ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

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「う、うそでしょ!?」

 透明だった水晶が赤、黄色、緑、青の4色に染まった。ステラは何もわからず、水晶を見ながら「きれい」と見とれていた。4色の色が混ざり合うのは確かにきれいだった。これは何の意味があるのだろう?ターニャは目を見開いて口元が小刻みに震えていた。その光を見ていた他の受付嬢や冒険者たちも急に静かになった。

四大元素エレメンタルマスター…」

「・・・?」

 ターニャが言った言葉の意味が分からず、ステラは首をかしげていた。エレメンタルマスター…。前世でも聞いたこともないジョブだ。魔術師とは違うのか?

「ちょ、ちょっと。あなた。…魔法はなにが使えるの?」

「魔法ですか?何でもいいなら、風魔法と火魔法、水も、土も使えますけど」

「ほ、本気で言ってるの!?」

 ターニャは勢いよく立ち上がるとはずみで水晶が床に落ちてコロコロと転がっていく。
 ステラは驚いて一瞬ビクッと体を揺らしていた。

「ターニャさん、落ち着いてください。ステラは嘘をいうような子ではないです」

「ステラ?…あなたの名前って…もしかして!!」

 ターニャはステラの書いた申込書を見て、小刻みに震えていた。

「ステラ…ブランシュです…」

「きたーーー!!!!あなた、魔導研究の名門、ブランシュ家のステラちゃん!?」

「??…は、はい。多分…」

「よっしゃぁぁぁ!!エレメンタルマスターなんてSランクジョブじゃん!!マジか!今日の賭場は勝てる気しかしねぇ!!さいっこーーについてる!!まさかこんな女の子がブランシュ家の令嬢だったなんて!!」

(と、賭場って…賭けに行くんだ)

 ギャンブル中毒、というさっきの男の言葉を思い出して、確かに重症かもしれない。と思ったけど、今喜びにあふれてテーブルの周りを飛び回っているターニャになにか言える雰囲気ではなかったから黙っていた。その様子に他の受付嬢も自分の仕事に手が付かなくなり、ただ開いた口がふさがらず俺たちを見ていた。周りの冒険者たちも水晶の色が4色に光ったのを見てさっきまでのざわめきが嘘のように静かになった。喜び回るターニャにヤジを飛ばすものも、俺たちになにかちょっかいを出してくる冒険者もいなかった。

「あんなガキがエレメンタルマスターだって!?何かの間違いだろ?」

「水晶が光ってたじゃない。しかもあのブランシュ家の子供って言うからあながち嘘じゃないんじゃない?」

「貴族の子供って言うのは才能もチートなのかよ!気に入らねぇなぁ」

「それじゃあ、もう1人のガキもSランクジョブだって言うのかよ!」

 う”…。最後のヤツ。誰だ言ったの。こんなにお祭り騒ぎな所言うのも嫌だけど、僕は何も取り柄がない。ただ毎日のようにミアに稽古はつけてもらっているけど、それはちょっと他の人よりも強いミアに稽古してもらっているだけでステラのように特別な何かを持っているわけではない。
 僕らに不満のある冒険者はゾロゾロとギルドから出ていくと、数人の冒険者のみが静かに僕らのことを見ていた。

「え、エレメンタルマスターってそんなにすごいんですか?」

「すごいなんてもんじゃないわ!魔術師って言うのは才能で、生まれた時に素質があるかどうかで決まるの!ある程度熟練度が高くなれば一部の人は2種類の魔法を扱うことはできるけど、基本となる火、水、風、土魔法のどれか1つしか使えないのが普通なの!2種類の属性魔法が使える段階で天才と言われるわ。そのさらに上が4元素を使う事ができるエレメンタルマスターよ!!大国に1人いるかいないか。ってレベルなんだから!!」

 ターニャがものすごい勢いでしゃべり、ただでさえ大きな声なのに、興奮気味にさらに大きな声で言った。
 そんなすごいジョブなのか…。どうりで前世の世界では聞いたこともないわけだ。そう言えばミアが昨日言ってたな。ステラ1人で一個小隊を倒せるって…。あれ、冗談じゃなくて本当だったんだ。

「いや、すごい。…これはすごかった。すいません。興奮しすぎてしまいました。次は、え~と、…アレン君。アレン…ロザーク…さま!!?」

 青ざめていくターニャは悲鳴にも似た声を上げて俺を見た。冒険者ギルドの中は一瞬ざわめいたものの、すぐに静かになった。受付嬢たちも完全に動きを止めていた。

「あ、あの。ターニャ?」

「おおおおお許しください!領主様のご子息とは知らなかったんです!何卒!何とぞ寛大なお心でご容赦ください!アレン様に対して申し訳ございません!申し訳ございません!」

 テーブルに頭をこすりつけて謝る彼女に驚いて、俺とステラは言葉を失った。

「マジかよ…ブランシュ家と領主の息子だぜ…あんなのに絡んだらこの町にいらんなくなっちまう」

「あの受付終わったな」

 周囲の言葉どおり、ターニャの怖がり方は尋常じゃなかった。ステラが心配そうに俺を見ているが、俺も困っているんだ。何か気の利いた言葉が思いつかない。

「ターニャさん、落ち着いて。僕は別に偉ぶりたいわけじゃないんです。まだ何も知らない子供だし、ここにはステラが来たいと言うから今日来たんです。領主の息子だから偉いとは思っていません。誰かを守る力がまだ僕にはないし、これから本当の意味で尊敬される人になりたいんです。だから、今は普通の冒険者として対等に接してもらえないでしょうか?」

「対等にって…そ、そんなことして私、処刑されたり追放されたり、暗殺されたりしませんか?」

 涙を浮かべて、赤くなったおでこと顔をこっちに見せてくる。まだ疑っている素ぶりはあるが、それでもさっきの発狂寸前という事はなさそうだ。

「そんなことしませんよ。父上にも、従者にもそんな命令しません。もちろん僕自身もしません。そんなことを言うとステラがまた怖がるし、楽しいお出かけが台無しになっちゃうので本当に気にしないでください。ねぇ?ステラもそう思うでしょ?」

「うん!アレン君は優しいし、私の一番のお友達だから大丈夫だよ!今日は私たちの相手をしてくれて本当に楽しかったし、ターニャさんとお話しできてよかったよ!」

「ステラさまぁ」

「次は僕の番ですよね?ステラの後にやるのが本当に嫌なんですけど…。自分の職業適性には興味もあるので、お願いできませんか?」

 ボロボロと涙を流したターニャは袖で涙を拭くと、床に落ちた水晶を探し出した。

「そ、そうですね!お二人がそう言ってくださるのであれば、私もステラちゃんとアレン君の冒険者活動を全力でサポートさせていただきます!…っと、それじゃあ、次はアレン君ですね!ステラちゃんと同じようにお願いできますか?」

 テーブルの脚部分に転がっていた水晶を拾い上げると、ターニャは笑顔で俺の前に水晶を差し出してきた。俺はゆっくりと手を伸ばし、水晶の上に手をかざしたときだった。一つの疑問が浮かび上がった。

「これ、必ず光るんですか?」

「え?ええ。…多分。私が今まで使ってきた限りでは、必ず光っていましたけど…何でですか?」

 俺は前職で特技なんかなかったし、日雇いやバイトみたいなその日暮らしが多かったから、職業適性で無職とか、不明とかになったらどうなるんだろう。

「もし、…もし光らなかったらどうなるんですか?」

「そんなことないですって!領主様のご子息なんだから、自信持ってくださいよ!」

『信じてます!』みたいな笑顔でこっちを見られても困るんだが…。ステラも目を丸くして水晶を見ているが、その気になってます!みたいな空気はやめてほしい。俺は答えを知っているんだ。何も特技がなかった未来を…。
 はあ。
 俺はため息をつくと同時に、諦めて水晶の上に手を乗せた。
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