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環境変化編 第九章:自分の力で根を下ろす
異世界再認識 店主、立場再認識
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店主を病室に案内した後、長い時間店をがら空きにするのも不安だからということで、「なるべく早く帰ってきてくださいよ」とニィナに言い残し、一足先にデルフィは店に戻る。
「安静にしなくてもいいけどさ。しばらくここで生活する、そんな気持ちでいなよ。……って言葉通じないのかい?」
「先生、分かりやすい言葉なら分かるらしいよ。それと筆談もできるっぽい。……この先生は、セレナが帰って来るまで、ここに、いなさい、って言ってるよ」
店主は力なく頷き、メモに文を書く。
「何々? 『セレナ、冒険者。仕事に出掛けた。帰り、不明』か。あらら、しょうがないね。そうそう、テンシュから、大きい魔力、消えたのを、先生は知った。長い文は分かるかな?」
これ以上青くはならないだろうと思われた店主の顔が一層青くなり、頭を抑える。
ジムナーとニィナには、店主は新たな悩みを抱えたように見えた。
何かに気付いたように素早くメモを書く店主。
「今度は……『それ、セレナが来るまで、内緒の願い』か。……うん、分かった。……先生」
「分かってるよ。あたしゃもっとヤバそうな患者を診たこともある。安心してしばらくここにいな」
深い皺が刻まれた年老いた女医は、店主を安心させるように穏やかな笑顔を見せる。
それを見た店主は、やや気持ちを落ち着けられた様子。
───────────
気を失ってから気付いた時の店主は、初めて見る部屋に戸惑った。
どこかに運ばれたことは分かったが、黒い鳥の獣人によるのかそれとも別の誰かかは分からない。
条件反射で起き上がった瞬間、どんな危害を加えられるか分からない。
しかしその心配は無用だった。
ニィナの声がそばから聞こえた。
しかしその言葉は何かの音のように聞こえた。何かを言われているのは分かる。まるで別世界に放り投げれらた気持ちになった。
そんな気持ちを理解したかしてないか、ニィナは病室を出る。
しばらくして部屋にやって来たニィナは、店主が初めて見る人物二人を連れて来た。
二人とも白衣を着ている。それだけで医者であることは理解した。
(するとここは病院か。病室ってわけか)
医者と思しき人物が、店主の目の前でゆっくりと指を動かす。
(意識の検査だな。事態を把握するにはまずは指を追ってからだ)
看護師と思われる人物とニィナがゆっくりと声をかけてくる。
店主は少し安心した。
保護されたからではない。
暇さえあればこの世界の文字を身につけるための本を読み、放映機で見られる教育番組を見ていた成果だった。
セレナや店主が知っている者達からその姿を見せるのも照れくさいし恥ずかしい。
人目を忍びながらの学習は思うようには進まなかったが、思った以上に店主の身に付いていた。
医者の話の中から「退院」という言葉が聞き取れた。
このまま店に戻ったら、日常生活に間違いなく差し支えが出る。
それだけならまだいい。
目的は分からないが、こんな異常事態を引き起こした黒い鳥の獣人に居場所を突き止められている。
入院したままの方がまだ安全なのは理解できた。
何も対策もなしに退院させられるのはまずい。
三人が互いに言葉を交わした後病室を出る。
店主には、今後どう対応されるのか全く理解できなかった。
かと言って説明を求めたところで、言葉自体理解が素早くできない以上、店主の不安を根本から消すことは出来ない。
[……どういうことだ? 言葉が通じなくなったということは、あのクソジジィの力の効果が消えた。俺の寿命の方はどうなっている? それと気を失った理由は……いや、待て。あの男から感じた……違う! あの男が持ってた石だ! あれから感じた異様な……。あれをどこかで……]
一人きりの病室で呟く言葉は日本語。それは今までと同じだったが、店主の言葉を聞く者にはこの国の言葉に変化する。もちろん店主にはその変化はは分からない。
だがニィナたちの言葉が理解できなくなった以上自分の言葉も通じないに違いないと判断した店主は、声を出すのを止めることにした。
自分が別の世界が存在することが信じられなかったように、この世界の住人達も店主の世界が別に存在することは思ってもいない。その説明をすることが難しいし、間違いなく多くのトラブル発生の種になる。
だがその問題は店主の中で些細な問題に変わった。
能力が消え、意識不明に陥る。
そんな現象が今まであったではないか。
そして、そのことになぜ気付かなかったのか。
その症状がそのまま進行して衰弱死した者がいたではないか。
その原因となった物は巨塊、そして宝石化した巨塊の体の一部。
そしてその現場となった洞窟は、乱獲という表現が相応しいほどの宝石採掘現場となっている。
衰弱死に至るほどの効果がある石が採掘されていたということになる。
なぜ今までそのことに考えが及ばなかったのか。
魔力を元々有していない自分は死に至る恐れはない。だがニィナはどうだったか。
体当たりしてあの男の正面から無理矢理移動させた自分の行為は間違いではなかったことを確信した。
そしてそう考えると、自分を襲ったことを前提として考えれば、法王の反対派の仕業だろうという結論は出せる。
だがあの男の正体は不明のまま。
そして魔力を有する者を意識不明にさせる石はどれほど国内に流出しているか、あの男がどれくらい所有しているかも不明のまま。
そのための情報を得ようとするが、周囲にある文字はすべてこの国の文字。
『天美法具店』と、旧『法具店アマミ』に言葉の問題を解決するための魔術をかけたセレナは、いつ戻って来るかは不明。
自分の身に間近まで迫る危機は、いつ来るかわからない。
ウルヴェスに頼めば確実に安全は保障されるが、公式の場であったことがない店主からはそれを頼むわけにはいかない。
法王という立場を危うくさせる行為でもあるし、何より借りを作りたくない店主にとって筋が通らない話である。
村に店があった頃の縁は自ら切った。
ゆえに自分で防御する手段は何もない、丸裸の状態である。
その苦悩は、一睡もしないまま翌朝を迎えた後も続く。
「安静にしなくてもいいけどさ。しばらくここで生活する、そんな気持ちでいなよ。……って言葉通じないのかい?」
「先生、分かりやすい言葉なら分かるらしいよ。それと筆談もできるっぽい。……この先生は、セレナが帰って来るまで、ここに、いなさい、って言ってるよ」
店主は力なく頷き、メモに文を書く。
「何々? 『セレナ、冒険者。仕事に出掛けた。帰り、不明』か。あらら、しょうがないね。そうそう、テンシュから、大きい魔力、消えたのを、先生は知った。長い文は分かるかな?」
これ以上青くはならないだろうと思われた店主の顔が一層青くなり、頭を抑える。
ジムナーとニィナには、店主は新たな悩みを抱えたように見えた。
何かに気付いたように素早くメモを書く店主。
「今度は……『それ、セレナが来るまで、内緒の願い』か。……うん、分かった。……先生」
「分かってるよ。あたしゃもっとヤバそうな患者を診たこともある。安心してしばらくここにいな」
深い皺が刻まれた年老いた女医は、店主を安心させるように穏やかな笑顔を見せる。
それを見た店主は、やや気持ちを落ち着けられた様子。
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気を失ってから気付いた時の店主は、初めて見る部屋に戸惑った。
どこかに運ばれたことは分かったが、黒い鳥の獣人によるのかそれとも別の誰かかは分からない。
条件反射で起き上がった瞬間、どんな危害を加えられるか分からない。
しかしその心配は無用だった。
ニィナの声がそばから聞こえた。
しかしその言葉は何かの音のように聞こえた。何かを言われているのは分かる。まるで別世界に放り投げれらた気持ちになった。
そんな気持ちを理解したかしてないか、ニィナは病室を出る。
しばらくして部屋にやって来たニィナは、店主が初めて見る人物二人を連れて来た。
二人とも白衣を着ている。それだけで医者であることは理解した。
(するとここは病院か。病室ってわけか)
医者と思しき人物が、店主の目の前でゆっくりと指を動かす。
(意識の検査だな。事態を把握するにはまずは指を追ってからだ)
看護師と思われる人物とニィナがゆっくりと声をかけてくる。
店主は少し安心した。
保護されたからではない。
暇さえあればこの世界の文字を身につけるための本を読み、放映機で見られる教育番組を見ていた成果だった。
セレナや店主が知っている者達からその姿を見せるのも照れくさいし恥ずかしい。
人目を忍びながらの学習は思うようには進まなかったが、思った以上に店主の身に付いていた。
医者の話の中から「退院」という言葉が聞き取れた。
このまま店に戻ったら、日常生活に間違いなく差し支えが出る。
それだけならまだいい。
目的は分からないが、こんな異常事態を引き起こした黒い鳥の獣人に居場所を突き止められている。
入院したままの方がまだ安全なのは理解できた。
何も対策もなしに退院させられるのはまずい。
三人が互いに言葉を交わした後病室を出る。
店主には、今後どう対応されるのか全く理解できなかった。
かと言って説明を求めたところで、言葉自体理解が素早くできない以上、店主の不安を根本から消すことは出来ない。
[……どういうことだ? 言葉が通じなくなったということは、あのクソジジィの力の効果が消えた。俺の寿命の方はどうなっている? それと気を失った理由は……いや、待て。あの男から感じた……違う! あの男が持ってた石だ! あれから感じた異様な……。あれをどこかで……]
一人きりの病室で呟く言葉は日本語。それは今までと同じだったが、店主の言葉を聞く者にはこの国の言葉に変化する。もちろん店主にはその変化はは分からない。
だがニィナたちの言葉が理解できなくなった以上自分の言葉も通じないに違いないと判断した店主は、声を出すのを止めることにした。
自分が別の世界が存在することが信じられなかったように、この世界の住人達も店主の世界が別に存在することは思ってもいない。その説明をすることが難しいし、間違いなく多くのトラブル発生の種になる。
だがその問題は店主の中で些細な問題に変わった。
能力が消え、意識不明に陥る。
そんな現象が今まであったではないか。
そして、そのことになぜ気付かなかったのか。
その症状がそのまま進行して衰弱死した者がいたではないか。
その原因となった物は巨塊、そして宝石化した巨塊の体の一部。
そしてその現場となった洞窟は、乱獲という表現が相応しいほどの宝石採掘現場となっている。
衰弱死に至るほどの効果がある石が採掘されていたということになる。
なぜ今までそのことに考えが及ばなかったのか。
魔力を元々有していない自分は死に至る恐れはない。だがニィナはどうだったか。
体当たりしてあの男の正面から無理矢理移動させた自分の行為は間違いではなかったことを確信した。
そしてそう考えると、自分を襲ったことを前提として考えれば、法王の反対派の仕業だろうという結論は出せる。
だがあの男の正体は不明のまま。
そして魔力を有する者を意識不明にさせる石はどれほど国内に流出しているか、あの男がどれくらい所有しているかも不明のまま。
そのための情報を得ようとするが、周囲にある文字はすべてこの国の文字。
『天美法具店』と、旧『法具店アマミ』に言葉の問題を解決するための魔術をかけたセレナは、いつ戻って来るかは不明。
自分の身に間近まで迫る危機は、いつ来るかわからない。
ウルヴェスに頼めば確実に安全は保障されるが、公式の場であったことがない店主からはそれを頼むわけにはいかない。
法王という立場を危うくさせる行為でもあるし、何より借りを作りたくない店主にとって筋が通らない話である。
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