しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん待機す

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 控室は、やけに静かだった。
 俺とシービーは椅子に腰を下ろし、隣室から響く金属音や機械の唸りを聞いていた。
 家電の分解と解析が続いているらしいが、俺たちは「待機」とだけ言われ、ここに押し込まれている。

 そんな中、扉が軋む音を立てて開いた。
 黒いローブの長身──インスーラが現れる。褐色の肌に銀縁眼鏡、冷えた視線がまっすぐ俺に向けられた。

 「誰かと思えば下等な中年か、目障りだ」
 相変わらず口の悪い奴だ。
 「はあ? なんだよその言い草」
 「お前の力など不要だ。さっさとここから消え失せろ」
 「さんざん俺のことを追いまわしといてそりゃねぇだろ」
 お前から逃げるためにミカがどんだけ苦労したと思ってるんだ。
 「黙れっ、虫唾が走る」
 なんだよこいつ……もう言い返す言葉も出ねぇよ。
 
 嫌な空気を切り裂くように、豪快な笑い声がした。

 「おいおい、俺様の客人に対して随分と辛辣じゃねぇかインスーラ」
 扉を押し開けて入ってきたのは、背中から十本の腕を広げた巨漢──バンボルトだ。
 俺の肩に腕を回し、白い歯を見せて笑う。

 「安心しろ、お前の力は使える。俺が上に立ったときも、悪いようにはしねぇ」
 褒められているのか? 悪い気はしないけど気色悪いな。
 「ぬけぬけと……貴様が私の獲物を横取りしなければ……」
 インスーラがおっかない顔でバンボルドを睨みつける。
 「横取り? 有能な人材を確保しただけだが?」
 バンボルドはそんなインスーラを見て楽しそうに笑った。

 「力押しだけで魔王領をなんとかできると思うなよ」
 「頭だけじゃ今のお前みたいに指咥えることしかできねぇぞ」
 なんだよこの二人、仲が悪いのか?
 しかも、原因は俺っぽいし。
 疑問に思った俺は、隣で寝落ちしそうになっているシービーをつついた。

 「なあシービー、なんでこいつら喧嘩してんだ?」
 「……ぬぁ? 知らなぇよ」
 気の抜けた声を出したシービーは、ソファにだらしなく腰を沈め、肩をすくめた。

 「先代魔王の遺言のせいじゃねぇの」
 「遺言? まだなんかあんのか?」
 「言わなかったっけ?」
 「聞いてない」
 シービーはめんどくさそうに姿勢を正すと、こう続けた。

 「次期魔王はルクス様に定める。ただし条件付き。ルクス様は優しすぎるし女だ。だから、子を産んで母になってもらいたい。そのために、ルクス様が見初めた人物と結婚し、その夫に魔王の座を継がせろって内容だ」
 まぁ、一般的な父親の考えだな。
 「それに、魔力が高いとはいえ、ルクス様の使える魔法は補助的なものが多い……確か魔物を作り出すとか、複製できるとかって魔法だ」
 「へぇ、そんな魔法もあるんだな。便利そうだけど」
 「やっぱり力がなきゃ苦労するって、先代も思っていたんだろうな。ルクス様は全然そんなこと思っていないみたいで、一人でなんとかするつもりみたいだけど」
 そんで俺は、その魔王争奪戦みたいなのに巻き込まれているってことか……よう分らんが、困っている人がいて、俺の家電達が助けになるなら力を貸さないわけにはいかないよな。

 インスーラやバンボルト以外にも、いかつい顔をした幹部っぽい奴らが、研究所に出入りしているのが分かった。
 みんな魔王の座が欲しいのか、それとも魔王領を良くしたいのか……。
 インスーラとバンボルトの言い合いを見てると、前者な気がしてルクスのことを心配してしまう。
 ここは公平を期すために、選挙っぽい仕組みとかを提案してみては、とも思ったが、それもこれもたいして変わらない気がして躊躇う。

 「なあシービー、お前の国も色々大変なんだな」
 「ああ、だから力を貸してくれって言ってんだ」
 こんな小さい子が、魔王の客人の機嫌取りに使われているって現実も普通じゃないし、マジでここを出る前になんとかしてやんねぇといけない気がする。

 「よし、大船に乗ったつもりで居ろ。俺に出来ることならなんでもやってやる」
 「あんま期待してねぇけど、頼むよおっさん」
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