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第五十五話 かつての強敵
しおりを挟む次の正拳突きを放とうとするといきなり後ろの方で爆音が鳴り響いたのだ。
爆音が鳴り響いた方を向くと、ある場所の地面にクレーターが出来ていた。
そして、そのクレーターの真ん中には妖怪が、いや、1人の鬼が立っていたのだ。
ああ、あの者は。
私が見違えるはずがない。
死んだはずの戦友の鬼をな。
戦友はタックルの体勢を取り、私の前までタックルしてきたのだ。
戦友がタックルしながら私達、いや、私の方にやって来ている。
その間にいる妖怪達は戦友によって打ち上げられ、霧となって消えいく。
私は思わず笑ってしまった。
戦友ともう一度戦えると思うと。
私は陰陽師達が展開された障壁から飛び出し、戦友の前に立ち塞がった。
私は無の構えをとり、回し蹴りで食らわせたが戦友はタックルをやめ、両腕で私の回し蹴りを受け止めたのだ。
私と戦友は同時に構えを解き、向かい合った。
「ハハ、久し振りだな。俺の戦友よ」
「ああ、久し振りだな。大体4ヶ月振りぐらいかな?」
「それぐらいしか経ってないのか。まぁ、俺には一瞬に感じたが」
「戦友よ。気になったから聞くが、あの時死んだじゃないのか?」
「確かに俺は戦友と戦って死んだ。だが、気付いたらここにいたんだ。暴れられるからどうでもいいと思っていたが、俺の戦友がいるなら別だ」
やっぱり私の戦友は1度死んでも変わらないな。
戦闘狂だというのは。
「まぁ、お喋りもこの辺にしてまた戦おう」
そう言いながら、戦友は両手を強く握ったのだ。
本当に変わらなくて安心するよ。
私は陰陽師達の方を向いた。
「すまないが、詩花。戦友と戦う為に他の妖怪を任せてもいいか?」
詩花は御札を懐から取り出しながら、強く頷いてくれた。
「感謝する。詩花」
私は無の構えを取りながら、戦友の方を見た。
「では、また戦おうか。私の戦友よ」
戦友はニヤリと笑ったのだ。
「それでこそだ。俺の戦友よ」
同時に構えを取り、同時に拳がぶつかり合う。
私と戦友の拳がぶつかり合うと周りに衝撃波を生み出し、私達のことを襲おうとしていた妖怪達は吹き飛ばされた。
私達はそんなことを気にせずに戦い続ける。
戦っている間、戦友は、いや、私達は笑い続けている。
拳が蹴りが放ち放たれる。
それを守られ逸らす。
だから、どちらも傷付くことなく、戦い続けている。
私達は周りのことを忘れて、いや、詩花だけは意識しているが、それ以外は全て戦友に集中させている。
楽しいが、このままでは埒が明かない。
だから。
私は戦友から距離をとり、無の構えから正拳突きの構えを取った。
「戦友よ。このままでは埒が明かない。だから、また全力でぶつかり合おう」
私の発言を聞いた戦友は待ってましたとばかりの表情を浮かべていた。
「お望むところだ。俺の戦友よ」
そう言い、戦友は拳に炎を纏わせていた。
その炎が普通の炎をではないことは理解できる。
まるで鬼火のようだった。
本当にファンタジーだな。
戦友は一瞬で私の懐に潜り込み、鬼火を纏わせた拳を下から上に上げてきたのだ。
だが、私は既に正拳突きを放っていたのだ。
放った正拳突きは鬼火を消し去り、戦友の下半身を消した。
下半身を失った戦友はそのまま地面に倒れた。
その倒れる音がよく響いた。
どうやら、私達が戦っている間に陰陽師達が全ての妖怪達を倒したようだ。
そんなことを思っていると戦友の残った体が徐々に霧に変わり始めていたのだ。
もう時間は残ってない。
「今度こそ本当の別れだ。お前みたいな強者と2度戦えて悔いなど一切残ら無かった」
「それは私もだ。これからも出会うことがない強者と戦えることはないだろう。だから、悔いが残らないように戦えたことを感謝する」
戦友は本当に嬉しそうにニヤリと笑ったのだ。
「さらばだ。俺の戦友、樹よ」
戦友は本当に満足したような表情を浮かべながら、霧のように消え去ったのだ。
そして、その霧は上に登っていく。
登っていく霧を見ていると、自然と空を向いていた。
「ああ、さらばだ。私の戦友よ。どうか安らかに眠ってくれ、戦闘狂の鬼よ」
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