しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

文字の大きさ
99 / 130

おっさん考察す

しおりを挟む
 シービーが息を吹き返してから一晩。
 ようやく落ち着きを取り戻した俺たちは、救護室の片隅で向かい合っていた。
 真新しいシーツの上に腰を下ろすシービーは、手を膝にぎゅっと握りしめ、どこか怯えるような顔をしている。

 「なぁ、おっさん……あたい、なんか変なんだけど……」
 ぽつりと、声が落ちた。

 「……変って?」
 「魔法が出ねぇんだ。火も、氷も。回復魔法だって……」
 唇をかみしめ、悔しそうに俯くシービー。
 小さな手を開き、魔力を集めようとする仕草は確かに空振りで、以前のような元気もない。

 「……これじゃあ、魔王様のために働けねぇよ。どうしたらいいんだよ、あたいは居る意味ないんじゃねぇか……」
 その言葉に胸が痛んだ。
 こいつは、ずっと俺のそばで支えてくれていた。口は悪いが、いつも隣に立って、俺の背中を押してくれた。そんなシービーが、自分の存在を否定するような顔をしている。

 「安心しろシービー、俺だって魔法は使えない」
 俺は立ち上がり、彼女の手を包んだ。
 「でも、火も氷も、回復も……全部、家電でいけるから大丈夫だ」
 「……は?」
 ぽかんと口を開けるシービー。

 「火はIHヒーターや電子レンジがある。氷は冷蔵庫、飲み物だってすぐにキンキンにできる。回復魔法は……まぁ、家電じゃまだ追いつけねぇけど、体を助ける道具はいっぱいある。AEDだってそうだろ?」
 俺が笑いながら言うと、シービーの眉がぐいっと寄った。

 「でもよ……おっさんが近くにいないと、あたい、家電は使えねぇんだろ? じゃあ一生、おっさんに付いて回らなきゃなんねぇってのか?」
 吐き捨てるように言ったくせに、その声の奥にはかすかな迷いがあった。
 俺は少し考え込んでから、あっさりと言った。

 「俺は構わないぜ。お前と一緒にいると、楽しいからな」
 「っ……ふざけんなよ」
 シービーが顔を真っ赤にして立ち上がる。

 「つーか、おっさんよぉ、どさくさにまぎれてあたいの胸、見たよな? それに……その、あたいの唇まで……責任取ってくれんだろうな?」
 「せ、責任って……あれは、不可抗力だろ!」
 思わず声が裏返る。
 「お前、死ぬとこだったんだぞ! AEDのパッド貼るときに服を外したのも、人工呼吸で唇触れたのも、全部緊急事態だったんだ!」
 「それはそれ、これはこれだろ」
 シービーは腕を組み、勝ち誇った顔で言い放つ。

 「いやいやいや……! じゃあ俺はどうすりゃいいんだよ!?」
 「責任とって、あたいの面倒を一生見ろって言ってんだよ! そうすりゃ家電だって使いたい放題だろ」
 口調は乱暴だが、声の端が震えている。照れ隠しだってのは分かる。
 俺も顔が熱くなった。

 俺はルクスと結婚しなきゃなんない。
 あいつはドルガスを追放した。幹部を追い込むってことは、本気で魔王領を立て直したいってことだ。力じゃなく、笑顔でここを平和にしたいって思っているんだ。
 だから俺は、どんなことでも協力する。
 ……まてよ、シービーはルクスから生まれたんだよな?
 ということは、ルクスの子供ってこと?
 で、俺がルクスの夫になるんだから、つまりシービーは俺の子供ってことだ。

 「俺がお前のことを、この先一生面倒見るのは当然のことだ。任せろ!」
 「えっ……」
 シービーがビックリした顔で固まった。

 「でもよ、おっさんには魔王様って婚約者がいるじゃねぇか」
 「ああ、ルクスもお前も、なんなら他のメイドも全員まとめてかかってこいってんだ」
 「……最低だな」
 「なんでだよ」
 「うるせぇ、この“すけこまし”」
 「はぁ?」
 シービーの機嫌が悪くなったことに戸惑い気味でいると、部屋をノックし救護室の先生が入ってきた。

 「診察結果が出ました」
 カルテっぽい資料を見ながら、先生は淡々と告げる。

 シービーの体からは、マナが検出されなかった。
 魔法が使えなくなったのは、それが原因だろう。
 この世界のマナの消滅は、イコール”死”だとも言った。
 では、なぜシービーが生きているのか。
 それは、ドルガスが残した研究結果から導き出されたらしい。
 マナに代わる粒子。
 “電子”
 つまり、俺と一緒、元の世界の住人と同じ構造になったってことか?

 なんでだ?
 AEDのせいか?
 それとも人工呼吸?
 一体何がどうなってんだ……。
 待てよ、マナが電子に変わったってことは、電気が使えるってことじゃないか?
 もしかして、俺が出した家電をシービーも単独で使える?
 マジか、なんか急に心強い味方が増えた気がする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...