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第二十六話 セイズ
しおりを挟む訳の分からない呪術師を倒した後、身柄を警察に任せることにしたのだ。
気絶させた状況で、大通り近くの路地に放置する。
気絶した後で確認した時に普通に銃刀法違反になるぐらいの刃物を見つける。
銃刀法違反で警察に連行されるだろう。
後はリーヴが住んでいる場所は私の家の近くのホテルにして貰う。
あそこでは危険があるからな。
連絡先も交換し、もし危険なことがあったら連絡して貰うようにしている。
その日は何事もないように家に帰る。
それから1週間は何事も無かったが、家でゆっくりしているとスマホの通知がなったのだ。
メッセージを見てみるとリーヴから助けてという言葉と一緒に地図が送られてくる。
私は直ぐに家から飛び出し、地図の場所に向う。
地図通りに進まず、裏路地を通って近道していく。
何故、リーヴはあそこに戻っているんだ?
送られてきた地図はリーヴが前まで住んでいた廃工場を示している。
廃工場に到着する。
廃工場にはリーヴ以外に黒いローブに身を包んだ10人以上の人がいたのだ。
そして、リーヴはその者達に囲まれている。
私は近くの壁を蹴り、その者達の上を飛び越え、リーヴを庇うように前に立つ。
「大丈夫か、リーヴ?」
「は、はい。今のところは大丈夫です」
「良かった。それで、貴方達はあの訳の分からない呪術師の仲間か?」
「訳の分からない呪術師だと?俺達は誇り高きセイズだ」
「ま、まだ存在していたんだ」
「リーヴ、セイズを知っているのか?」
「は、はい。えっと、確かノルウェーに伝わる魔術師です」
魔術師か。
「そうか。で、そのセイズがリーヴに何のようだ?」
「その女は大切な生贄だ。だから、もう1度クラーケンの呪いで呪うのだ。それで、お前は邪魔なのだ」
そう言いながら、セイズ達は懐に手を入れる。
「だから、死んでくれ」
なんと、セイズ達は懐からハンドガンを取り出したのだ。
「おいおい、魔術師なのに現代兵器を使うのかよ?」
「お前にはこれで充分だ」
セイズ達は私にハンドガンの銃口を向けてくる。
そして、何も躊躇せずに引き金を引く。
リーヴの悲鳴が聞こえたが、何も問題無い。
弾切れなのか、驚いて引き金が引けないのかは分からないが、この場は静寂に包まれる。
いや、弾切れだな。
ハンドガンがホールドオープンしているからな。
ホールドオープンしているハンドガンの銃口からは白い煙が出て、硝煙の匂いが漂ってくる。
静寂を破ったのは金属製の何かが地面に落ちる音だった。
「どうした?そんなに驚いて」
「お、お前は何だ?なんで、弾を持っている?」
「ハンドガンの速度は毎秒300mぐらいだ。それぐらい掴めるだろ?」
そう、私は向かってくるハンドガンの弾を掴んだのだ。
毎秒300mぐらいなら、簡単に掴める。
やっぱり、私は人間離れしているな。
まぁ、千年も修行したからな。
「な、舐めるな。このハンドガンは劣等な存在に魔術を使う必要を無くす為の物だ。いいだろう。お前には魔術を使ってやる」
セイズ達は右手でハンドガンを投げ捨てる。
すると、赤いなにかが人差し指の先に溜まっていたのだ。
それは徐々に大きくなり、黒を帯びていく。
ある程度大きくなるとセイズ達は確かに呟く。
ガンドと。
その呟きと共に黒が混ざった赤い何かが私に向かって飛んでくる。
これは掴むのは無理だな。
なら、私が何も無い真っ白な空間で千年間修行し続け極めた力で対抗しよう。
見せてやる。
貴方達が自信を持っている魔術を超える力を。
私は正拳突きの構えをとり、極限に集中した正拳突きを放つ。
すると、私に向かっていた魔術は掻き消え、またこの場が静寂に包まれた。
セイズ達は信じられないような表情を浮かべていたのだ。
それはリーヴも同じだ。
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