【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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おまけ1▶アダンの故郷【ミシュリーヌ】全九話

アダンの故郷(八)

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「……リーヌ、ミシュリーヌ」

 呼ばれた気がして目を開けると、ミシュリーヌのすぐそばにオーギュストの青い瞳があった。アダンの村での生活にも慣れてきたが、朝早くにオーギュストに起こされるのは初めてだ。

「ミシュリーヌ、おはよう」

 オーギュストは、こんな時間から色気のある笑顔を浮かべている。眠くてぼんやりしているミシュリーヌとは大違いだ。

「おはようございます。何かありましたか?」

「その反応は、まだ半分寝ているね。今日はミシュリーヌにお願いしたいことがあるって言っただろう?」

「そうでした!」

 ミシュリーヌが飛び起きると、オーギュストが隣でクスリと笑う。

「急ぐ必要はないよ。着替えたら一緒に朝食にしよう」

 オーギュストが微笑みを残して隣の部屋に消えると、ノックがされてマリエルが部屋に入ってくる。オーギュストが魔法で合図したのだろう。

 ミシュリーヌは手伝ってもらって急いで身支度を済ませると、隣の部屋に待つオーギュストのもとに向かった。


 朝食を済ませて一息つくと、オーギュストとともに村人たちと合流する。今日は魔獣の死骸などで汚染された土地の浄化を行う予定だ。

 これもミシュリーヌが子どもたちから聞いた『近づいちゃいけない場所』の話から決まったことだったりする。

 放棄されていた村に村人たちが戻ってきた際、魔獣の住処にされていた家があったらしい。討伐は無事に済んだが、魔獣の住処にされていた辺りは時間が経っても嫌な気配が残った。そのため、子どもたちには近づかないようにと伝えてあったようだ。

「嫌な気配を感じ取っているのは、姉のルイーズだけなんです。でも、姉の予感は当たることが多いので、再建はその周辺を避けて行われました」

 アダンの案内で連れて来られたのは、村から少し離れた朽ちた建物の前だった。アダンは平気な顔をしているが、ミシュリーヌには禍々しい気配を感じる。できれば、近づかずに浄化魔法を放ってしまいたい。

「さすが、アダンの姉だな。魔導師の才能がありそうだ」

 オーギュストがそんなことを言いながら、建物の中に入っていく。ミシュリーヌも続こうと思ったが、オーギュストに止められた。アダンとミシュリーヌの護衛の一人だけが呼び入れられ、何やら話し込んでいる。

「魔獣による汚染は魔導師団員でも最初から感じ取れる者は少ないのです。団長はアダンたちに荒療治を行うようですね」

 マリエルの説明によると、汚染を感じ取るのにはコツがいるらしい。マリエルも入団当時に苦労したようだ。安全に訓練できる場所がその頃にはなかった。しかし、感じ取ることは魔獣が多く危険だった当時の方が必須だったといえる。

「うわぁーー!!」

 しばらくして、アダンが何かから逃げるように飛び出してきた。クマの使役獣が反応してミシュリーヌの前に出たが、マリエルさえ動かない。

 続いて、一緒に入っていった若い護衛が口元をハンカチで抑えて出てくる。オーギュストは困った顔で二人を追いかけてきた。

「大袈裟な奴だな」

「すみません。こんな禍々しい気配に気づいていなかったなんて思いませんでした」

 オーギュストとクマの使役獣に挟まれて、アダンは涙目だ。若い護衛も口元を抑えたまま頷いている。

「すぐに感じ取れたのだから、二人とも優秀よ」

 マリエルは優しい声で部下のそばに寄り添う。彼女のために結界を張ってあげたようだ。ちなみにアダンは結界の外にいる。

「浄化しても、よろしいですか?」

 ミシュリーヌはアダンの顔色が徐々に悪くなっていくのを見て、オーギュストに提案した。オーギュストにマリエルのような気遣いをする気配はない。

「ああ。頼む。を浄化してもらえるか?」

「はい」

 オーギュストの言葉の意味はよく分からなかったが、ミシュリーヌは建物だけを囲むように浄化魔法を放つ。禍々しい気配はスーッと消えて、深呼吸したくなるような爽やかな風が吹いた。

「聖女様……」

 アダンがキラキラした顔で見てくるが、すぐにオーギュストが間に入って視界から消える。

「国中に同じような場所があるだろうから、ミシュリーヌがいなくても浄化できる方法を考えたい」

 そのために建物だけを浄化したようだ。村周辺には、ここほどではないが浄化を必要とする場所が他にもある。

 オーギュストはすぐに伝書鳩を召喚して三羽を空に放つ。土壌の浄化方法について助言を得るためだ。伝書鳩は王都の神官長、前魔導師団長の前ヴァーグ伯爵、副団長のヌーヴェル伯爵の元へと飛んでいく。

 ちなみに、神官長に宛てた手紙だけはミシュリーヌがしたためた。去年のゴタゴタの後まで知らなかったが、オーギュストと神官長はあまり良い関係ではないらしい。ミシュリーヌが間に入り、三人で会食などをして関係改善をはかっているところだ。しかし、長年積もり積もってきた不和のようで、手紙で何かを願える関係になるには、まだ時間が必要になりそうだ。
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