しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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泣き虫ライミ告白す①

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 午後の授業が始まるも──やっぱり自主学習だった。
 やる気のないミカちゃんの師匠──担任のじいさんは、教室に姿すら見せなかった。
 そういや名前もまだ聞いてないな。後で職員室に押しかけよう。
 先生がこんなんじゃ、生徒たちが可哀想だ。

 しかたなく教科書を開いたが、全然頭に入ってこない。 
 理由は明白だった。
 ──視線。
 しかも、3つ。
 
ひとつは、あの金髪巻き毛、アゼルバイディン家の跡取り候補、名前はトレスだって自己紹介された。入学して初めての友達になるのか……トレスの羨望のまなざしがくすぐったい。

 きっと放課後もVRヘッドセットを貸してくれってせがまれるんだろうな……しかし、俺が触れていないと電力が供給されないから、遊んでいる最中もつきっきりっていうのが辛いな。なんとかならないんだろうか……まぁその電力の解明も兼ねて通っている学校だから、一生懸命勉強しよう。

 ふたつめの視線は、メガネが隠れるくらい前髪の長い女子生徒。こっちを見ながら、カリカリとノートに何かをメモり続けている。ちょっと怖い。

 そして、最後の視線。
 あからさまな猫耳の女子生徒──獣人族ってやつだろうか。  銀色の短髪、ぴんと立った耳。制服は動きやすさを優先しているのだろうか腕や脚が大きく露出していて、ちょっと目のやり場に困る。  その子が、腕を組んでじっとこちらを睨んでいた。
 睨んでる、というより……どこか不安そうな、泣き出しそうな、そんな顔。
 「……おい」

 俺が視線に反応したことに気が付いたのか、獣人の子は小さいが、鋭さを含んだ声を掛けてきた。
 「さっき、おまえ……なんか放ったな」
 「放った? いや、何も──」
 「嘘だ。あれは『覇気』だ。間違いない」
 いや、多分それ静電気。  さっきノートPC召喚しようとして、バチッてなったやつ。
 召喚に失敗するとそうなる。

 どうも、曖昧な記憶や内容がアップデートされる電気製品は召喚できない、または失敗するようだ。
 成功しても、VRヘッドセットのように、俺がプレイしたことのあるゲームや動画しか起動できない。
 だからかもしれないが、スマホも無理だった。
 スマホが召喚できれば、どこかで読んだような無双もできたのかもしれないが──
 
 まぁそれは今後も試行錯誤するということで。
 「勉強の邪魔をしてすまん。静かにしてる」
 自習に集中しよう。

 「オレはライミ。獣人族の誇りにかけて、今ここで貴様に挑む!」
 一人称がオレの獣人っ娘か……。
 立ち上がったライミは、机をガンと蹴り飛ばした。 
 猫耳がぴくぴく震えている。 

 「やば、ライミが動いた……」 
 「また誰かやられるぞ……」
 クラスが少しざわついてきた。
 また? 問題児なのか?

 「ちょ、待て。俺は別に戦う気なんて──」
 「問答無用!!」
 バン、と教室のドアが開いて、担任のじいさんが顔を覗かせた。
 「……やるなら演習場でやれ。教室を壊すなよ」
 ──止める気ゼロかよ、あとで絶対に説教だな。ミカちゃんも泣いてるぞ。
 
 「生徒同士の魔術決闘を講師が認めた場合。拒否した側の生徒は評価が落とされる。校則第七十八条っすよアニキ」
 トレスがひけらかす様に、いらん知識を言い放った。

 「魔術決闘?」
 「互いの能力を高め合う目的ならば、この学校は協力を惜しまないって方針なんす」
 いや、面白い校則なんだけどさぁ、初日に、しかも女の子とは無理でしょ。
 おっさん逮捕案件だよ?

 「大丈夫だぜアニキ、怪我しても直ぐに先生方が最高の治癒魔法を唱えてくれます。なんせ世界最高の魔法使いが集ってますから、ちょっとやそっとじゃ死人は出ません」
 でも……それって半殺しOKってことだよな。

 「行くぞ。さっさと準備しろ」
 ライミが手招きをした。
 「ほんとにやるのか? おっさん右も左も分からない新入生なんだけど」
 「オレには分かる。お前は強い奴だ。倒さねば血が泣く」
 血が泣く? 拗らせてんな。

 「アニキ、応援するぜ。あんなすげぇ魔道具出せるんだから余裕だよな」
 他人事で、楽しそうなトレスに、溜息を付くしかできない。
 お前は早くVRで遊びたいだけだろ?

 「ちなみにライミは、獣人族でも血の気の多い牙獣種の戦士だから、強いっすよ。戦闘民族っす。すぐ泣くけど」
 戦闘民族って、なんとかボールでしか聞いたことねぇ~って泣くって、どういうこと? 鳴くってこと?
 こうして俺は猫耳獣人のライミと、学園演習場で戦う羽目になった。

 演習場へと向かう道すがら、ちらりとライミの横顔を見ると頬を伝う雫がひとつ──
 え? 涙? どういうこと?

 「お前、なんで泣いているんだ?」
 思わず聞いてしまった。
 泣いている女の子に、こういう聞き方するのは良くないって、恋愛本で読んだことがある。
 だから俺はきっとモテないのだろう……。

 「うるさいっ、男なら黙って勝負しろ」
 ライミは、腕でぶっきらぼうに涙を拭った。
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