短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori

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階段の声

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 私はとあるビルで清掃員をしています。
これはそのビルの階段の清掃中に起こった出来事です。

 私は、その日もいつものように最上階の10階から下の階へと階段に掃除機をかけていました。1人で黙々と作業を進め、8階まで降りてきたところで男の人の声がしました。

 私は、咄嗟に周りを見渡します。

 ほとんど人が通らない時間帯ではあるのですがたまに階段を使う人はいます。
 掃除機をかけているとその人の気配に気づかずにこのビルで働いている方の通行を妨げてしまうことはよくあることなので、周りを見回しつつ道を開けようと階段の隅に避けます。
 
 しかし、周りを見回しても誰もいません。ドアが閉まるとガシャんと大きな音がするのですがその音もしていません。誰も階段にいる気配が無いのです。
 まあ、気のせいかもしくは耳鳴りかとふたたび作業に戻りました。階段にウィィィと掃除機の音が反響します。それから5段ほど階段を降りたところでまた声がしました。男の低い声です。はっきりと何を言っているかわかりませんが鼻歌のように聞こえました。その声は、私がいる5階よりも上の階から響いているようです。

 音程はミードーレーでしょうか。繰り返し聞こえる声がだんだん近くなるのがわかりました。どうやら上から下へと降りてきているようでだんだん近づいてきます。


 怖くなってまた周りを見渡しますが、やはり誰もいません。

 いやでもずっと鼻歌が絶えず聞こえている気がします。足音はしません。人気のない階段に私1人のはずなのに男の声が聞こえるのです。

 「んふーふーーふーー」

 意味不明な鼻歌のような声。音程をとっているようですが、何を歌ってるのか歌ってないのか。でも、はっきり聞こえるんです。


 
 私はその場に棒立ちで声のする上の階をボーッと見つめることしかできません。
 大きくなる声、見えない姿。
 今思えば、さっさと降りて逃げればよかったのにその時の私にはその場を立ち去る、逃げるという選択肢がなかったのです。
 
 その声は、ついに私の真後ろまで近づいてきました。
 鳥肌がブワッと立ちます。

 やばいやばいやばいやばい。
 
 人の気配はないけれど声だけが歩いているとような感じです。

 私は、怖くてぎゅっと目を瞑ります。
 

 なんかされるのでは、と思い怯えていた私の考えと裏腹に結局声は私の元をさりました。だんだん声は遠のきます。そして声は消えました。
 それ以降、数ヶ月が経ちましたが声が聞こえたのはその一度きりです。




 話は以上です。よくある怖い話のように何か被害を受けたわけではありませんが怖かった体験です。
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