43 / 64
第四十三話 術の完成
しおりを挟む私達はヘリで京都府に向かう。
途中でヘリを乗り換えながら。
京都府に到着すると山の方に向かう。
山の方に安倍家の本家があるのか?
そんなことを思っていると、ヘリが山間の平地に着陸する。
こんなところに着陸だと?
疑問に思っているとヘリのパイロットが説明してくれる。
この先に着陸する場所は本家の庭だけらしいが、本家は占拠されているため危険が高い為、ここに着陸したみたいだ。
それならここに着陸するか。
私達はヘリから降り、安倍家の本家の方に向かう。
森の中を10分ぐらい歩いていると舗装された石階段に出る。
その石階段を上がっていると建物が見えてくる。
立派な門に壁。
そして、歴史を感じられる日本家屋。
どうやら、ここが安倍家の本家みたいだ。
だが、正面には見たことがない生物がいたのだ。
「詩花。あれが妖怪か?」
「はい、樹様」
そうか。
あれが妖怪か。
よく見てみれば、有名な妖怪もいるようだな。
有名な妖怪以外の妖怪はわからないが、正面から無理のようだな。
なら、違う場所からだ。
私は詩花をつれて、妖怪達にバレないように裏に回る。
裏に到着したら、私は詩花の方を向く。
「すまない、詩花」
不思議そうな表情を浮かべていた詩花を片腕抱っこする。
そして、詩花を片手抱っこしながら地面を蹴って、2メートルを超えている壁を乗り越えたのだ。
何も無い真っ黒な空間で鍛え続けたから、これぐらいなら何も問題無いな。
壁を乗り越えた時、詩花は唖然としている。
壁を乗り越えたので、安倍家の本家に到着することが出来たのだ。
周りを見渡すと土蔵を見つける。
その土蔵から気配を感じる。
中か、いや、地下からだな。
私は唖然としている詩花を片手抱っこしながら、土蔵に向かう。
土蔵の中には地下に続く階段があったので、警戒しながら降り始める。
結構降りると広い空間に出る。
その広い空間の壁には沢山の人が何かの文字が書かれている紙で張り付けにされていたのだ。
あれは御札か?
それにあの服装は狩衣か?
確か、平安時代以降の公家の普段着だったはず。
そんなことを考えていると、詩花が呟いたのだ。
「お父様。皆様」
お父様か。
なら、詩花の父親が捕まっているのか。
だとしたら、助けるのが優先だ。
私は詩花を片手抱っこから降ろし、正拳突きの構えをとる。
極限の集中をし、正拳突きを放つ。
すると、陰陽師達を壁に張り付けにしていた御札だけが剥がれる。
「お父様」
そう言いながら、詩花は40歳ぐらいの男の陰陽師の胸に飛び込んだ。
その男も詩花を抱きしめている。
あの者が詩花の父親か。
詩花が再会を終えた後に情報共有しようとすると大きな振動を感じたのだ。
私達は状況を確認するために急いでこの地下室を後にする。
地下室を出ると先程まで雲ひとつも無かったのに空は真っ黒な雲に覆われ、紫色の光が真っ黒な雲の下に見えたのだ。
紫色の光を見た1人の陰陽師が呟く。
「術が完成してしまった」
術が完成だと。
まさか、間に合わなかったのか?
そんなことを考えていると正面の方から轟音が聞こえてくる。
更に状況を確認するために正面に向かう。
正面に到着した私達は驚いて固まってしまう。
それも無理はない。
安倍家の本家の正面には醜い肉の塊がいたのだから。
そして、その周りには唖然としている陰陽師達がいる。
これが儀式の結果だと?
いや、違うな。
あの表情から察するに予想してない結果なのだろう。
その醜い肉の塊は支離滅裂なことを発しながら体を蠢かさせている。
そして、何処かに向かって、針状に変化させた自身の肉体を伸ばしたのだ。
一瞬の出来事筈なのに、スローモーションに見えたのだ。
針状に変化させた肉が詩花に向かっているのが。
私は阻止するために正拳突きを構えようとしたが、1人の陰陽師が自らの肉体で受け止めたのだ。
醜い肉の塊からの攻撃を。
私は正拳突きの構えを取りながら、醜い肉の塊の方を向く。
そして、少し上に向かって放つ。
すると、醜い肉の塊の殆どが掻き消えたが、私の攻撃の余波で空を覆っていた真っ黒な雲と紫色の光は掻き消えたのだ。
空には晴れ晴れとした大空が広がっている。
醜い肉の塊の残った部分は蠢いていたが、再生は不可能だ。
千年間修行し続けた正拳突きだからな。
どんどんと小さくなり、やがて醜い肉の塊は何も残さずに消えていった。
一部の陰陽師、いや、愚か者達は真っ青を通り越し、真っ白になった顔で、尻もちをついている。
そして、その体は恐怖で震えていたのだ。
殺気を込めた視線を愚か者達の方に向けると、泡を吹きながら、地面に倒れる。
これで無力化は終わったな。
そんなことを思っていると、空から一瞬だけ強い光が差したのだ。
その強い光は何処か優しさを感じる。
まるで、愛しい者を迎えにきたような。
まさかな。
いや、あり得るか。
私は詩花を庇った陰陽師の方を向くと安堵の表情を浮かべながら、目を閉じていたのだ。
それは安らかな眠りだった。
20
あなたにおすすめの小説
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる