1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜

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最終話 憧れ

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 魔物の大量侵攻から十年の月日が経過した。

 竜騎兵本部の中を1人の男が歩いている。

 何かを探しながら、キョロキョロとしながら。

 どう見ても不審者だが、周りは一切それを気にしない。

 何故なら、いつものことだからだ。

 男は急に立ち止まり、ある者を凝視している。

 視線の先には補給部隊の者がいたのだ。

 男は補給部隊の者に近付き、肩に手を置いたのだ。

 すると、補給部隊の者は後ろを振り向く。

 「後ろを任せる」

 補給部隊の者は男に無理矢理連れて行かれる。

 勿論、周りに助けを求めていたが、誰もが安全を祈るだけだった。

 その10分後、補給部隊の者は竜に跨っていた。

 空を飛び、迫る生物に魔法を放つ。

 そんなことを初めてやらされたのにも関わらず、一日やり遂げたのだ。

 補給部隊の者は疲労困憊になりながら、帰路につく。 

 それを確認した男も帰路につく。

 家族がいる屋敷に。

 ちなみに、男のこの行動は今に始まったことではない。

 竜騎兵になってからずっと続いている。

 1番最初の者は男の妻となり、2番目の者は今では魔法研究の重役だ。

 他の者達も様々な分野で活躍している。

 厄介な行動という者もいるが、試練だという言葉もある。
  
 この試練を乗り越えれば、成功が待っていると。

 こんな行動をしている男にはある憧れがあった。

 前世からの。

 その憧れの為に神らしき存在に即答で答えたのだ。

 才能が欲しいと。

 男の憧れはある人物だ。

 空の魔王と呼ばれたルーデル閣下だ。

 色々な逸話を残しており、ルーデル閣下の為に作った勲章まである人物。

 そんな者に男は少しでも近付きたかったのだ。

 故に男は満足している。

 憧れに届いたのだから。

 だが、ここで不思議に思ってしまう。

 なぜ、男を転生させたのか。

 今でも分からない。

 これだけは分かる。

 もしも、あの転生者がいなければこの国は滅んでいた。

 あの神らしき存在はその為に転生させたのかもしれない。

 今になってもそれは分からない。

 転生者はそれを知る由は無いが、幸せだろう。

 愛しい妻子がおり、前世からの憧れを叶えられたのだから。

 だから、それで良いのだろう。

 例え、どんな存在に転生させられたとしても。

 もう関係無いことなのだから。

 転生者が家族との時間を過ごしている中、それは現れた。

 姿は一切言葉で表すことは出来ず、ただ存在しているとしか言えない。

 「やはり、人間は面白い。だが、この者はここまでだな」

 若い男が何処かで響いたが、それは誰にも聞こえなかった。

 いや、聞こえても記憶から消えただけだ。

 それは何も残さずに消え去ったのだ。

    
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