しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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シービー白状す

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 ツンツンしているくせに、やけに世話焼きだからおかしいと思ったんだ。
 こっちが頼んでもいないのに、飯は出てくるし、洗濯も勝手に終わっている。
 しかも文句ひとつ言わず……いや、文句は山ほど言うが、結局はやってくれる。
 そんな奴が「何でそこまで?」と気にならないはずがない。

 だから思い切って聞いてみた。
 「なぁ、お前……なんでそんなに世話焼くんだ?」

 すると、シービーは腕を組み、胸を張って、やけに誇らしげな顔をした。
 「記憶がねぇんだわ」
 「……は?」
 何だその堂々とした言い方は。普通、記憶喪失ってもっとこう……しおらしく言うもんじゃないのか?

 「物心ついた時には、もう魔王様のそばに居た。自分がどこから来たのかも、なんでここにいるのかも、さっぱりわからねぇ」
 「じゃあ……なんで俺の世話を?」
 「一つだけ、はっきり覚えてんだよ」
 シービーは人差し指をぴんと立てて、はっきりと言った。

 「──魔王様の命令は絶対」
 その声には迷いも揺らぎもなかった。

 「魔王様が『やれ』って言ったら、たとえ地の果てだろうが行く。どんな相手だろうがぶっ倒す。死んだってやり遂げる……それがあたしの全部だ」
 その瞳は、不思議なほど澄んでいるのに、底が見えない。

 「……で、俺の世話をしろって命令されたと」
 「ああ。『この男を見ておけ』ってな。だからやってるだけだ」
 あまりにもあっさりした口ぶりだったが、その裏には揺るぎない確信があるように思えた。

 「ルクス様はな、すげぇ人なんだぞ」
 急に声の調子が変わった。さっきまで淡々としていたのに、一気に熱を帯びてきた。

 「まず頭がキレる。剣も魔法も一級品。なのに偉ぶらねぇ。民の声をちゃんと聞くし、弱ぇやつを切り捨てねぇ。笑うときは本気で笑うし、怒るときは本気で怒る」
 「お、おう……」
 「それにな、魔王様は戦が嫌いなんだ。無駄に血を流すくらいなら、うまく立ち回って全部丸く収めちまう。領民だろうが部下だろうが、損させねぇ」
 「ほう……」
 「領民の暮らしだってそうだ。寒い地方には温もりを、飢えた土地には食い物を、荒れた街には秩序を持ってくる。やろうと思っても普通はできねぇだろ、そんなの」

 次から次へとルクス賛美が飛び出してくる。
 こいつ、間違いなく信者だな……と心の中で呟く。

 「あと魔王様はな、嘘をつかねぇ。戦いで勝つために策略は使うが、仲間を騙すような真似はしねぇ。言葉に嘘がないから、誰もがついて行くんだ」

 シービーの目は真っ直ぐだった。そこには盲目的な信頼と、絶対的な忠誠がある。

 「だからあたしは、魔王様が信じた相手を信じる。それが……おっさん、お前ってわけだ」
 「……おいおい、持ち上げても何も出ねぇぞ」
 「ふん、元から期待なんかしてねぇよ。ただ……」
 シービーはそこで言葉を切り、少しだけ視線を外した。

 「……魔王様が信じたもんを、あたしが守れなかったら、それこそ一生の恥だからな」
 そう言って、にやりと笑う。
 ツンとした表情の奥に、ほんの少しだけ柔らかい色が混じって見えた気がした。
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