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おっさん消沈す(ステラ視点)
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「……すまん。俺、もう帰るわ」
電気という現象を再現できなかった電次郎は、肩を落として研究所を後にした。 引き留めようとも思ったけど、先生が首を横に振ったので、そのまま見送った。
「いいんですか? まだあの人には何かありそうな気がしますけど」
「良い勘だな、ステラ」
先生に褒められた。
「電子いう粒子……レモンの酸を媒介として、異なる物質間で化学反応を発生させ、新たなエネルギーを得る……眉唾とはいえ、惹かれる何かを感じる」
先生の気持ちが昂っているのが分かった。だから、私も意見を合わせることにする。
「確かに……実際、あの人が召喚する“家電”という魔導具は、あの人にしか動かせませんでした。魔素とは明らかに違う……何か、私たちの知らない元素があるということでしょうか」
「もし、そのエネルギーが“あの男からしか出ない”のなら──」
先生は、白衣の胸元を指でなぞるようにして、静かに微笑んだ。
「……あの男を独占すれば、あの魔道具の全てが私のものになるということだな」
そう言った先生の表情は、今までのどんな研究熱よりも、妖しく愉悦に満ちていた。
脳裏に浮かんだのは、大きな試験管の中でホルマリン漬けになって眠っている電次郎……そして、色々な家電に囲まれて愉悦に浸るご主人様……その隣には私……ああ、なんて素晴らしい未来だろう。
「先生、電次郎を独占すべく動きましょうか?」
「相変わらず察しが良いなステラ、任せてもいいか?」
「はい、喜んで」
頭を下げた私を、先生は優しく撫でてくれた。 先生との未来のために、私は全力を尽くします。
♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦
寮に戻った私は、さっそく轟電次郎観察日記を広げ、今日の出来事を記した。
「……それ、何書いてるんにゃ?」
「にゃ?」
ベッドの上でストレッチしていたルームメイトが、聞き慣れない語尾で問いかけてきたから、思わずわたしも“にゃ”って聞き返してしまった。
「ライミさん? あなたそんな喋り方でしたっけ?」
「にゃあ、実はこれが本当のわたしにゃ」
「そ、そうなんですか?」
戦闘のことしか頭になくて、会話も全然なかったから、私にとっては都合の良いルームメイトだと思っていたのに……たぶん、あの男との戦いがきっかけね。
「轟電次郎観察日記?」
私は咄嗟にノートを抱きしめ隠したけど、タイトルを見られてしまった。迂闊だったな、電次郎の気を引くための策が仇となったか。
「ふーん……なるほどにゃ~、そっか~ステラも、そういうことだ」
ライミはニヤニヤしながら、なにかを納得したような顔を見せた。
「これは、電次郎の魔道具である家電の観察記録です。純粋な、研究記録なんです」
慌てて適当な言い訳をしてしまった。
「観察日記の後のハートって、そういうことだにゃん?」
「あ、いやいや深い意味はなくてですね」
なんか適当な言い訳が恥ずかしくなって顔が熱くなった。それに気付いたのか、ライミはむしろ目を輝かせて笑った。
「お前も、電次郎のこと好きなんだにゃ?」
「ち、違いますって! これは、あくまで研究のための──」
「嘘はだめだぞ。わたしには分かるにゃ」
マズい、完全に勘違いモードだ。だから脳筋は嫌いなんだ。
「あんなおじさんのことなんて、これっぽっちも気にしていませんから」
「そうか、そうか、わたしも最初はそうだったにゃ。でもいつの間にか頭から離れなくなったにゃ、ステラもまだ自分の気持ちに気付いてないだけにゃ」
「もしかして、その“にゃ”も電次郎の影響?」
「そうだにゃ、電次郎が“そっちの方がライミらしいよ”って言ってくれたにゃ」
まぁ、見た目はどっちかっていうとネコだからね……ってどうでもいいわそんなの。
「とにかく、本当にどうでもいいおじさんなんて興味ありませんから、もうこの話は終わりにしてください」
「鍛錬も恋もライバルが居た方が燃えるにゃ」
ダメだこの人……。
電気という現象を再現できなかった電次郎は、肩を落として研究所を後にした。 引き留めようとも思ったけど、先生が首を横に振ったので、そのまま見送った。
「いいんですか? まだあの人には何かありそうな気がしますけど」
「良い勘だな、ステラ」
先生に褒められた。
「電子いう粒子……レモンの酸を媒介として、異なる物質間で化学反応を発生させ、新たなエネルギーを得る……眉唾とはいえ、惹かれる何かを感じる」
先生の気持ちが昂っているのが分かった。だから、私も意見を合わせることにする。
「確かに……実際、あの人が召喚する“家電”という魔導具は、あの人にしか動かせませんでした。魔素とは明らかに違う……何か、私たちの知らない元素があるということでしょうか」
「もし、そのエネルギーが“あの男からしか出ない”のなら──」
先生は、白衣の胸元を指でなぞるようにして、静かに微笑んだ。
「……あの男を独占すれば、あの魔道具の全てが私のものになるということだな」
そう言った先生の表情は、今までのどんな研究熱よりも、妖しく愉悦に満ちていた。
脳裏に浮かんだのは、大きな試験管の中でホルマリン漬けになって眠っている電次郎……そして、色々な家電に囲まれて愉悦に浸るご主人様……その隣には私……ああ、なんて素晴らしい未来だろう。
「先生、電次郎を独占すべく動きましょうか?」
「相変わらず察しが良いなステラ、任せてもいいか?」
「はい、喜んで」
頭を下げた私を、先生は優しく撫でてくれた。 先生との未来のために、私は全力を尽くします。
♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦
寮に戻った私は、さっそく轟電次郎観察日記を広げ、今日の出来事を記した。
「……それ、何書いてるんにゃ?」
「にゃ?」
ベッドの上でストレッチしていたルームメイトが、聞き慣れない語尾で問いかけてきたから、思わずわたしも“にゃ”って聞き返してしまった。
「ライミさん? あなたそんな喋り方でしたっけ?」
「にゃあ、実はこれが本当のわたしにゃ」
「そ、そうなんですか?」
戦闘のことしか頭になくて、会話も全然なかったから、私にとっては都合の良いルームメイトだと思っていたのに……たぶん、あの男との戦いがきっかけね。
「轟電次郎観察日記?」
私は咄嗟にノートを抱きしめ隠したけど、タイトルを見られてしまった。迂闊だったな、電次郎の気を引くための策が仇となったか。
「ふーん……なるほどにゃ~、そっか~ステラも、そういうことだ」
ライミはニヤニヤしながら、なにかを納得したような顔を見せた。
「これは、電次郎の魔道具である家電の観察記録です。純粋な、研究記録なんです」
慌てて適当な言い訳をしてしまった。
「観察日記の後のハートって、そういうことだにゃん?」
「あ、いやいや深い意味はなくてですね」
なんか適当な言い訳が恥ずかしくなって顔が熱くなった。それに気付いたのか、ライミはむしろ目を輝かせて笑った。
「お前も、電次郎のこと好きなんだにゃ?」
「ち、違いますって! これは、あくまで研究のための──」
「嘘はだめだぞ。わたしには分かるにゃ」
マズい、完全に勘違いモードだ。だから脳筋は嫌いなんだ。
「あんなおじさんのことなんて、これっぽっちも気にしていませんから」
「そうか、そうか、わたしも最初はそうだったにゃ。でもいつの間にか頭から離れなくなったにゃ、ステラもまだ自分の気持ちに気付いてないだけにゃ」
「もしかして、その“にゃ”も電次郎の影響?」
「そうだにゃ、電次郎が“そっちの方がライミらしいよ”って言ってくれたにゃ」
まぁ、見た目はどっちかっていうとネコだからね……ってどうでもいいわそんなの。
「とにかく、本当にどうでもいいおじさんなんて興味ありませんから、もうこの話は終わりにしてください」
「鍛錬も恋もライバルが居た方が燃えるにゃ」
ダメだこの人……。
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