婚約破棄ですか?聞き飽きましたのでお好きになさってくださる?

うめまつ

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「……あれは男と女の句区別もつかんのか」

お父様は椅子にぐったりと体を預けて天を仰いでます。

私も同じです。

弟達の話だと、妹のふりをして私の婚約の邪魔をしたそうです。

「天使のように可愛いのは認めますが、女装趣味はいけませんよ?」

「女装はしてません。こういう布を腰に巻いて……、ほら」

家具にかけてあるレースの布を腰に巻くだけ。

それでもじゅうぶん可愛い。

さすが私の天使。

「スカートと腰巻きの区別もつかんのかぁ……はぁぁぁ」

一瞥したお父様がまた深くため息をついています。

「もういい。婚約は解消だ。援助も取り止めだ。騙されやすすぎる」

「そうですわね」

こんな人じゃいずれまた騙されます。

喜ぶ弟達に、お父様はそれぞれ拳を脳天に。

ごつっ、ごつっと良い音がしました。

「姉の婚約を喜べないのはいかん。反省しろ」

しばらく私とのお茶会は禁止と言い渡されてしょぼくれてました。

「だが、面白い。次も同じようにしてやれ」

にやぁっと笑うお父様。

「は?お父様?」

「「え?」」

私たちは戸惑うだけでした。

あれから何人も婚約者候補が我が家へと訪れました。

弟達のハニートラップは完璧です。

私の昔の服を仕立て直して着回して。

次々と男達を翻弄しています。

時には妹、時には召し使いところころと姿を変えて。

そんな日々が半年ほど続いてやっと新しい婚約者と巡り会えました。

弟達の女装をあっさりと見破って。

騎士のハドリアス様です。

「どうしてお分かりになったのですか?」

「簡単だよ。あの子達が男だからだよ」

「見た目ではわかりませんでしょう?」

「ふふ、鼻が良いもので」

ツンツンとご自身の鼻を指で撫でてます。

「それだけ?」

「まさか」

「教えてはくださいませんの?」

ねだってもニコニコと微笑むだけ。

「知りたいわ」

「そんなに気になりますか?」

「ええ」

ならば秘密だと教えてくれません。

その方がミステリアスだからと笑うだけ。
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