5 / 20
05
しおりを挟む
あの日、ベルフォート家の壮麗なタウンハウスを追われ、実家からも事実上の勘当を言い渡されてから、一ヶ月の時が流れていた。
市場地区の埃っぽい一角に佇む、ギルバート・ナイジェルの工房。それが今、セラフィナ・ド・ヴァレンシアの全世界だった。
最初の二週間は、まさに格闘だった。
積年の埃とガラクタの山を片付け、油と錆にまみれながら、工房の一角にささやかな生活空間と、それ以上に重要な研究スペースを確保した。
貴族令嬢の繊細な指は見る影もなく荒れ、爪の間には常に機械油の匂いが染みついていた。
忠実な侍女クロエは、何度も涙ぐみながらセラフィナの手を取り、薬を塗ろうとした。
「セラフィナ様、お願いです、もうおやめくださいまし! その白魚のようだったお手が、こんな……。このような汚れ仕事は、すべてこのクロエが引き受けますのに!」
そのたびにセラフィナは、穏やかに、しかし決して譲らない微笑みで首を横に振るのだった。
「ありがとう、クロエ。でもね、これは私自身が乗り越えなければならない儀式のようなものなの。それに、インクの染みより機械油の匂いのほうが、今の私にはずっとしっくりくるのよ。……自分の手で何かを創り出すって、こういうことなのね」
その言葉に嘘はなかった。
確かに生活は苦しい。
朝食は硬くなった黒パンと、野菜の切れ端を煮込んだ薄いスープだけ。
夜は、工房の隙間風に凍えながら、継ぎ接ぎだらけの毛布にくるまる。
かつて当たり前だった絹のシーツや、温かい暖炉、専属の料理人が作る美食の数々は、遠い夢のようだ。
だが、彼女の心は不思議なほどに満たされていた。
誰の期待にも応える必要はない。
誰かのための「完璧な令嬢」を演じる必要もない。
ここには、ありのままの自分――魔導技術の深淵に魅せられた、一人の研究者としてのセラフィナ・ド・ヴァレンシアがいるだけだった。
「おい、小娘。いつまで油を眺めているつもりだ。手が止まっているぞ」
工房の主であるギルバートが、ぶっきらぼうな声で声をかけてくる。
彼は口では常にセラフィナを「小娘」だの「世間知らず」だのと罵るが、その実、誰よりも彼女の才能を認め、その身を案じていた。
彼が作業台に無造作に置いた包みからは、焼きたてのパンの香ばしい匂いが立ち上っている。
「あら、いつも絶妙なタイミングで『ついで』がやってきますのね。ありがとうございます、師匠」
「勘違いするな。俺の昼飯のついでだ。……それより、例の安定器だ。お前の理論式を適用したら、エーテルの揺らぎがコンマ以下に収まった。……まあ、及第点だ」
最大限の賛辞であろうその言葉に、セラフィナは小さく笑みを浮かべた。
この一ヶ月で、三人の間には奇妙な家族のような絆が生まれていた。
心配性で甲斐甲斐しく世話を焼くクロエ、口は悪いが父親のように見守るギルバート、そして、二人に見守られながら、静かに、しかし着実に未来への牙を研ぐセラフィナ。
それは、失われた過去を嘆くにはあまりにも濃密で、希望に満ちた時間だった。
しかし、希望だけでは腹は満たされない。
その日の夕食後、セラフィナは小さな革袋の中身をテーブルの上に広げた。
数枚の銅貨と、銀貨が二枚。それが、彼女たちの全財産だった。
「……あと、もっても三日、というところかしら」
セラフィナの静かな呟きに、クロエの顔が曇る。
「そんな……。では、明日のパンを買うお金も……? ギルバート様への食材も、もう……」
「大丈夫よ、クロエ。明日のパンも、師匠へのお礼も、私が必ず何とかするわ。すべて想定の内よ」
彼女は冷静だった。
貴族としてのプライドを捨てたわけではない。むしろ、その誇りがあるからこそ、この現実から目を逸らさなかった。
生き抜く。そして、再起する。
そのためには、まず立つための地面を固めなければならない。
「明日、市場で使えそうな資材を探してくるわ。何か、この知識を金銭に変える方法があるはずよ」
翌日、セラフィナは男物の簡素な外套を羽織り、市場の喧騒の中へと分け入っていった。
クロエは心配して同行を申し出たが、セラフィナは工房の整理と、ギルバートの食事の世話を頼んで一人で出てきた。
甘えてばかりではいられない。
市場地区は、相変わらずの混沌と活気に満ちていた。
スパイスの匂い、家畜の鳴き声、商人たちの怒鳴り声。
かつては馬車の窓から眉をひそめて眺めるだけだった世界に、今、彼女は自分の足で立っている。
彼女が向かったのは、華やかな表通りではない。
魔導具のジャンクパーツや、使い古された機械類が山と積まれた、路地裏の露店だった。
「お嬢ちゃん、何か探し物かい? ここにはガラクタしかないぜ」
店主の男が、歯の抜けた口で笑う。
セラフィナは返事をせず、鋭い目でガラクタの山を検分していく。
錆びついた歯車、ひびの入った水晶レンズ、魔力伝導体の切れ端。
他人にはゴミにしか見えないそれらが、彼女の目には可能性の欠片として映っていた。
(この伝導線は、純度は低いけれど……複数本束ねてエーテル流を整えれば、高効率の集束回路が作れるかもしれない)
(このレンズは、中心に傷があるけれど、周辺部分は使える。研磨すれば、小型の観測装置に応用できるわ)
価値は、見出すもの。
婚約破棄を告げられた夜、砕け散った自尊心の中で、彼女が見出した真実。
それは、今や彼女の生きる指針そのものとなっていた。
いくつかの使えそうな部品を、なけなしの銅貨で買い求めた。
ずしりと重い袋を抱え、工房への帰路についた時だった。
ふと、広場の掲示板に集まる人だかりが目に入った。
何かの布告だろうか。
普段なら気にも留めない光景だったが、その日はなぜか、足が自然とそちらへ向いた。
人垣の隙間から覗き込むと、そこには一枚の美しい羊皮紙が張り出されていた。
王家の紋章が刻印された、公式の告知文。
『――王都主催 第一回 次世代デザインコンペティション開催――』
その文字が、セラフィナの目に焼き付いた。
『テーマ:新時代の夜明け』
新時代の、夜明け。
なんと皮肉な言葉だろう。
自分を旧時代の遺物として切り捨てた者たちが掲げるテーマ。
セラフィナの唇に、乾いた自嘲の笑みが浮かんだ。
だが、その目は笑っていなかった。
彼女は告知文の隅々まで、貪るように読み進めていく。
主催は王宮。
審査員には、王妃殿下をはじめ、王国芸術院の重鎮、そして……伝統派、革新派双方の有力貴族の名が連なっている。
そして、最も重要な項目。
『最優秀賞:金貨百枚。及び、王宮主催の『夜明けの祝賀舞踏会』にて、受賞作の披露と、王妃殿下への謁見の栄誉を賜う』
金貨、百枚。
その額が持つ意味を、セラフィナは痛いほど理解していた。
それは、今の自分たちの生活を一年以上支え、研究に必要な最低限の設備を整えることができる、まさに生命線だった。
だが、それ以上に彼女の心を捉えたのは、別の可能性だった。
これは、チャンスだ。
ジュリアンも、ヴィヴィアンも、そしてベルフォート公爵も、必ずこのコンペに注目するだろう。
社交界の一大イベントだ。
自分を過去の遺物と嘲笑った彼らの目の前で、全く新しい、誰も見たことのない美の形を提示する。
セラフィナ・ド・ヴァレンシアの名では参加できない。
しかし、無名の新人デザイナーとしてなら?
冷たい怒りが、静かな闘志へと変わった。
凍てついていた血が、再び熱く巡り始めるのを感じた。
これこそが、私の戦場。私の「夜明け」。
踵を返し、工房へと急いだ。
その足取りには、先程までの慎重さはなく、確固たる目的に向かう者の力強さが満ちていた。
「……デザインコンペ、ですって?」
セラフィナの宣言に、クロエは目を丸くした。
「ですがセラフィナ様、そのようなものに出品するには、高価な布地や宝飾品が……。それに、参加登録にもお金がかかるのでは?」
「参加費は銀貨一枚。先程の買い物で残った分で、ぎりぎり足りるわ」
「正気か、小娘。あれは社交界の品評会だぞ。お前がどれだけ頭が切れようと、審査するのは流行しか見えん石頭どもだ。お前の正体が露見すれば、今度こそ潰されるだけだぞ!」
腕を組んで聞いていたギルバートが、吐き捨てるように言った。
「だからこそ、やるのです」
セラフィナは、二人をまっすぐに見据えた。
その瞳には、もはや一片の迷いもなかった。
「正体を知られぬよう、細心の注意を払います。そして、誰にも文句を言わせない、圧倒的な作品を創り上げる。これは賭けです。ですが、今の私たちには、この賭けに乗るしか道はない」
彼女の静かだが、鋼のように強い意志に、クロエもギルバートも言葉を失った。
「師よ。私には、最高級のシルクも、ダイヤモンドもありません。ですが、私には師から授かった知識と、誰にも模倣できない理論があります。……そして、それを形にするのを手伝ってくれる、最高の師匠がここにいます。それこそが、私の持つ誰にも負けない最高の素材です」
ギルバートは、大きくため息をつくと、やれやれと首を振った。
「……勝手にしろ。だが、泣きついても知らんからな」
それは、彼なりの激励だった。
「ありがとうございます」
セラフィナは深く頭を下げた。
その夜から、彼女の本当の戦いが始まった。
工房の一角に確保した研究スペース。
そこには、高価な画材も、デザイン画を描くための上質な紙もない。
あるのは、セラフィナが市場で集めてきたガラクタと、彼女の頭脳だけ。
彼女は、スケッチブックに向かう代わりに、作業台の中央に鎮座する、奇妙な機械の前に立った。
それは、複数のレンズと水晶、そして複雑に絡み合った魔力伝導線で構成された、未完成の装置。
彼女が長年、密かに理論を構築してきた「エーテル・プロジェクター」の試作機だった。
「ギルバート師、魔力供給をお願いします。出力は低く、安定性を最優先で」
「……無茶を言う」
ギルバートは悪態をつきながらも、手慣れた様子で魔力安定器のダイヤルを調整し始める。
セラフィナは目を閉じ、深く息を吸った。
彼女の意識が、プロジェクターの核となる制御水晶へと接続されていく。
これはまだ、思考だけで操作する「ニューロ・リンク」の領域には至らない。
指先の微細な魔力制御と、正確なエーテル式の詠唱が不可欠だった。
ブゥン、と低い唸り声を上げて、装置が振動を始める。
工房の薄暗い空気が、微かに揺らめいた。
何もない空間に、一点、また一点と、光の粒子が生まれ、集い始める。
それはまるで、闇夜に星が生まれる瞬間のようだった。
クロエが、息をのむのが分かった。
ギルバートの口元から、感嘆の吐息が漏れた。
セラフィナの指先が、空中で優雅な軌跡を描く。
その動きに呼応して、光の粒子は糸のように連なり、布のように面を形成していく。
それは、もはやデザイン画ではなかった。
空中に浮かび上がったのは、光でできた、実物大のドレスそのものだった。
そのデザインは、王都の誰もが見たことのない、あまりにも斬新なものだった。
まず、色彩。
王侯貴族が好むような華美な色合いは一切ない。
ただ、深く、静かで、知的な「チャコールグレー」のワントーン。
光の加減で、銀色にも黒にも見える、幽玄な色合い。
そして、その構造。
完璧なシンメトリー(左右対称)を至上とする伝統的なドレスとは真逆の、大胆なアシンメトリー(左右非対称)。
片方の肩は優雅に露出し、もう片方は流れるようなドレープで覆われている。
スカートの裾もまた、左右で長さが異なり、歩くたびに複雑で美しい陰影を生み出すであろうことが想像できた。
伝統的なシンメトリーのドレスが持つ『静』の美しさに対し、このドレスはまるで歩き出す瞬間を捉えたかのような『動』の美しさを内包していた。
宝石も、レースも、リボンもない。
あるのは、計算され尽くしたカッティングと、布地の流れが織りなす、構造的な美しさだけ。
「……なんだ、これは……」
ギルバートが、呆然と呟いた。
長年、王宮で最高の技術に触れてきた彼でさえ、このような創造の過程を目にしたことはなかった。
これは魔術であり、同時に科学であり、そして紛れもない芸術だった。
セラフィナは、周囲の声も聞こえていないかのように、創造に没頭していた。
彼女は空中の光のドレスにそっと触れる。
すると、その部分の質感が変化し、まるで本物のシルクのような光沢を帯びた。
別の箇所をなぞれば、羽のように軽やかなオーガンジーの質感に変わる。
これは、単なる立体映像ではない。
エーテル織の理論を応用し、物質の「情報」そのものを空間に投影しているのだ。
彼女の瞳は、かつてないほど輝いていた。
婚約破棄の屈辱も、失った富も名誉も、今はどうでもよかった。
ただ、自らの知識と技術で、無から有を生み出すこの瞬間の、純粋な喜びに満たされていた。
ジュリアン。ヴィヴィアン。
あなたたちが「時代遅れ」と切り捨てた女は、今、あなたたちの誰も知らないやり方で、新しい時代そのものをデザインしている。
一時間ほどして、セラフィナはふっと指の力を抜いた。
目の前の空間には、完璧なフォルムを持つ光のドレスが、静かな輝きを放ちながら浮かんでいた。
彼女は満足げに息をつき、傍らで言葉を失っている二人に向かって、静かに、しかし力強く宣言した。
「これが、私の『夜明け』よ」
その声は、自信と、揺るぎない確信に満ちていた。
だが、セラフィナは知っていた。
これはまだ、設計図に過ぎない。
この光の幻を、現実の布と糸で、人々の心を揺さぶる一着のドレスとして完成させるには、越えなければならない壁がまだいくつも存在することを。
特に、このデザインの心臓部となる、光を内包するかのような特殊な繊維。
そして、このエーテル・プロジェクターを完全に安定させるための、希少な集光結晶。
それらを手に入れるには、あの近代的な魔導技術の中心地、エーテルポート地区へ赴く必要があった。
彼女の本当の挑戦は、まだ始まったばかりだった。
市場地区の埃っぽい一角に佇む、ギルバート・ナイジェルの工房。それが今、セラフィナ・ド・ヴァレンシアの全世界だった。
最初の二週間は、まさに格闘だった。
積年の埃とガラクタの山を片付け、油と錆にまみれながら、工房の一角にささやかな生活空間と、それ以上に重要な研究スペースを確保した。
貴族令嬢の繊細な指は見る影もなく荒れ、爪の間には常に機械油の匂いが染みついていた。
忠実な侍女クロエは、何度も涙ぐみながらセラフィナの手を取り、薬を塗ろうとした。
「セラフィナ様、お願いです、もうおやめくださいまし! その白魚のようだったお手が、こんな……。このような汚れ仕事は、すべてこのクロエが引き受けますのに!」
そのたびにセラフィナは、穏やかに、しかし決して譲らない微笑みで首を横に振るのだった。
「ありがとう、クロエ。でもね、これは私自身が乗り越えなければならない儀式のようなものなの。それに、インクの染みより機械油の匂いのほうが、今の私にはずっとしっくりくるのよ。……自分の手で何かを創り出すって、こういうことなのね」
その言葉に嘘はなかった。
確かに生活は苦しい。
朝食は硬くなった黒パンと、野菜の切れ端を煮込んだ薄いスープだけ。
夜は、工房の隙間風に凍えながら、継ぎ接ぎだらけの毛布にくるまる。
かつて当たり前だった絹のシーツや、温かい暖炉、専属の料理人が作る美食の数々は、遠い夢のようだ。
だが、彼女の心は不思議なほどに満たされていた。
誰の期待にも応える必要はない。
誰かのための「完璧な令嬢」を演じる必要もない。
ここには、ありのままの自分――魔導技術の深淵に魅せられた、一人の研究者としてのセラフィナ・ド・ヴァレンシアがいるだけだった。
「おい、小娘。いつまで油を眺めているつもりだ。手が止まっているぞ」
工房の主であるギルバートが、ぶっきらぼうな声で声をかけてくる。
彼は口では常にセラフィナを「小娘」だの「世間知らず」だのと罵るが、その実、誰よりも彼女の才能を認め、その身を案じていた。
彼が作業台に無造作に置いた包みからは、焼きたてのパンの香ばしい匂いが立ち上っている。
「あら、いつも絶妙なタイミングで『ついで』がやってきますのね。ありがとうございます、師匠」
「勘違いするな。俺の昼飯のついでだ。……それより、例の安定器だ。お前の理論式を適用したら、エーテルの揺らぎがコンマ以下に収まった。……まあ、及第点だ」
最大限の賛辞であろうその言葉に、セラフィナは小さく笑みを浮かべた。
この一ヶ月で、三人の間には奇妙な家族のような絆が生まれていた。
心配性で甲斐甲斐しく世話を焼くクロエ、口は悪いが父親のように見守るギルバート、そして、二人に見守られながら、静かに、しかし着実に未来への牙を研ぐセラフィナ。
それは、失われた過去を嘆くにはあまりにも濃密で、希望に満ちた時間だった。
しかし、希望だけでは腹は満たされない。
その日の夕食後、セラフィナは小さな革袋の中身をテーブルの上に広げた。
数枚の銅貨と、銀貨が二枚。それが、彼女たちの全財産だった。
「……あと、もっても三日、というところかしら」
セラフィナの静かな呟きに、クロエの顔が曇る。
「そんな……。では、明日のパンを買うお金も……? ギルバート様への食材も、もう……」
「大丈夫よ、クロエ。明日のパンも、師匠へのお礼も、私が必ず何とかするわ。すべて想定の内よ」
彼女は冷静だった。
貴族としてのプライドを捨てたわけではない。むしろ、その誇りがあるからこそ、この現実から目を逸らさなかった。
生き抜く。そして、再起する。
そのためには、まず立つための地面を固めなければならない。
「明日、市場で使えそうな資材を探してくるわ。何か、この知識を金銭に変える方法があるはずよ」
翌日、セラフィナは男物の簡素な外套を羽織り、市場の喧騒の中へと分け入っていった。
クロエは心配して同行を申し出たが、セラフィナは工房の整理と、ギルバートの食事の世話を頼んで一人で出てきた。
甘えてばかりではいられない。
市場地区は、相変わらずの混沌と活気に満ちていた。
スパイスの匂い、家畜の鳴き声、商人たちの怒鳴り声。
かつては馬車の窓から眉をひそめて眺めるだけだった世界に、今、彼女は自分の足で立っている。
彼女が向かったのは、華やかな表通りではない。
魔導具のジャンクパーツや、使い古された機械類が山と積まれた、路地裏の露店だった。
「お嬢ちゃん、何か探し物かい? ここにはガラクタしかないぜ」
店主の男が、歯の抜けた口で笑う。
セラフィナは返事をせず、鋭い目でガラクタの山を検分していく。
錆びついた歯車、ひびの入った水晶レンズ、魔力伝導体の切れ端。
他人にはゴミにしか見えないそれらが、彼女の目には可能性の欠片として映っていた。
(この伝導線は、純度は低いけれど……複数本束ねてエーテル流を整えれば、高効率の集束回路が作れるかもしれない)
(このレンズは、中心に傷があるけれど、周辺部分は使える。研磨すれば、小型の観測装置に応用できるわ)
価値は、見出すもの。
婚約破棄を告げられた夜、砕け散った自尊心の中で、彼女が見出した真実。
それは、今や彼女の生きる指針そのものとなっていた。
いくつかの使えそうな部品を、なけなしの銅貨で買い求めた。
ずしりと重い袋を抱え、工房への帰路についた時だった。
ふと、広場の掲示板に集まる人だかりが目に入った。
何かの布告だろうか。
普段なら気にも留めない光景だったが、その日はなぜか、足が自然とそちらへ向いた。
人垣の隙間から覗き込むと、そこには一枚の美しい羊皮紙が張り出されていた。
王家の紋章が刻印された、公式の告知文。
『――王都主催 第一回 次世代デザインコンペティション開催――』
その文字が、セラフィナの目に焼き付いた。
『テーマ:新時代の夜明け』
新時代の、夜明け。
なんと皮肉な言葉だろう。
自分を旧時代の遺物として切り捨てた者たちが掲げるテーマ。
セラフィナの唇に、乾いた自嘲の笑みが浮かんだ。
だが、その目は笑っていなかった。
彼女は告知文の隅々まで、貪るように読み進めていく。
主催は王宮。
審査員には、王妃殿下をはじめ、王国芸術院の重鎮、そして……伝統派、革新派双方の有力貴族の名が連なっている。
そして、最も重要な項目。
『最優秀賞:金貨百枚。及び、王宮主催の『夜明けの祝賀舞踏会』にて、受賞作の披露と、王妃殿下への謁見の栄誉を賜う』
金貨、百枚。
その額が持つ意味を、セラフィナは痛いほど理解していた。
それは、今の自分たちの生活を一年以上支え、研究に必要な最低限の設備を整えることができる、まさに生命線だった。
だが、それ以上に彼女の心を捉えたのは、別の可能性だった。
これは、チャンスだ。
ジュリアンも、ヴィヴィアンも、そしてベルフォート公爵も、必ずこのコンペに注目するだろう。
社交界の一大イベントだ。
自分を過去の遺物と嘲笑った彼らの目の前で、全く新しい、誰も見たことのない美の形を提示する。
セラフィナ・ド・ヴァレンシアの名では参加できない。
しかし、無名の新人デザイナーとしてなら?
冷たい怒りが、静かな闘志へと変わった。
凍てついていた血が、再び熱く巡り始めるのを感じた。
これこそが、私の戦場。私の「夜明け」。
踵を返し、工房へと急いだ。
その足取りには、先程までの慎重さはなく、確固たる目的に向かう者の力強さが満ちていた。
「……デザインコンペ、ですって?」
セラフィナの宣言に、クロエは目を丸くした。
「ですがセラフィナ様、そのようなものに出品するには、高価な布地や宝飾品が……。それに、参加登録にもお金がかかるのでは?」
「参加費は銀貨一枚。先程の買い物で残った分で、ぎりぎり足りるわ」
「正気か、小娘。あれは社交界の品評会だぞ。お前がどれだけ頭が切れようと、審査するのは流行しか見えん石頭どもだ。お前の正体が露見すれば、今度こそ潰されるだけだぞ!」
腕を組んで聞いていたギルバートが、吐き捨てるように言った。
「だからこそ、やるのです」
セラフィナは、二人をまっすぐに見据えた。
その瞳には、もはや一片の迷いもなかった。
「正体を知られぬよう、細心の注意を払います。そして、誰にも文句を言わせない、圧倒的な作品を創り上げる。これは賭けです。ですが、今の私たちには、この賭けに乗るしか道はない」
彼女の静かだが、鋼のように強い意志に、クロエもギルバートも言葉を失った。
「師よ。私には、最高級のシルクも、ダイヤモンドもありません。ですが、私には師から授かった知識と、誰にも模倣できない理論があります。……そして、それを形にするのを手伝ってくれる、最高の師匠がここにいます。それこそが、私の持つ誰にも負けない最高の素材です」
ギルバートは、大きくため息をつくと、やれやれと首を振った。
「……勝手にしろ。だが、泣きついても知らんからな」
それは、彼なりの激励だった。
「ありがとうございます」
セラフィナは深く頭を下げた。
その夜から、彼女の本当の戦いが始まった。
工房の一角に確保した研究スペース。
そこには、高価な画材も、デザイン画を描くための上質な紙もない。
あるのは、セラフィナが市場で集めてきたガラクタと、彼女の頭脳だけ。
彼女は、スケッチブックに向かう代わりに、作業台の中央に鎮座する、奇妙な機械の前に立った。
それは、複数のレンズと水晶、そして複雑に絡み合った魔力伝導線で構成された、未完成の装置。
彼女が長年、密かに理論を構築してきた「エーテル・プロジェクター」の試作機だった。
「ギルバート師、魔力供給をお願いします。出力は低く、安定性を最優先で」
「……無茶を言う」
ギルバートは悪態をつきながらも、手慣れた様子で魔力安定器のダイヤルを調整し始める。
セラフィナは目を閉じ、深く息を吸った。
彼女の意識が、プロジェクターの核となる制御水晶へと接続されていく。
これはまだ、思考だけで操作する「ニューロ・リンク」の領域には至らない。
指先の微細な魔力制御と、正確なエーテル式の詠唱が不可欠だった。
ブゥン、と低い唸り声を上げて、装置が振動を始める。
工房の薄暗い空気が、微かに揺らめいた。
何もない空間に、一点、また一点と、光の粒子が生まれ、集い始める。
それはまるで、闇夜に星が生まれる瞬間のようだった。
クロエが、息をのむのが分かった。
ギルバートの口元から、感嘆の吐息が漏れた。
セラフィナの指先が、空中で優雅な軌跡を描く。
その動きに呼応して、光の粒子は糸のように連なり、布のように面を形成していく。
それは、もはやデザイン画ではなかった。
空中に浮かび上がったのは、光でできた、実物大のドレスそのものだった。
そのデザインは、王都の誰もが見たことのない、あまりにも斬新なものだった。
まず、色彩。
王侯貴族が好むような華美な色合いは一切ない。
ただ、深く、静かで、知的な「チャコールグレー」のワントーン。
光の加減で、銀色にも黒にも見える、幽玄な色合い。
そして、その構造。
完璧なシンメトリー(左右対称)を至上とする伝統的なドレスとは真逆の、大胆なアシンメトリー(左右非対称)。
片方の肩は優雅に露出し、もう片方は流れるようなドレープで覆われている。
スカートの裾もまた、左右で長さが異なり、歩くたびに複雑で美しい陰影を生み出すであろうことが想像できた。
伝統的なシンメトリーのドレスが持つ『静』の美しさに対し、このドレスはまるで歩き出す瞬間を捉えたかのような『動』の美しさを内包していた。
宝石も、レースも、リボンもない。
あるのは、計算され尽くしたカッティングと、布地の流れが織りなす、構造的な美しさだけ。
「……なんだ、これは……」
ギルバートが、呆然と呟いた。
長年、王宮で最高の技術に触れてきた彼でさえ、このような創造の過程を目にしたことはなかった。
これは魔術であり、同時に科学であり、そして紛れもない芸術だった。
セラフィナは、周囲の声も聞こえていないかのように、創造に没頭していた。
彼女は空中の光のドレスにそっと触れる。
すると、その部分の質感が変化し、まるで本物のシルクのような光沢を帯びた。
別の箇所をなぞれば、羽のように軽やかなオーガンジーの質感に変わる。
これは、単なる立体映像ではない。
エーテル織の理論を応用し、物質の「情報」そのものを空間に投影しているのだ。
彼女の瞳は、かつてないほど輝いていた。
婚約破棄の屈辱も、失った富も名誉も、今はどうでもよかった。
ただ、自らの知識と技術で、無から有を生み出すこの瞬間の、純粋な喜びに満たされていた。
ジュリアン。ヴィヴィアン。
あなたたちが「時代遅れ」と切り捨てた女は、今、あなたたちの誰も知らないやり方で、新しい時代そのものをデザインしている。
一時間ほどして、セラフィナはふっと指の力を抜いた。
目の前の空間には、完璧なフォルムを持つ光のドレスが、静かな輝きを放ちながら浮かんでいた。
彼女は満足げに息をつき、傍らで言葉を失っている二人に向かって、静かに、しかし力強く宣言した。
「これが、私の『夜明け』よ」
その声は、自信と、揺るぎない確信に満ちていた。
だが、セラフィナは知っていた。
これはまだ、設計図に過ぎない。
この光の幻を、現実の布と糸で、人々の心を揺さぶる一着のドレスとして完成させるには、越えなければならない壁がまだいくつも存在することを。
特に、このデザインの心臓部となる、光を内包するかのような特殊な繊維。
そして、このエーテル・プロジェクターを完全に安定させるための、希少な集光結晶。
それらを手に入れるには、あの近代的な魔導技術の中心地、エーテルポート地区へ赴く必要があった。
彼女の本当の挑戦は、まだ始まったばかりだった。
117
あなたにおすすめの小説
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
【完結】聖女を愛する婚約者に婚約破棄を突きつけられましたが、愛する人と幸せになります!
ユウ
恋愛
「君には失望した!聖女を虐げるとは!」
侯爵令嬢のオンディーヌは宮廷楽団に所属する歌姫だった。
しかしある日聖女を虐げたという瞬間が流れてしまい、断罪されてしまう。
全ては仕組まれた冤罪だった。
聖女を愛する婚約者や私を邪魔だと思う者達の。
幼い頃からの幼馴染も、友人も目の敵で睨みつけ私は公衆の面前で婚約破棄を突きつけられ家からも勘当されてしまったオンディーヌだったが…
「やっと自由になれたぞ!」
実に前向きなオンディーヌは転生者で何時か追い出された時の為に準備をしていたのだ。
貴族の生活に憔悴してので追放万々歳と思う最中、老婆の森に身を寄せることになるのだった。
一方王都では王女の逆鱗に触れ冤罪だった事が明らかになる。
すぐに連れ戻すように命を受けるも、既に王都にはおらず偽りの断罪をした者達はさらなる報いを受けることになるのだった。
【完結】幽霊令嬢は追放先で聖地を創り、隣国の皇太子に愛される〜私を捨てた祖国はもう手遅れです〜
遠野エン
恋愛
セレスティア伯爵家の長女フィーナは、生まれつき強大すぎる魔力を制御できず、常に体から生命力ごと魔力が漏れ出すという原因不明の症状に苦しんでいた。そのせいで慢性的な体調不良に陥り『幽霊令嬢』『出来損ない』と蔑まれ、父、母、そして聖女と謳われる妹イリス、さらには専属侍女からも虐げられる日々を送っていた。
晩餐会で婚約者であるエリオット王国・王太子アッシュから「欠陥品」と罵られ、公衆の面前で婚約を破棄される。アッシュは新たな婚約者に妹イリスを選び、フィーナを魔力の枯渇した不毛の大地『グランフェルド』へ追放することを宣言する。しかし、死地へ送られるフィーナは絶望しなかった。むしろ長年の苦しみから解放されたように晴れやかな気持ちで追放を受け入れる。
グランフェルドへ向かう道中、あれほど彼女を苦しめていた体調不良が嘘のように快復していくことに気づく。追放先で出会った青年ロイエルと共に土地を蘇らせようと奮闘する一方で、王国では異変が次々と起き始め………。
《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
聖獣使い唯一の末裔である私は追放されたので、命の恩人の牧場に尽力します。~お願いですから帰ってきてください?はて?~
雪丸
恋愛
【あらすじ】
聖獣使い唯一の末裔としてキルベキア王国に従事していた主人公”アメリア・オルコット”は、聖獣に関する重大な事実を黙っていた裏切り者として国外追放と婚約破棄を言い渡された。
追放されたアメリアは、キルベキア王国と隣の大国ラルヴァクナ王国の間にある森を彷徨い、一度は死を覚悟した。
そんな中、ブランディという牧場経営者一家に拾われ、人の温かさに触れて、彼らのために尽力することを心の底から誓う。
「もう恋愛はいいや。私はブランディ牧場に骨を埋めるって決めたんだ。」
「羊もふもふ!猫吸いうはうは!楽しい!楽しい!」
「え?この国の王子なんて聞いてないです…。」
命の恩人の牧場に尽力すると決めた、アメリアの第二の人生の行く末はいかに?
◇◇◇
小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
カクヨムにて先行公開中(敬称略)
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜
腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。
絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。
しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身!
「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」
シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる