を変更したのだ。使役獣が共にいるが、それだけでは安心しきれない。ミシュリーヌたちが上手く立ち回れるか確認しておきたかった。
「神官だと? 今更何のようだ!」
「俺達がどんなに訴えても薬を分けてくれなかったくせに!」
療養所の者たちはミシュリーヌを歓迎していないようだ。ミシュリーヌは暗い顔で頭を下げている。オーギュストは思わず出ていきそうになるが、クリストフの他所行きの笑顔を見てグッと堪えた。
「ミーシャ様、この街は後回しにしましょう。他の患者が待っています」
「クリストフ?」
「数年前までは、失われるのが当たり前だった命です。運命に身を任せて死を待つというのなら、我々はその意志を尊重すべきだと思いませんか?」
「えっと……」
ミシュリーヌは困惑して言葉を失っている。それを横目に、クリストフは言葉巧みに関係者を説得し、するりと療養所の中に入っていった。ミシュリーヌは混乱した顔のまま、その背中を追っている。神官とは思えない言葉もあったが、その辺りは仕方ないだろう。優しさだけでは人を動かすことはできない。
クリストフは普段から何を考えているか分からない神官たちと付き合っている。彼らと比べるのは失礼ではあるが、ここにいる人達の要望は分かりやすい。クリストフにとっては扱いやすい相手なのだろう。
これなら、問題なさそうだな。
オーギュストは真剣な表情で患者を見つめるミシュリーヌから視線を外す。ずっと見守ってあげたいが、そうも言っていられない。オーギュストは後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。
出たとこ勝負のオーギュストたちとは違い、ミシュリーヌの旅はかなり綿密に計画を立てている。前回の反省を活かして、クリストフもつけた。思い出してみても、ミシュリーヌが心配するような穴は見当たらない。
「寂しい?」
オーギュストは他に思いつかなくて、願望も込めて聞いてみた。ミシュリーヌの頬がほのかに赤く染まる。どうやら当たりらしい。
「そんな、わたくしは……」
「私は寂しいよ」
オーギュストが嬉しさを隠して頬を撫でると、ミシュリーヌは困った顔をしてジーッと見つめてくる。弱音を吐いても許されるか悩んでいる気がして、オーギュストは静かにミシュリーヌの反応を待った。
「その……王都を出てから、ずっと一緒でしたので……」
ミシュリーヌの瞳がじわりと潤む。見られたくなかったのか、オーギュストの胸元に顔を埋めた。
「すぐにミシュリーヌのもとに戻って来るよ」
「絶対ですよ。なるべく早……急がなくて大丈夫ですから、怪我などには気をつけて下さいね」
ミシュリーヌが慌てて訂正するので、オーギュストはクスリと笑う。潤んだ瞳で睨まれて、謝罪の代わりに口づけを落とした。
「怪我をしないように急ぐよ」
不意打ちに弱いミシュリーヌは、恥ずかしそうに視線を彷徨わせている。その顔に憂いは見当たらない。
「些細なことでも、気になることがあるなら言ってほしいな」
オーギュストはそれでもしつこく聞いたが、具体的な不安はやはりないようだ。マリエルとクリストフがいるから大丈夫だと言われて、それはそれで複雑な気持ちになる。
ミシュリーヌは話して落ち着いたのかウトウトしていて眠そうだ。隠し切れなかった心情が伝わっていないと分かって、オーギュストも安心して瞳を閉じた。
翌朝、オーギュストは宿の前でミシュリーヌたちと別れたふりをして、姿を消して後を追った。すぐに街を出るつもりだったが、昨晩のことがあったので予定を変更したのだ。使役獣が共にいるが、それだけでは安心しきれない。ミシュリーヌたちが上手く立ち回れるか確認しておきたかった。
「神官だと? 今更何のようだ!」
「俺達がどんなに訴えても薬を分けてくれなかったくせに!」
療養所の者たちはミシュリーヌを歓迎していないようだ。ミシュリーヌは暗い顔で頭を下げている。オーギュストは思わず出ていきそうになるが、クリストフの他所行きの笑顔を見てグッと堪えた。
「ミーシャ様、この街は後回しにしましょう。他の患者が待っています」
「クリストフ?」
「数年前までは、失われるのが当たり前だった命です。運命に身を任せて死を待つというのなら、我々はその意志を尊重すべきだと思いませんか?」
「えっと……」
ミシュリーヌは困惑して言葉を失っている。それを横目に、クリストフは言葉巧みに関係者を説得し、するりと療養所の中に入っていった。ミシュリーヌは混乱した顔のまま、その背中を追っている。神官とは思えない言葉もあったが、その辺りは仕方ないだろう。優しさだけでは人を動かすことはできない。
クリストフは普段から何を考えているか分からない神官たちと付き合っている。彼らと比べるのは失礼ではあるが、ここにいる人達の要望は分かりやすい。クリストフにとっては扱いやすい相手なのだろう。
これなら、問題なさそうだな。
オーギュストは真剣な表情で患者を見つめるミシュリーヌから視線を外す。ずっと見守ってあげたいが、そうも言っていられない。オーギュストは後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。
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