短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori

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ねちょり

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 ねちょり。
 ねちょり。


 僕は、手に触れる赤い液体の感覚がいまだに忘れられずにいる。


『口減らし』という言葉をご存知だろうか。


 僕が、幼少期に住んでいた町がまだ村だった頃、口減らしがあったとか無かったとか、口減らしで150人の子供が毎年死んだとか、そう言う都市伝説があった。

 なんでも、残酷な都市伝説で、不要な子供の胸を刺して殺してしまって、川に流す。
 なぜ胸を刺すかと言うと、血の匂いに釣られた魚が、たくさん死体に寄ってくる。
 その魚を捕まえて、食べると言うのだ。

 要は、子供を撒き餌に使うとのこと。

 そんなことがあり得るのか?
 今でも都市伝説としてその町に残っているが、僕は、それが都市伝説ではなく、本当にあった事だと考えている。




 僕が、小学6年生の頃。

 近所のだだっ広い、川沿いにある公園で、友達数人と遊んでいた。

 鬼ごっこをしていたと思うが、いつの間にかかくれんぼ的な遊びに発展していた。

 僕は、鬼に見つからない様に公園の隅の川(と言っても本当に小さな小川で、もしかしたら近所の田畑の用水路だったのかもしれない)沿いの背の高い草の中に隠れていた。


 物音を立てない様に静かに草をかき分けて進む。
 遠くに小さくだが、鬼役の子が見える。
 何か叫んでいる。あまり聞き取れなかったが、「隠れてないで出てきて!」と怒っている様だ。

 でも、僕はお構い無しにズンズン草の中を進む。

 ちょっと進むと、何かを踏んづけた。
 その何かは、硬くて、僕はバランスを崩した。


「いってぇ…。」


 僕は、立ち上がって足元を見る。


「人形…?」

 そこに落ちていたのは、日本人形の様だった。
 でも、髪の毛はついていない。はげあたまの人形。
 細い目がこちらを見ている。赤い着物を着ていた。


 僕が、その人形をなんの気無しに持ち上げようとすると、

 ねちょり…


 掴んだ胴体は、柔らかくて、奇妙な肌触りだった。



 僕は、怖くなってその場から逃げ出した。


 その後、まもなく、小学校で町の歴史について学ぶ、と言う授業があった。
 そこで、僕は『口減らし』と言う習慣について学んだ。
 都市伝説ではなく、本当にあった事実だったのだ。

 そして、この町では、口減らしをした子供の供養として日本人形を作ると知った。
 殺した子供の魂を人形に移すそうだ。


 正直、あの日本人形と関係があるかどうかは、はっきりわからない。

 でも、僕には確信があった。


 だって、あの日本人形。


 胸から血を流していたから。

 だから、触った時に『ねちょり』と奇妙な感覚があったんだ。

 あの、赤黒い液体。

 水なんかじゃない。あの生臭さと触感。

 本物の、血液に違いない。
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