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第九話 妥協案
しおりを挟む「ハントさん。少しだけ話しませんか?」
「大丈夫ですけど、何処で話しますか?」
「食堂で話しましょう」
ハントさんは頷いて答えてくれる。
それから、私達は食堂に移動する。
食堂には少ないが同じ学校の者もいたのだ。
なので、視線を集めている。
私は慣れたことだが、先程まで気にしていたハントさんは目の前のメニューに夢中だ。
真剣にメニューを選んでいる。
暫く悩んだ後、注文したのだ。
シフォンケーキと紅茶を。
その後に私は紅茶を注文する。
会計する際に少しだけ揉めてしまった。
支払いで。
流石に譲れないので支払いは私がした。
ハントさんは申し訳なさそうしていたが、納得して貰うしかない。
私達は窓際に席に座る。
雑談しながら、お茶を楽しむ。
親交を深めるように。
お茶を飲み終えるとハントさんはある質問をする。
「え、えっと、アリエントさん。どうして、こんなに視線を集めているのですか?」
「それは私が異常だからです」
「異常?」
ハントさんは訳も分からないように首を傾げていた。
「先ほどのことで分かっていると思いますが、私の戦法は普通ではありません」
ハントさんは頷いて答える。
そう、普通の竜騎兵はある程度の上空から攻撃を行う。
なので、威力が低い。
一撃で倒せるとしてもCクラスの魔物ぐらいだ。
Bクラスの魔物は何発も攻撃しなければいけない。
だからこそ、私は目の前まで近付く。
それならば、距離減衰が無くなるからだ。
「でも、それだけではないですよね?」
「後は嫉妬ですね。本来なら首席である筈の王子様よりも上だったですから」
ハントさんは苦笑いを浮かべている。
嫉妬は私のせいではないからな。
「それで報酬の話なのですが、これからは半々しましょう」
「そ、それは駄目です。私はただ背中を守っているだけですから」
「それが安心出来るんです。だから、受け取って欲しいのです」
ハントさんは首を横に振る。
「それでも私は受け取れないです。だって、それはアリエントさんの報酬ですから」
提案は通らないか。
なら、妥協案だ。
「これならどうですか?」
私は妥協案を話す。
報奨の分割を3:4:3にする。
3割がフラムメとハントさん。
4割は私だ。
そして、後ろで倒した魔物の報奨は全てハントさんのもの。
私は納得がいってない。
こんな低額で命を預けて貰うことには。
「駄目です。私の分け前を2割にして下さい」
「それは駄目です。妥協して3割にしたのですから」
言い合いに発展してしまう。
どちらも譲らないからだ。
ヒットアップすることはないが、終わりはない。
言い合いをしていると声をかけられた。
食堂の職員に。
仲介役として、話を聞いて貰った。
「どちらも譲り合いか。なら、首席の方が正しいかもな」
職員は話を続ける。
「いくら学生とはいえ、命懸けのことだ。その報奨として考えたのだろ?」
私は頷いて答える。
返答を確認した職員はハントさんの方を向く。
「だから、嬢ちゃんは何も言わず受け取れ。これは正当な報奨なのだから」
ハントはさんは頷いて答える。
「解決したようだし、そろそろ帰れ。もう遅いからな」
私達はお礼してから、食堂を後にしたのだ。
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