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第三十七話 もう1度
しおりを挟む夏休みも中盤に差し掛かり、ラナと一緒に家でゆっくりしている。
私とラナは個別に遊びに行くこともある。
私は学校の男友達とラナはクラスの友達と楓とリーヴだ。
ラナはリーヴとの連絡を交換して、仲良くなったみたいだ。
ラナとリビングで話していると母さんがリビングにやって来る。
「樹、ラナちゃん。少し時間いいかしら?」
その時の母さんは真剣な表情を浮かべていたのだ。
私とラナが頷いて答えると母さんは座るように促して来たので、リビングの席に座る。
私達が座ると母さんが話し始める。
「樹、ラナちゃん。実は楓ちゃんとの関係を戻そうと思うの」
「えっと、それは再婚するということ?」
「それはしないわ。あの人は私を、私達を裏切った。例え、操られていたとしても変わらない事実だわ。でも、楓ちゃんはまだ若い。だから、チャンスがあったとしてもいいと思うの」
母さんは1度下を向いた後、私達の目を見てくる。
「このことについて、樹とラナちゃんはどう思う?」
「私はいいと思う。私も楓にだけはチャンスをと思い、関わるようにしていたから」
「僕も賛成だよ。楓とは仲がいいから」
母さんは驚いた表情を浮べた後、優しい表情を浮かべる。
「ありがとう、樹、ラナちゃん」
母さんはスマホを取り出し、何処かにメッセージを打ちはじめる。
メッセージを送って直ぐに来客を知らせるチャイムがなったのだ。
母さんは何も疑問を持たずに玄関に向かう。
母さんが玄関から帰ってくると隣には私服の楓がいたのだ。
楓は緊張したような表情を浮かべている。
そんな表情を浮かべていた楓は胸の辺りで両手を強く握っている。
「い、樹さん、ううん、お、お兄ちゃん」
「どうしたんだ?楓」
それを聞いた楓は涙を流しながら、走り始める。
そのまま私の胸に飛び込んできたのだ。
私は黙って楓のことを抱きしめる。
楓が泣き止むまで。
10分ぐらいすると楓は泣き止み、私から離れる。
離れた楓にラナが近付き、後ろに両手を組んでいる。
「良かったね。楓」
「ラナさん。あ、ラナさんはお兄ちゃんの婚約者だから。ラ、ラナお姉ちゃん」
楓からお姉ちゃん呼ばれされたラナは嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
「お姉ちゃんか。僕、1人だったから嬉しいな」
「えっと、1人っ子ということですか?」
「あ、楓には言ってなかったね。僕は孤児なんだ。だから、家族と呼べる人はイギリスには居ないんだ」
それを聞いた楓は気まずそうな表情を浮かべてしまう。
「そ、そうなんだ」
「そんな顔しないで、楓。僕はこの日本で家族が出来たから。樹とお義母さんが。勿論、楓もだよ」
先程の気まずそうな表情が嘘のような嬉しそうな笑顔を浮かべ、楓はラナの胸に飛び込む。
「ラナお姉ちゃん」
と言いながら。
ラナは驚きながらも優しそうな表情を浮かべ、楓を抱きしめる。
これからラナと楓は本物の姉妹のような関係になっていくことだろう。
大切な婚約者のラナと大切だった、いや、大切な者に戻った妹の楓。
そして、私をこの世に産んでくれた母さん。
もう1度戻れた。
いや、それ以上だな。
大切な婚約者がいてくれるからな。
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