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おまけ1▶アダンの故郷【ミシュリーヌ】全九話
アダンの故郷(最終話)
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ミシュリーヌは数日を編み物に費やし、その後は土壌の浄化に本格的に着手した。神官長から届いた歴代聖女の日記に書かれていた方法や、前魔導師団長から教わった魔導師団に伝わる方法、ヌーヴェル伯爵が禁書の中を探して見つけた方法など、場所ごとに違う方法を行い経過を観察する。
ミシュリーヌが全国の村を回るのは難しい。オーギュストも復興に関して村をまわるのは最初の二、三年だけで、その後は団員たちに任せると聞いている。ミシュリーヌもできれば、同じようにしたいと思っている。
幸いにも、聖女が現地に行かずに土地を浄化する方法は過去にいくつも生み出されていた。今回はそれらを全て試すことで効率的なやり方を模索する予定だ。
アダンの村だけでは全て試せなかったので、男爵領の他の村でも試すことになった。元々復興の支援自体は行う予定であったことに加え、浄化も村の援助になるため、どこでも歓迎を受けている。数年に渡り経過観察をする予定だが、魔導師団員が出入りすることにも好意的な反応が多かった。
「聖女様、私たちの村では養蜂が盛んです。見学されませんか?」
「ええ。ぜひお願いします」
ミシュリーヌはどの村でも声をかけられ、特産品を味わったり作ったり楽しく交流することができた。アダンの村でのミシュリーヌの生活は、他の村にも伝わっているらしい。あるとき村人の一人に尋ねてみると、大きな街の市で村人たちは情報交換をしているとのことだった。
ミシュリーヌと村の女性たちの交流は、オーギュストにも村の意見を吸い上げやすいと喜ばれた。浄化以外でもオーギュストの役に立てたようで嬉しい。聖女が味わったり、製造を体験したりした特産品という触れ込みができるため、訪れた村の助力にもなったと聞いている。
そんな数カ月を過ごし、ミシュリーヌたちが男爵領を去るときがやってきた。男爵領をぐるりと一周し王都よりのアダンの村からほど近い街に滞在していると、ルイーズと数人の村人たちが訪ねてきた。
魔導師団員用に編んでもらった防寒具が無事に仕上がったようだ。貸し切りにしていた宿の玄関で、魔導師団員たちに好きな色を選んでもらっている。理由を説明して渡しているが、嬉しそうなのでホッとする。
「皆の分を作ってもらっていたのか?」
「はい。実は……」
オーギュストにも、このとき初めて羊毛を浄化したことを説明した。
「そうか。それは良いことをしたな」
オーギュストは驚いているようだったので、誰からも聞いていなかったのだろう。内緒にしていたことは後ろめたかったが、オーギュストの笑顔を見れば、気にするほど悪いことではないと分かる。
「それで、その……」
ミシュリーヌはおずおずとマジックバッグから紙袋を取り出した。ミシュリーヌが作ったマフラーも先日フリンジをつけて完成している。ただ、初めて作ったので完成度は高くない。渡すのを躊躇い、マジックバッグにしばらく眠らせていたのだ。
「それは何だ?」
オーギュストが嬉しそうな顔をするので、ミシュリーヌは安心して紙袋を差し出す。
「オーギュスト様の分です。気に入っていただけると良いのですが……」
「開けても良いか?」
「もちろんです」
オーギュストが賑わう魔導師たちを見て、ミシュリーヌの手を取る。
「せっかくだから、部屋で開けよう」
ミシュリーヌは頷いて、二人に割り当てられた部屋に移動する。ソファーに落ち着くと、オーギュストは丁寧に袋を開いて嬉しそうにマフラーを広げた。
「ミシュリーヌが作ったのか?」
「やっぱり、分かりますか? 本職の方の作ったものとは違って下手……」
「そうじゃないよ」
オーギュストがミシュリーヌの言葉を慌てたように遮る。ミシュリーヌが見つめると、オーギュストが愛おしそうにマフラーを撫でた。
「このマフラーには、強力な加護がかかっている。編んでいる時にも私のことを考えてくれていたのではないか?」
マフラーをよく見ると、想像以上に強い加護がかかっている。制作前にかけた浄化魔法だけでは説明できない加護だ。それはミシュリーヌのオーギュストに対する気持ちの表れでもある。
ミシュリーヌが恥ずかしくなりながら頷くと、オーギュストが嬉しそうにマフラーを首に巻く。
「お仕事の邪魔になるといけないので、お忍びで出かける時に使っていただければ嬉しいです」
「ずっと、つけておく。問題ないよ」
「でも……」
オーギュストは魔導師らしい黒一色の服装に白いマフラーをつけている。顔周りが明るくなって良いが、仕事中にマフラーを巻いているところは見たことがない。きっと、邪魔になるから避けてきたのだろう。
「問題ない。何が起きても汚したり破ったりしないような魔法を開発する。そうだ、今できることだけでもしておこう」
オーギュストは言いながら、いくつもの魔法陣を展開する。マフラーを守るための魔法だろう。絶対に外さないという意思が伝わってきて、ミシュリーヌは嬉しかった。
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方だよ。素敵なプレゼントをありがとう」
オーギュストがミシュリーヌの頬に優しい口づけをおとす。ミシュリーヌはお返しにオーギュストの唇を奪った。
この日をきっかけに、冬のオーギュストといえば白いマフラーと言われるようになる。しかし、本人たちの耳に入ったのはフルーナ王国に数多ある村々に本当の平和が訪れた後だったという。
終
――――――
【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございました。編み物をしながら考えたお話です。季節外れになってしまってすみません。読んでいただけて嬉しいです。
ミシュリーヌが全国の村を回るのは難しい。オーギュストも復興に関して村をまわるのは最初の二、三年だけで、その後は団員たちに任せると聞いている。ミシュリーヌもできれば、同じようにしたいと思っている。
幸いにも、聖女が現地に行かずに土地を浄化する方法は過去にいくつも生み出されていた。今回はそれらを全て試すことで効率的なやり方を模索する予定だ。
アダンの村だけでは全て試せなかったので、男爵領の他の村でも試すことになった。元々復興の支援自体は行う予定であったことに加え、浄化も村の援助になるため、どこでも歓迎を受けている。数年に渡り経過観察をする予定だが、魔導師団員が出入りすることにも好意的な反応が多かった。
「聖女様、私たちの村では養蜂が盛んです。見学されませんか?」
「ええ。ぜひお願いします」
ミシュリーヌはどの村でも声をかけられ、特産品を味わったり作ったり楽しく交流することができた。アダンの村でのミシュリーヌの生活は、他の村にも伝わっているらしい。あるとき村人の一人に尋ねてみると、大きな街の市で村人たちは情報交換をしているとのことだった。
ミシュリーヌと村の女性たちの交流は、オーギュストにも村の意見を吸い上げやすいと喜ばれた。浄化以外でもオーギュストの役に立てたようで嬉しい。聖女が味わったり、製造を体験したりした特産品という触れ込みができるため、訪れた村の助力にもなったと聞いている。
そんな数カ月を過ごし、ミシュリーヌたちが男爵領を去るときがやってきた。男爵領をぐるりと一周し王都よりのアダンの村からほど近い街に滞在していると、ルイーズと数人の村人たちが訪ねてきた。
魔導師団員用に編んでもらった防寒具が無事に仕上がったようだ。貸し切りにしていた宿の玄関で、魔導師団員たちに好きな色を選んでもらっている。理由を説明して渡しているが、嬉しそうなのでホッとする。
「皆の分を作ってもらっていたのか?」
「はい。実は……」
オーギュストにも、このとき初めて羊毛を浄化したことを説明した。
「そうか。それは良いことをしたな」
オーギュストは驚いているようだったので、誰からも聞いていなかったのだろう。内緒にしていたことは後ろめたかったが、オーギュストの笑顔を見れば、気にするほど悪いことではないと分かる。
「それで、その……」
ミシュリーヌはおずおずとマジックバッグから紙袋を取り出した。ミシュリーヌが作ったマフラーも先日フリンジをつけて完成している。ただ、初めて作ったので完成度は高くない。渡すのを躊躇い、マジックバッグにしばらく眠らせていたのだ。
「それは何だ?」
オーギュストが嬉しそうな顔をするので、ミシュリーヌは安心して紙袋を差し出す。
「オーギュスト様の分です。気に入っていただけると良いのですが……」
「開けても良いか?」
「もちろんです」
オーギュストが賑わう魔導師たちを見て、ミシュリーヌの手を取る。
「せっかくだから、部屋で開けよう」
ミシュリーヌは頷いて、二人に割り当てられた部屋に移動する。ソファーに落ち着くと、オーギュストは丁寧に袋を開いて嬉しそうにマフラーを広げた。
「ミシュリーヌが作ったのか?」
「やっぱり、分かりますか? 本職の方の作ったものとは違って下手……」
「そうじゃないよ」
オーギュストがミシュリーヌの言葉を慌てたように遮る。ミシュリーヌが見つめると、オーギュストが愛おしそうにマフラーを撫でた。
「このマフラーには、強力な加護がかかっている。編んでいる時にも私のことを考えてくれていたのではないか?」
マフラーをよく見ると、想像以上に強い加護がかかっている。制作前にかけた浄化魔法だけでは説明できない加護だ。それはミシュリーヌのオーギュストに対する気持ちの表れでもある。
ミシュリーヌが恥ずかしくなりながら頷くと、オーギュストが嬉しそうにマフラーを首に巻く。
「お仕事の邪魔になるといけないので、お忍びで出かける時に使っていただければ嬉しいです」
「ずっと、つけておく。問題ないよ」
「でも……」
オーギュストは魔導師らしい黒一色の服装に白いマフラーをつけている。顔周りが明るくなって良いが、仕事中にマフラーを巻いているところは見たことがない。きっと、邪魔になるから避けてきたのだろう。
「問題ない。何が起きても汚したり破ったりしないような魔法を開発する。そうだ、今できることだけでもしておこう」
オーギュストは言いながら、いくつもの魔法陣を展開する。マフラーを守るための魔法だろう。絶対に外さないという意思が伝わってきて、ミシュリーヌは嬉しかった。
「ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方だよ。素敵なプレゼントをありがとう」
オーギュストがミシュリーヌの頬に優しい口づけをおとす。ミシュリーヌはお返しにオーギュストの唇を奪った。
この日をきっかけに、冬のオーギュストといえば白いマフラーと言われるようになる。しかし、本人たちの耳に入ったのはフルーナ王国に数多ある村々に本当の平和が訪れた後だったという。
終
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【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございました。編み物をしながら考えたお話です。季節外れになってしまってすみません。読んでいただけて嬉しいです。
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