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終章 未来に向かって【ミシュリーヌ】
第2話 気配【オーギュスト】
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オーギュストは、ガエルと再会した翌日から神殿に出向き、ガエルの魔法を一つ一つ解除していった。全ての魔法がガエルの証言通りで、国に背くような魔法は一つもない。ガエルへの本格的な聴取は全てが片付いてから王都で行われるが、オーギュストはガエルを信じることにした。ガエルの魔力は封じたままで『護衛』も付いているが、公爵家の屋敷で自由に過ごしてもらっている。
フェランとの話し合いで、神殿の制圧はしばらく保留にすることとなった。魔導師団員が姿を消して神殿内を観察することで、神官長以外がどういう立場なのか把握するためだ。脅されているのか、積極的に加担しているのかで罪の重さは異なる。
オーギュストは団員たちが問題なく動き始めたのを確認し、フェランに後を任せ、第三都市を出ることにした。ポールとブノワとともに魔獣を薙ぎ払いながら、ミシュリーヌのいる街を目指す。街を出てからずっと感じている胸騒ぎには、気づかないふりをした。
しかし、残念ながらオーギュストの予感はあたってしまったようだ。
「なんだ?」
ミシュリーヌとの合流を翌日に控えた夕暮れ時、野営地を整えていると、異様な気配を感じた。初めての感覚で表現が難しいが、魔素が吹き出したような、そんな禍々しい気配だ。
「団長、どうかしましたか?」
ポールの言葉で、オーギュスト以外は感じていないことを知る。疑問の声には答えないまま、禍々しい気配を注意深く探った。
出どころは、ミシュリーヌがいる街より、さらに進んだ先のようだ。ミシュリーヌのいる街からはかなり近い。地図を広げて確かめてみると、隣の領との間を隔てる森の公爵領側の端だと分かった。森には他の場所より魔獣が生息しやすい。
まさか……
オーギュストは無言で魔石を五つ取り出して、野営地を囲むように配置する。その日限りの簡易的な結界は張ってあったが、魔石の力を借りた十日ほど保つしっかりとした結界を張りなおす。
「何が起きているのか、お聞きしてもよろしいですか?」
オーギュストが二人のもとへ戻ると、ブノワが険しい表情で聞いてくる。オーギュストが、どんな魔法を使ったのか分かったのだろう。
「確証はないが、ミシュリーヌのいる町で魔獣の反乱が起きるかもしれない」
「私も連れて行って下さい!」
ブノワが勢いよく言ったが、オーギュストはゆっくりと首を振る。
「悪いがここで待っていてくれ」
ブノワがさらに口を開きかけたが、オーギュストは言わせなかった。
「勘違いするな。若い才能を失いたくないだけだ。特殊部隊の者でも置いていく。水晶が浄化されていない領地で、夕暮れ後に動く危険性は分かるな」
ポールがゴクリとツバを飲み込む。
「まさか……朝を待たないおつもりですか?」
ブノワの驚愕の声に頷いて、オーギュストは伝書鳩を召喚する。ミシュリーヌと連絡を取るためだ。使役獣に憑依してもよいが、正確に伝えたいし何より魔力が惜しい。メモを書いている間に魔獣の気配が増え始めたので、マリエルたちも気づいた頃だろう。魔獣の反乱の予想が確信に代わって、震えそうになる手をどうにか動かす。
「五日経って私からの連絡がなければ、第三都市に戻ってくれ。その後の指示はフェランに従ってくれれば良い。慎重に移動しろよ」
オーギュストは言いながら伝書鳩の足にメモをくくりつける。伝書鳩に安全対策を施してから暮れかけた空に放った。
「流石に団長でも無茶です。私たちのことは置いていって構いませんから、朝を待ちましょう。お願いします」
ブノワがオーギュストに頭を下げる。冷静で度胸があって将来が楽しみだ。
「問題ない。私を誰だと思っている」
オーギュストはニヤリと悪人のように笑って結界を出た。魔素が濃すぎるので馬は使えない。強者の威圧を放って弱い魔獣を遠ざけ、それ以外の魔獣を残滅させながら、ひたすら走るしかなかった。
ブノワたちには、あんなふうに言ったが、オーギュストに余裕があるわけではない。ただ、一瞬でも早くミシュリーヌのもとに駆けつけたい。今のオーギュストには、それしか頭になかった。
フェランとの話し合いで、神殿の制圧はしばらく保留にすることとなった。魔導師団員が姿を消して神殿内を観察することで、神官長以外がどういう立場なのか把握するためだ。脅されているのか、積極的に加担しているのかで罪の重さは異なる。
オーギュストは団員たちが問題なく動き始めたのを確認し、フェランに後を任せ、第三都市を出ることにした。ポールとブノワとともに魔獣を薙ぎ払いながら、ミシュリーヌのいる街を目指す。街を出てからずっと感じている胸騒ぎには、気づかないふりをした。
しかし、残念ながらオーギュストの予感はあたってしまったようだ。
「なんだ?」
ミシュリーヌとの合流を翌日に控えた夕暮れ時、野営地を整えていると、異様な気配を感じた。初めての感覚で表現が難しいが、魔素が吹き出したような、そんな禍々しい気配だ。
「団長、どうかしましたか?」
ポールの言葉で、オーギュスト以外は感じていないことを知る。疑問の声には答えないまま、禍々しい気配を注意深く探った。
出どころは、ミシュリーヌがいる街より、さらに進んだ先のようだ。ミシュリーヌのいる街からはかなり近い。地図を広げて確かめてみると、隣の領との間を隔てる森の公爵領側の端だと分かった。森には他の場所より魔獣が生息しやすい。
まさか……
オーギュストは無言で魔石を五つ取り出して、野営地を囲むように配置する。その日限りの簡易的な結界は張ってあったが、魔石の力を借りた十日ほど保つしっかりとした結界を張りなおす。
「何が起きているのか、お聞きしてもよろしいですか?」
オーギュストが二人のもとへ戻ると、ブノワが険しい表情で聞いてくる。オーギュストが、どんな魔法を使ったのか分かったのだろう。
「確証はないが、ミシュリーヌのいる町で魔獣の反乱が起きるかもしれない」
「私も連れて行って下さい!」
ブノワが勢いよく言ったが、オーギュストはゆっくりと首を振る。
「悪いがここで待っていてくれ」
ブノワがさらに口を開きかけたが、オーギュストは言わせなかった。
「勘違いするな。若い才能を失いたくないだけだ。特殊部隊の者でも置いていく。水晶が浄化されていない領地で、夕暮れ後に動く危険性は分かるな」
ポールがゴクリとツバを飲み込む。
「まさか……朝を待たないおつもりですか?」
ブノワの驚愕の声に頷いて、オーギュストは伝書鳩を召喚する。ミシュリーヌと連絡を取るためだ。使役獣に憑依してもよいが、正確に伝えたいし何より魔力が惜しい。メモを書いている間に魔獣の気配が増え始めたので、マリエルたちも気づいた頃だろう。魔獣の反乱の予想が確信に代わって、震えそうになる手をどうにか動かす。
「五日経って私からの連絡がなければ、第三都市に戻ってくれ。その後の指示はフェランに従ってくれれば良い。慎重に移動しろよ」
オーギュストは言いながら伝書鳩の足にメモをくくりつける。伝書鳩に安全対策を施してから暮れかけた空に放った。
「流石に団長でも無茶です。私たちのことは置いていって構いませんから、朝を待ちましょう。お願いします」
ブノワがオーギュストに頭を下げる。冷静で度胸があって将来が楽しみだ。
「問題ない。私を誰だと思っている」
オーギュストはニヤリと悪人のように笑って結界を出た。魔素が濃すぎるので馬は使えない。強者の威圧を放って弱い魔獣を遠ざけ、それ以外の魔獣を残滅させながら、ひたすら走るしかなかった。
ブノワたちには、あんなふうに言ったが、オーギュストに余裕があるわけではない。ただ、一瞬でも早くミシュリーヌのもとに駆けつけたい。今のオーギュストには、それしか頭になかった。
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