しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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シービー料理す

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 「う……なんだこの匂い……」
 鼻の奥を突き抜ける、焦げ臭い匂いで目が覚めた。
 
 寝起きのぼんやりした頭で「火事か?」と思いながら上体を起こす。
 窓の外はもう明るい。どうやら血を抜かれすぎて、朝まで眠ってしまったようだ。

 「……おっさん、起きたか?」
 キッチンの方から、シービーの声がした。
 目をやると、エプロン姿で手をせわしなく動かしている。料理をしているのか?

 「おはようシービー、お前のマッサージが最高過ぎて寝ちまったみたいだ」
 「礼はいらねぇよ、さっさと朝飯食って研究所行くぞ、今日から魔王様のために働くんだ」
 やっぱり飯を作っていたのか?
 シービーの背後で、鍋から黒煙がゆらゆらと立ち上っているのを見て、もの凄く嫌な予感がした。

 テーブルに並べられたのは──
 見事に炭化したパン、やたら黄色が濃い卵焼き(固形石けんみたいな形)、そして紫色の液体が入ったスープ……。

 「……なんだ、この色のスープは」
 「野菜いっぱい入れたらこうなった。見た目より味だから! 食え!」
 押し切られる形でスプーンを手に取る。恐る恐る口に運んだが……あれ? 思ったより……いや、普通に不味い。けど、文句は言えねぇ。

 「……どうだ?」
 「う、うん、美味しいよ。ありがとな」
 「へへへ」
 シービーが得意げに笑う。その顔を見てると、なんかもう、まずさよりも頑張って作ってくれた気持ちの方が勝ってきた。

 「めちゃくちゃ美味しそうに食べるじゃねぇか、そういや味見してなかったな」
 シービーはそう言って、皿の料理に手を伸ばした。

 「……ッ!? マズっ……!!」
 目を見開き、涙を浮かべながら咳き込むシービー。

 「お、おい大丈夫か!」
 背中を軽く叩いてやると、シービーは鼻をすすりながら俺を睨んできた。

 「おっさん……よくこれ食ったな……バカじゃねえの……」
 「独特な味だが嫌いじゃない」
 「……っ……ばーか……」
 小声でそう呟き、そっぽを向く。その耳の先がほんのり赤いのは、気のせいじゃないだろう。

 「お前、料理初めてか?」
 「メイドも初めてだからな、今度は上手くやる。これは全部捨てる」
 シービーがテーブルの皿を手に取り、捨てようとしたから。その皿を奪い取り、口に全部放り込んだ。

 「頑張って作ったんだろ。もったいないじゃないか」
 「腹壊しても知らねぇからな」
 「それよりよ、今から料理教えてやるよ」
 俺は立ち上がり、炊飯器と電子レンジを……と思ったが、手が止まる。
 マッサージチェアの時と同じだ。昨日感じたあの温もりが、ふと脳裏をよぎった。

 「……今日は道具ナシでやろう」
 「は? 何で?」
 「手で作るほうが、うまくなるんだよ。俺が教える。包丁の持ち方からな」
 「……ふん。まあ、教えてくれるなら付き合ってやるよ」

 そう言いつつ、シービーは少しだけ笑った。
 基本的な火加減や味付けを簡単に教えただけだが、要領がいいのか味も見た目も抜群に良くなった。

 「うん、美味い。こんなに早く上達するとは、お前、天才か?」
 ゼロからスタートみたいなもんだからな。
 「へへへ、当たり前だろ」
 本気で喜んでいる姿は、見ていて気持ちがいい。近所のガキんちょ達で知っているぞ、こういう子は伸びるのも早いんだ。

 「つーか、料理もメイドも初めてってどういうこったよ」
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