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第五十ニ話 政府の高官
しおりを挟む帰ろうと思い詩花と一緒に地下駐車場に向かおうとしているといきなりドアが開く。
開いたドアのところにはメガネを掛け、スーツに身を包んだ40歳くらいの男が立っていたのだ。
その男の後ろには慌てた様子の陰陽師達がいる。
そんな陰陽師達に構うことなく、その男は私達の方までやってくる。
念の為、私は詩花を庇うように前に立つ。
私との距離が1メートルぐらいまで詰めるとその男は立ち止まって私の方を見てくる。
「自己紹介の必要は無い。私は貴方のことを知っている。そして、私の自己紹介をする必要も無いが、役職だけ言っておこう。私は日本政府の高官だ」
「そうですか。政府の高官の貴女が私になんのようですか?」
「1つだけ聞きたいことがあっただけだ。私の友、いや、国会議事堂内の者達を逃がすために命を賭けて戦っていた衛視に何故敬意を示したんだ?」
男は私の目を見てくる。
「簡単な理由です。あの衛視、いえ、あの衛視達は命懸けで職務を忠実に果たした」
私は男の目を見る。
「それを1人の日本人として敬意を示すのは当たり前のことです。それはおかしいことですか?」
「いや、おかしいことではない」
男は安堵の表情を浮かべた後、出口の方に向かって歩き始める。
この部屋を出る前に立ち止まったが私達の方を向くことは無かった。
「私の友が貴方ような者に敬意を払われて本当に良かった」
そう呟いた後、男は部屋の外に出てしまう。
そうか。
あの衛視の友だったとわ。
生前の友に感謝されるのは悪く無いな。
帰ろうとしたが、隣りにいた詩花が私の服の袖を掴んできたのだ。
「こ、これはわたくしの我儘で御座います。ご、ご都合がようでしたら断って貰っても構いません。あ、あまり会えないので、す少しでも話しませんか?」
こんな誘いを断ることは出来ないな。
「大丈夫だよ、詩花」
私の返事を聞いた詩花はとても嬉しそうな表情を浮かべている。
「ありがとうございます、樹様」
その後、私は詩花と一緒に京都支部の院の中で話しながら過ごす。
結構の時間が経つと詩花が眠くなってしまいお開きになる。
宿に帰ってくる頃には既に日が完全に登っていたのだ。
もう6時だからな。
部屋に帰ったら、寝れないな。
まぁ、今日は最終日だから少し観光したら新幹線で帰るだけだ。
その後、観光を終えてから駅に向かう。
新幹線に乗り込んで、席に座ったら急に眠気が来てしまう。
「どうしたの?なんか眠そうだけど」
周りに人がいるので、スマホで昨日のことを伝える。
「そうだったんだ。眠いなら、寝ても大丈夫だよ。東京駅に到着する前に僕が起こすから」
「じゃあ、少しだけ眠らせて貰うよ」
私は窓に寄り掛かりながら眠ることにする。
徹夜していたので、直ぐに眠ってしまう。
目が覚めると窓に寄り掛かっていたはずなのに、何故か私は席で寝転がっていたのだ。
「あ、おはよう、樹」
うん?
なんで、ラナの顔を下から寝ているんだ。
しかも後頭部に柔らかい感触を感じるし、いい匂いもする。
ま、まさか、私はラナに膝枕されているのか?
私がラナの膝枕から離れると視線を感じる。
クラスの男子達からは嫉妬の視線を、他の乗客からは生暖かい視線を。
新幹線が東京駅に到着するまで、その視線に私は晒されることになっている。
私は出来るだけ気にしないようにしながら、到着までラナと話して過ごす。
東京駅に到着したら、解散となったので、ラナと一緒に家に帰る。
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