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環境変化編 第九章:自分の力で根を下ろす
事情説明 告白
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店主の話はまだ終わらない。
「あのクソジジィとはそれだけで終わらなかった。『闘石』って呼ばれてた遊び。あの名前を『碁』に変えたきっかけも俺」
ざわつきがさらに大きくなる。
「流石にそこまできたら吹きすぎじゃねぇの?」
ヤジを飛ばしたのは『ホットライン』のエンビー。
店主は聞き取れないところがあったらしい。
「私も立ち会ったし……」
「私も行ったもん。皇居に碁盤運んで、法王様が店主が作った碁盤を選んで……」
シエラも同行して、震えながらもその場面を目にしている。
ざわつきが止まないのも無理はない。
店主自ら、自分が作った碁盤は自分が作った物ではなくウルヴェスが作った物だとウルヴェスに向かって主張したのである。
制作者としての責任をウルヴェスに押し付ける代わりに、その権利も譲渡し、自分はそれが原因で起きる権力争いには無縁であると暗に言い切った形だ。
「法王が作った物を、自分が作ったってばらしたってこと?」
「それ、法王から睨まれるんじゃね?」
店主の身を案ずる声も大きくなる。
そして店主が持つ法王との縁を羨み嫉妬する声も大きくなってくる。
「これは、俺の自慢話ではない。俺が言葉が分からなくなった理由がここにある、かもしれない」
まだ詳しい経緯を聞いてはいないセレナも、この話には驚く。店主の言い間違いではないかと耳を疑う。
謎の人物から目の前に石を突き出されて気を失った。
巨塊討伐時の爆発と呼ばれる現象や、セレナ達が意識不明になった共通点が見られる。
突き出された石には、力を吸い取る能力を持っていた。
つまり、使い方によってはこの世界の住民達の中で魔力を持つ者に死を至らしめる可能性を持つ石が、あちこちに散らばっているかもしれないということになる。
「俺は、みんなが知ってるように、気に入らなきゃ仕事を止める。依頼を受け付けないこともある」
一度でも客になったことがある者達全員が一斉に頷く。
自覚はあるが、援護がないのもあまり気分は良くはないものである。
「それが気に食わなくて、俺を殺そうとする奴はいるか?」
「ギスモがいるな」
「まだ生きてんの?」
「一生社会に出られねぇって聞いたが」
断られて腹を立てる者もいたが、そこまでではない。
しかし店主は、死ぬかもしれないと思える体験をした。
「だから、碁盤作りの時には心当たりはある。俺を余所者呼ばわりしてた奴がいた」
ロビーが一気に静かになる。
この世界で仕事を選ぶときは、まず家業が選ばれる。
後継ぎになるかどうか、後継ぎになれなかったものは家業を手伝うか、同業者として独立するかである。
しかし素質がない者も中に入る。
家業の縁を頼りに様々な仕事を体験する。その中で性に合った職があればそれに就くことが多い。
冒険者になるには、初めから冒険者になる事を目指すか、家族や一族から追い出された者が就く職業なのである。
軽口で余所者という言葉を出すことは度々ある。差別用語でも何でもない言葉である。
しかし対等な立場ではなく、明らかに上の立場で、しかも権力者が一般の住民に対してその言葉を口にするのは、明らかに敵意を持つ証明でもある。
わざわざ口にする必要がないからだ。
「店主に向けてそんな敵意を向けたのは誰か?」
そんな声が多くなる。怒りの感情がその声に見え隠れしているのは、どんなに努力しても受け入れてもらえず、部外者として扱われ、除外されて余所者と言われた経験があった者達が多いからか。
「余所者と言った人物が襲ってきた。それは分からない。その人物に賛同する者かもしれない。ただ、俺はもう今までと同じ生活は出来ない」
この店主の話も、セレナには彼が何を言おうとしているのか真意が分からない。補足をせず、店主の次の話を待つ。
「いつ死ぬか分からない毎日になった。自分の身を守る方法は全くない」
「私がテンシュと会ってからかけた術は? 店主の身を守るための魔法なんだけど」
「何の効果もなかった。多分その力も取られたかも」
セレナの目の前が真っ暗になる。
店主のためにかけた術が、肝心な時に効果を発揮するどころか除去されたのである。
誰が、何のために、店主にそのようなことをしたのか分からない。
手掛かりになりそうな情報は、そんな石を所有する者ということだけである。
「犯人は……誰なんだよ。テンシュさんを余所者呼ばわりしたそいつはどこの誰だよ!」
「確かに余所者だろうね。その事実は変わんないだろうよ。けど、その余所者さんがやらかしたことを考えると、もうちょっと待遇が良くてもいいんじゃないかって思うけどね」
次第に過熱しそうになる集団。
しかしそれを抑えようと、視点を変えて意見を言うジムナー。
「権力争いの道具になりたくない。それと、犯人を捜そうと思っていない」
そのジムナーの意見を、セレナが店主に分かりやすく伝える。
その内容を聞き、店主は自分の思いを述べる。
「だって、今までみんなに自分の居場所を知らせなかった。『死ぬのが怖いのでみんなで守って』と言うつもりはないし、言う権利もない」
「ちょっとテンシュ、変なこと言わないでよ! せっかくみんな、テンシュの事を心配してこうして集まって来たのよ?」
「セレナの言う通りだ。俺達らとって大事な人だから何とかしようって俺は思ってる。今テンシュの隙を伺って何かしてやろうなんて思う奴は、ここにはいないだろうよ」
ワイアットの言った言葉を分かりやすく言い換えて伝えるセレナ。
その中身を理解したのか大きく何度も店主は頷く。
「知ってるか? お前ら。生きている者は、いつか必ず死ぬんだよ」
店主は静かに口を開いた。
「あのクソジジィとはそれだけで終わらなかった。『闘石』って呼ばれてた遊び。あの名前を『碁』に変えたきっかけも俺」
ざわつきがさらに大きくなる。
「流石にそこまできたら吹きすぎじゃねぇの?」
ヤジを飛ばしたのは『ホットライン』のエンビー。
店主は聞き取れないところがあったらしい。
「私も立ち会ったし……」
「私も行ったもん。皇居に碁盤運んで、法王様が店主が作った碁盤を選んで……」
シエラも同行して、震えながらもその場面を目にしている。
ざわつきが止まないのも無理はない。
店主自ら、自分が作った碁盤は自分が作った物ではなくウルヴェスが作った物だとウルヴェスに向かって主張したのである。
制作者としての責任をウルヴェスに押し付ける代わりに、その権利も譲渡し、自分はそれが原因で起きる権力争いには無縁であると暗に言い切った形だ。
「法王が作った物を、自分が作ったってばらしたってこと?」
「それ、法王から睨まれるんじゃね?」
店主の身を案ずる声も大きくなる。
そして店主が持つ法王との縁を羨み嫉妬する声も大きくなってくる。
「これは、俺の自慢話ではない。俺が言葉が分からなくなった理由がここにある、かもしれない」
まだ詳しい経緯を聞いてはいないセレナも、この話には驚く。店主の言い間違いではないかと耳を疑う。
謎の人物から目の前に石を突き出されて気を失った。
巨塊討伐時の爆発と呼ばれる現象や、セレナ達が意識不明になった共通点が見られる。
突き出された石には、力を吸い取る能力を持っていた。
つまり、使い方によってはこの世界の住民達の中で魔力を持つ者に死を至らしめる可能性を持つ石が、あちこちに散らばっているかもしれないということになる。
「俺は、みんなが知ってるように、気に入らなきゃ仕事を止める。依頼を受け付けないこともある」
一度でも客になったことがある者達全員が一斉に頷く。
自覚はあるが、援護がないのもあまり気分は良くはないものである。
「それが気に食わなくて、俺を殺そうとする奴はいるか?」
「ギスモがいるな」
「まだ生きてんの?」
「一生社会に出られねぇって聞いたが」
断られて腹を立てる者もいたが、そこまでではない。
しかし店主は、死ぬかもしれないと思える体験をした。
「だから、碁盤作りの時には心当たりはある。俺を余所者呼ばわりしてた奴がいた」
ロビーが一気に静かになる。
この世界で仕事を選ぶときは、まず家業が選ばれる。
後継ぎになるかどうか、後継ぎになれなかったものは家業を手伝うか、同業者として独立するかである。
しかし素質がない者も中に入る。
家業の縁を頼りに様々な仕事を体験する。その中で性に合った職があればそれに就くことが多い。
冒険者になるには、初めから冒険者になる事を目指すか、家族や一族から追い出された者が就く職業なのである。
軽口で余所者という言葉を出すことは度々ある。差別用語でも何でもない言葉である。
しかし対等な立場ではなく、明らかに上の立場で、しかも権力者が一般の住民に対してその言葉を口にするのは、明らかに敵意を持つ証明でもある。
わざわざ口にする必要がないからだ。
「店主に向けてそんな敵意を向けたのは誰か?」
そんな声が多くなる。怒りの感情がその声に見え隠れしているのは、どんなに努力しても受け入れてもらえず、部外者として扱われ、除外されて余所者と言われた経験があった者達が多いからか。
「余所者と言った人物が襲ってきた。それは分からない。その人物に賛同する者かもしれない。ただ、俺はもう今までと同じ生活は出来ない」
この店主の話も、セレナには彼が何を言おうとしているのか真意が分からない。補足をせず、店主の次の話を待つ。
「いつ死ぬか分からない毎日になった。自分の身を守る方法は全くない」
「私がテンシュと会ってからかけた術は? 店主の身を守るための魔法なんだけど」
「何の効果もなかった。多分その力も取られたかも」
セレナの目の前が真っ暗になる。
店主のためにかけた術が、肝心な時に効果を発揮するどころか除去されたのである。
誰が、何のために、店主にそのようなことをしたのか分からない。
手掛かりになりそうな情報は、そんな石を所有する者ということだけである。
「犯人は……誰なんだよ。テンシュさんを余所者呼ばわりしたそいつはどこの誰だよ!」
「確かに余所者だろうね。その事実は変わんないだろうよ。けど、その余所者さんがやらかしたことを考えると、もうちょっと待遇が良くてもいいんじゃないかって思うけどね」
次第に過熱しそうになる集団。
しかしそれを抑えようと、視点を変えて意見を言うジムナー。
「権力争いの道具になりたくない。それと、犯人を捜そうと思っていない」
そのジムナーの意見を、セレナが店主に分かりやすく伝える。
その内容を聞き、店主は自分の思いを述べる。
「だって、今までみんなに自分の居場所を知らせなかった。『死ぬのが怖いのでみんなで守って』と言うつもりはないし、言う権利もない」
「ちょっとテンシュ、変なこと言わないでよ! せっかくみんな、テンシュの事を心配してこうして集まって来たのよ?」
「セレナの言う通りだ。俺達らとって大事な人だから何とかしようって俺は思ってる。今テンシュの隙を伺って何かしてやろうなんて思う奴は、ここにはいないだろうよ」
ワイアットの言った言葉を分かりやすく言い換えて伝えるセレナ。
その中身を理解したのか大きく何度も店主は頷く。
「知ってるか? お前ら。生きている者は、いつか必ず死ぬんだよ」
店主は静かに口を開いた。
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