しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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ミカさま決心す

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 王都ボルトリアの上空を、影が覆った。
 昼下がりの光を一瞬にして奪い取るほどの、巨大な影。
 次の瞬間、轟音と共に竜の巨体が城の大広間前に降り立った。
 黄金の竜鱗が陽光をはね返し、地を揺らす爪が石畳を削る。

 「結界、最大まで強化!」
 ミカの号令が響き渡る。魔法陣が何重にも光を帯び、城壁を覆う結界が厚みを増す。
 同時に、クレアが長剣を、サンダルフォンは大剣バスターソードを構え、臨戦態勢を取った。

 竜は低く喉を鳴らし、熱い息を吐くたびに空気が揺らめく。
 ミカは結界越しにその瞳を睨みつけ、威嚇するように声を放った。

 「一刻も早く、電のじを助け出さねばならんのに……お前のような化け物に構っている暇はない」
 「ここにはお前の望むものは何もない。立ち去るがいい!」

 しかし竜は退かない。
 その頭部に、小さな人影があることに気づいたのはエネッタだった。

 「……あれは、まさか……ステラさん?」
 エネッタは目を凝らし、驚きの声を上げる。
 竜の背に立つ少女が、こちらに向かって手を振っていた。学園の教室で見慣れた仕草だ。

 「知り合いか?」とミカ。
 「はい……学友です」エネッタは短く答える。

 竜の背から切迫した声が響いた。
 「お願いです、入れて下さい! 早く轟電次郎を助けに行かなくては!」
 その叫びに、ミカは一瞬躊躇する。

 「しかし、そのドラゴンは……」
 言いかけたところで、ステラが竜に向かって叫んだ。

 「だから言ったじゃないですか! そんな姿じゃ入れてくれないって!」

 瞬間、竜の巨体が霞のように消え、空へと二つの影が放り出された。
 「このままでは結界に……!」
 ミカは結界の一部を一瞬だけ解き、魔力の糸で二人を引き寄せた。
 柔らかく地に下ろされた二人を見て、クレアとサンダルフォンも武器を下ろす。

 「あなたは……ジェダさん?」
 エネッタの問いかけに、もうひとりの影──長身の青年が静かに頷いた。学園で同じクラスだったジェダだった。

 ジェダはゆっくりと視線を上げ、ミカに向かって口を開く。
 「電次郎さんを助ける手助けをさせて欲しい」

 「理由を聞こう」
 ミカの声に、ジェダは真剣な表情で語り出す。

 「俺の国、竜国でも、大地から魔力が消えていく現象が多発している」
 「魔力が……消える?」クレアが眉をひそめる。
 「噂は本当だったか……」ミカが低く呟く。
 「しかし、それと電のじの救出がどう関係する?」

 ジェダは一拍置き、続けた。
 「以前、電次郎さんの飛ばした“ドローン”と接触した際、この世界の魔力とは異なる粒子の存在を知りました。それが“電子”という新しい粒子だと知り、魔力の代わりになるかもしれないと考えたのです」

 ミカは目を細める。
 「若いのに、目の付け所が鋭い……じゃが、竜族には固い掟があると聞くが」
 「はい。竜族の掟では他種族との接触は禁止。それを破るくらいなら滅びを選ぶというのが総意です」
 サンダルフォンが短く息を呑む。
 「だけど俺は、その考えを変えたいと思っている」

 ジェダの拳がぎゅっと握られる。
 「魔力の枯渇が進めば、俺達は滅びる。だが電次郎さんの“電子”という力があれば、その未来を変えられるかもしれない」
 「……魔力の枯渇が本当なら、竜族だけでは済まぬな」ミカは険しい表情を見せた。

 「ようするに、おじさまを早く助けようって話ですわよね? ならジェダくんに乗って魔王城へ行きましょう」
 エネッタが割って入る。
 「愚か者、竜のまま飛べば総攻撃じゃ」ミカが一蹴する。

 ジェダは苦い顔をしてうなずいた。
 「本当は魔王領で魔物に化けて観察を続けようとしたが、魔力の枯渇が酷く人の姿になるのも一苦労だった。だから一度学園に戻り、ステラに相談した」

 ステラが補足する。
 「ジェダさんから、魔王領にライオネット先生の気配があると聞きました。すべては先生の計画だったんです。私は先生を止め、電次郎さんを助けるためにエネッタさんを頼ろうと提案しました」

 「なるほどね、正解よステラ」
 エネッタは自慢げに頷き、他のクラスメイトのことも尋ねた。
 「トレス、スイラン、ライミは伸びしろはありますが力不足です。だから声をかけませんでした」
 ジェダは淡々と答え、エネッタは小さく頷いた。

 「エネッタさんには大魔導士ミカが付いていると聞いていた。きっと助けになってくれると信じて来たのです」
 ステラの言葉に、ミカは静かに息を吐いた。

 「買い被りすぎじゃ。わしはここを離れられん……しかし……」
 そこでふと、ミカの視線がジェダに向く。

 「魔力の供給があれば、魔物の姿に変われるのか?」
 「はい」
 「ステラとやらは、魔王領の者と面識があると?」
 「ええ」

 「……動かぬよりはマシか」
 ミカの声には、覚悟にも似た力が宿っていた。
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