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その後のダドリー様ですか?
私が何か嫌がらせをする必要もないほどもちろん立派に落ちぶれていました。
こちらとしてはさっさと縁を切りたかったので慰謝料は最低限にとどめ、途中まで援助していた事業は打ちきりに。
回収の見込みは無しと判断し、これ以上の無駄金となる前に早めに切り上げなくてはと脱兎のごとく我が家は撤退致しました。
信用できない相手と商売なんか出来ませんから。
没落寸前とはいえ、周囲に広く知られていませんでしたし、見目の良い方でしたので、すぐに次の婚約も決まり遠くから祝福していたのですが、可哀想になるくらい全く良い噂は聞こえませんでした。
共同の事業者とされていたのに、ダドリー様達は商売は下位貴族の仕事と丸投げされてお金を使い込まれたとか。
いえ、私共と婚約されていた時から経営にノータッチでした。
我が家としては自由に采配が振るえると喜んでおりましたけど。
ダドリー様も迂闊な方だから婚前交渉をされてお相手のご令嬢を孕ませたとか。
先日、我が家にも訪ねてこられて援助の申し込みをされたので、丁寧にお断りした上でお帰り願いました。
今日はハドリアス様が来られるのに、つい昔の男のことを思い耽ってしまいました。
いけない、いけない。
つい婚約者のお茶会となると昔のことを思い出してしまいます。
ハドリアス様とダドリー様では雲泥の差です。
迂闊で短気なあの方と比べたら、用心深く慎重でどの方にも礼儀正しくて。
お体も騎士である為、立派な体格。
ハドリアス様ならきっと崖にぶら下がっても一人でよじ登って私と弟たちを助けてくださる。
そういう頼りがいのある方です。
伯爵の娘から騎士爵位へと下にお嫁に行くのは苦労すると思うのですが、ハドリアス様とならと思えるのです。
部屋でハドリアス様の来訪をお待ちしておりましたら、玄関が騒がしくて、メイドを呼んで何事かと尋ねました。
口ごもるメイドに要領を得ず玄関へと向かいました。
途中、2階の窓から見えたのはハドリアス様と対峙するダドリー様でした。
「なぜダドリー様が?」
「それが、ラトビア様と婚約をやり直すと仰っていて」
「はあああ??」
メイドが良い淀むはずです。
「本当にそう仰っていました、可笑しな話ではございますが、信じてください!」
口にしたメイドも泣いて混乱していました。
もう一度、お二人の様子を窓から見ます。
ダドリー様は興奮して手振り身ぶりで話をしているみたい。
「荒っぽくてもいいわ。ダドリー様を追い返して」
護衛の私兵が我が家におります。
彼らを呼ぶようにと指示を出しました。
「あ!お嬢様!大変です!」
「今度は何?!」
「ダドリー様が剣を!」
慌てて見ると剣を構えるダドリー様がおられました。
ハドリアス様が負けるとは思いません。
ですが、身分の差がございます。
「ハドリアス様!ハドリアス様!」
慌てた私は手で強く叩きすぎて窓ガラスを割って体ごと2階から飛び出してしまいました。
「きゃあああ!お嬢様!」
後ろからメイドがスカートを掴んでもびりびりと破けて。
無我夢中でメイドに捕まろうとしましたが、ばりっと大きく裂けたのが見えました。
頭が下に、足は上を向いて真っ逆さまに。
ハドリアス様と叫びながら落ちました。
どん、と強い衝撃。
体に感じた衝撃で頭がくらくらします。
「ラトビア嬢、ラトビア嬢!しっかり!」
頬を掴まれて上を向かされて、目を開けるとハドリアス様のお顔が目の前に。
「ハ、ハドリアス様、私は」
「2階の窓から、落ちてくるのが見えて咄嗟に受け止めましたが。お怪我は?痛いところは?」
私を受け止めてくださったのだと分かりました。
ハドリアス様は立てないようで座ったまま私を抱き起こしてくださいました。
「不甲斐ない。自分は足をくじいたようだ」
「私のせいで申し訳ありません。」
私は泣いてハドリアス様にしがみつきました。
「ハドリアス様こそ、ダドリー様に剣を向けられて、私は心配で、」
「ああ、ご心配をおかけして申し訳ありません。ラトビア嬢、お許しください」
「いいえ!他人行儀になさらないで、ラトビアと呼んでください。」
「よろしいのですか?!」
「ハドリアス様さえよければ。私はハドリアス様にそう呼ばれたいのです」
「ラ、ラトビア」
「はい、ハドリアス様」
「私は幸せ者だ。あなたの愛を得られたのだから」
私を抱き締めて頬にキスを。
「私も幸せです。身を呈してくださる殿方と一生を共にできるのですから」
「ラトビア!お前は俺の婚約者だ!そうすれば事業も何もかも元通りなんだ!」
幸せに浸っていたのにぐいっと肩を引かれてよろけて、ハドリアス様が支えてくださいました。
「うるさいですわ!ダドリー様!私は今は幸せな気分なんです!早くお帰りになって!衛兵、さっさと摘まみ出しなさい」
しっしっと手を振って肩のゴミを叩き落としました。
遅れてお父様と弟たちも屋敷から飛び出して、ダドリー様を馬車に詰め込み3人で送り届けると息巻いて出発いたしました。
「ラトビア、キラキラしてる」
「え?」
「じっとして。ガラスの破片だろう。髪に」
「あ、」
よく見るとスカートは破れて足が出てますし、髪はぐちゃぐちゃです。
「私ったら、こんな格好」
恥ずかしくて顔を赤らめていると、眩しそうに目を細めて顔を撫でてまた頬にキスを。
「危ないけどキラキラして綺麗だ」
そのまま唇に息が当たります。
私は目をつぶってハドリアス様のキスを受け入れました。
あのあと、ダドリー様のお家からがっぽり慰謝料を取り立てたお父様と弟たちが帰ってきました。
もうお家再建は難しいでしょう。
ハドリアス様はそれも頼もしいご家族だと笑って。
弟たちは姉を守った恩人だと尊敬を。
父は娘を託すに充分な人柄と褒め称えて。
ハドリアス様と家族と、穏やかなひと時を過ごしました。
~終~
私が何か嫌がらせをする必要もないほどもちろん立派に落ちぶれていました。
こちらとしてはさっさと縁を切りたかったので慰謝料は最低限にとどめ、途中まで援助していた事業は打ちきりに。
回収の見込みは無しと判断し、これ以上の無駄金となる前に早めに切り上げなくてはと脱兎のごとく我が家は撤退致しました。
信用できない相手と商売なんか出来ませんから。
没落寸前とはいえ、周囲に広く知られていませんでしたし、見目の良い方でしたので、すぐに次の婚約も決まり遠くから祝福していたのですが、可哀想になるくらい全く良い噂は聞こえませんでした。
共同の事業者とされていたのに、ダドリー様達は商売は下位貴族の仕事と丸投げされてお金を使い込まれたとか。
いえ、私共と婚約されていた時から経営にノータッチでした。
我が家としては自由に采配が振るえると喜んでおりましたけど。
ダドリー様も迂闊な方だから婚前交渉をされてお相手のご令嬢を孕ませたとか。
先日、我が家にも訪ねてこられて援助の申し込みをされたので、丁寧にお断りした上でお帰り願いました。
今日はハドリアス様が来られるのに、つい昔の男のことを思い耽ってしまいました。
いけない、いけない。
つい婚約者のお茶会となると昔のことを思い出してしまいます。
ハドリアス様とダドリー様では雲泥の差です。
迂闊で短気なあの方と比べたら、用心深く慎重でどの方にも礼儀正しくて。
お体も騎士である為、立派な体格。
ハドリアス様ならきっと崖にぶら下がっても一人でよじ登って私と弟たちを助けてくださる。
そういう頼りがいのある方です。
伯爵の娘から騎士爵位へと下にお嫁に行くのは苦労すると思うのですが、ハドリアス様とならと思えるのです。
部屋でハドリアス様の来訪をお待ちしておりましたら、玄関が騒がしくて、メイドを呼んで何事かと尋ねました。
口ごもるメイドに要領を得ず玄関へと向かいました。
途中、2階の窓から見えたのはハドリアス様と対峙するダドリー様でした。
「なぜダドリー様が?」
「それが、ラトビア様と婚約をやり直すと仰っていて」
「はあああ??」
メイドが良い淀むはずです。
「本当にそう仰っていました、可笑しな話ではございますが、信じてください!」
口にしたメイドも泣いて混乱していました。
もう一度、お二人の様子を窓から見ます。
ダドリー様は興奮して手振り身ぶりで話をしているみたい。
「荒っぽくてもいいわ。ダドリー様を追い返して」
護衛の私兵が我が家におります。
彼らを呼ぶようにと指示を出しました。
「あ!お嬢様!大変です!」
「今度は何?!」
「ダドリー様が剣を!」
慌てて見ると剣を構えるダドリー様がおられました。
ハドリアス様が負けるとは思いません。
ですが、身分の差がございます。
「ハドリアス様!ハドリアス様!」
慌てた私は手で強く叩きすぎて窓ガラスを割って体ごと2階から飛び出してしまいました。
「きゃあああ!お嬢様!」
後ろからメイドがスカートを掴んでもびりびりと破けて。
無我夢中でメイドに捕まろうとしましたが、ばりっと大きく裂けたのが見えました。
頭が下に、足は上を向いて真っ逆さまに。
ハドリアス様と叫びながら落ちました。
どん、と強い衝撃。
体に感じた衝撃で頭がくらくらします。
「ラトビア嬢、ラトビア嬢!しっかり!」
頬を掴まれて上を向かされて、目を開けるとハドリアス様のお顔が目の前に。
「ハ、ハドリアス様、私は」
「2階の窓から、落ちてくるのが見えて咄嗟に受け止めましたが。お怪我は?痛いところは?」
私を受け止めてくださったのだと分かりました。
ハドリアス様は立てないようで座ったまま私を抱き起こしてくださいました。
「不甲斐ない。自分は足をくじいたようだ」
「私のせいで申し訳ありません。」
私は泣いてハドリアス様にしがみつきました。
「ハドリアス様こそ、ダドリー様に剣を向けられて、私は心配で、」
「ああ、ご心配をおかけして申し訳ありません。ラトビア嬢、お許しください」
「いいえ!他人行儀になさらないで、ラトビアと呼んでください。」
「よろしいのですか?!」
「ハドリアス様さえよければ。私はハドリアス様にそう呼ばれたいのです」
「ラ、ラトビア」
「はい、ハドリアス様」
「私は幸せ者だ。あなたの愛を得られたのだから」
私を抱き締めて頬にキスを。
「私も幸せです。身を呈してくださる殿方と一生を共にできるのですから」
「ラトビア!お前は俺の婚約者だ!そうすれば事業も何もかも元通りなんだ!」
幸せに浸っていたのにぐいっと肩を引かれてよろけて、ハドリアス様が支えてくださいました。
「うるさいですわ!ダドリー様!私は今は幸せな気分なんです!早くお帰りになって!衛兵、さっさと摘まみ出しなさい」
しっしっと手を振って肩のゴミを叩き落としました。
遅れてお父様と弟たちも屋敷から飛び出して、ダドリー様を馬車に詰め込み3人で送り届けると息巻いて出発いたしました。
「ラトビア、キラキラしてる」
「え?」
「じっとして。ガラスの破片だろう。髪に」
「あ、」
よく見るとスカートは破れて足が出てますし、髪はぐちゃぐちゃです。
「私ったら、こんな格好」
恥ずかしくて顔を赤らめていると、眩しそうに目を細めて顔を撫でてまた頬にキスを。
「危ないけどキラキラして綺麗だ」
そのまま唇に息が当たります。
私は目をつぶってハドリアス様のキスを受け入れました。
あのあと、ダドリー様のお家からがっぽり慰謝料を取り立てたお父様と弟たちが帰ってきました。
もうお家再建は難しいでしょう。
ハドリアス様はそれも頼もしいご家族だと笑って。
弟たちは姉を守った恩人だと尊敬を。
父は娘を託すに充分な人柄と褒め称えて。
ハドリアス様と家族と、穏やかなひと時を過ごしました。
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