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環境変化編 第九章:自分の力で根を下ろす
事情説明 反抗と援護
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「そんな危険な人物が町の中に潜んでいるってのか? それこそ信じられん」
「法王様は何もしてくれないのか? いろんなすごい力を持ってるって話は聞いたぞ?」
「そんなやつと対面したって、私達じゃ無理よ。魔法も武器も町の中で振り回すわけにはいかないもの」
その正体は店主、セレナ、シエラしか知らないライリーとホールスの目が、店主に向けて光る。
この後の店主の発言で、敬愛するウルヴェスの立場がどう転ぶか分からない。
仲良くなりたい相手であっても、二人にとっては警戒は必要な存在になった。
しかしこの人だかりの中で背が低い二人の様子は、店主からは見えない。
「だが俺は『余所者』だからな。これは俺以外に当てはまらない事実だし、皇居の方にもすでに情報が知られている。俺がここから移動したら問題はないかもしれんが」
「つまり、あの村からいなくなったように、また突然ここからいなくなると?」
「だが一般人を危険に巻き込むわけには」
あちこちで論争が起きる。
住民の安全が第一である。
安全を脅かす存在は許さない。
誰もが店主のような覚悟を決める強さは持ってはいない。
「今テンシュは自分のこと『余所者』って言ったけど、テンシュは行く宛があるの? ないんじゃないの? だってあの村からは追い出されたんだよ? ここでは自分からいなくなるようなこと言ったら、都会にも田舎にも、テンシュの居場所どこにもないってことじゃない」
シエラが悲しそうに店主を見る。
「テンシュがここからいなくなると、この町に住む人は安心できるようになる。だけどこの世界ではテンシュの居場所はあるのか? って聞いてるよ」
「お前の知ったことではないだろう? ここから移動した後は、俺が考えなきゃならないことで、お前がその責任を負ってはならない話だ」
セレナがシエラの話の要点をまとめて店主に伝えると、店主はすぐにシエラに返す。
店主の覚えている大陸語と文法は多くない。だから誰にも聞きやすく分かりやすい。
それゆえに、店主の言葉のすぐ後にシエラが反論する。
「だったらテンシュ! すぐあなたの世界に帰ったらいいじゃないですか! いつまでもグダグダとごねて毒吐いて拗ねて! それでも尊敬する所があるから弟子入りしたいってお願いして、私も失礼なこと言ったけどいつまで根に持ってるのよ! うんざりなのよ!」
目を赤くして怒りだすシエラ。しかし誰も止めようとはしない。
常々店主に感じている不満を代わりに爆発させているシエラを止める理由は誰にもない。
セレナの言い換えを通じて、店主が昔を振り返りながらゆっくりと話し出す。
「セレナも一方的にこの世界に俺を連れて来たが、あのクソジジィはもっと一方的だったな。二十年以上もこの顔と体だ。この世界では当たり前みたいだが、俺のこの姿は、俺の住む世界の五十才の姿じゃない。言い方を変えれば、法王直々に俺がこの世界で生活できるように、そんな生命力を……押し付けられたと言えるか。もしそれがなかったら、もちろん向こうの世界に戻っていた。だが俺の世界に押し掛けられる可能性を考えると、俺が自分の世界に災いを連れて来るような気がした。この世界で暮らすには有り難いとは思うが」
「それって、テンシュにこの世界にいてほしいっていう猊下からの希望じゃないんですか?! それだけテンシュにこの世界にいてほしいって熱望されてたんですよ! 猊下もテンシュのために、あなたの居場所を作ってくださってたんじゃないですか! 猊下からも引き留められてるんですよ! テンシュっ! あなたはこの国の代表からも歓迎されてるんです! 今日だってこんなにたくさんの人達がテンシュに会いに来てくれた! 本当にテンシュのこと嫌ってたらこんなに集まらないし、探そうともしませんよっ! あなたの存在を否定する者がいるなら、私がテンシュを守りますっ! テンシュの世界に戻りたいというのが本音だったらば、私が代わりにずっと謝りますっ!」
シエラのその叫びに似た話は、店主はすべてを聞き取れなかった。
セレナの通訳を通じて、何とかシエラの思いを分かることが出来た。
しかし最後の一言は通訳なしでも理解できたようだ。
「……居心地はいいよ。それに俺の力を真っ当に評価してくれる者が圧倒的に多い。俺に家族はいないし、戻りたいと熱望することはない。たとえこの町に俺の居場所がなかったとしてもだ。だから誰からも謝ってもらう必要はないし、謝罪で頭を下げられ続ける人生も真っ平だ」
「……テンシュ、あたしはあんたと会った時に言ったよね? あたしも余所者だって。確かにその次元は違うと思うよ? でも地元で居場所を失ってここに来た者も多い。そんな者達が寄り集まってできた町さ。近所の者として、あたしはあんたを歓迎するよ、テンシュ。もっとも聞かれなかったから喋らなかったってのはいただけないねぇ。その村の連中はどう思ってたかは知らない。けどこの国の恩人ってことは確かだ。その恩人を追い出すことだけは出来ない。やれないね」
「テンシュ、あなたは私ですよ。ここには自分の居場所はない。そう思い込んだあなたは私と同じです。シエラさんの思いは私達も同じです。ですが違う部分もあります。あなたは何を見つめながらこの世界で生活してきたか。ひたすら仕事を中心に生活してこられたのでしょう。だから人付き合いや、人の顔と名前を覚えるのが面倒だったんですよ。でも私達『風刃隊』はそんな店主の生活態度のおかげで救われました。テンシュ、私も、シエラさんと同じ思いです。ここでの生活を妨げようとする者から守りたい。あなたが自分で『余所者』と言い続ける限り。それを言い終わる時は、この世界の住民の一人であるという思いが強くなる頃でしょう。私も姉と思いは同じです。ここにいることを歓迎しますよ、テンシュ」
姉のニィナの後に弟のミュールが続く。
セレナの通訳なしでも店主は聞き取れた。
めをつぶってふたりのはなしを聞いている店主は、まるで自分の心の中にも届かせようとしている様子。
「だからシエラさんとは違って、『すごく面倒くさい』『すごくどうでもいい』と言い続けることは許可しますよ、テンシュ」
しかしその後のミュールのこの一言は、集まった全員から一斉にツッコミが入った。
「法王様は何もしてくれないのか? いろんなすごい力を持ってるって話は聞いたぞ?」
「そんなやつと対面したって、私達じゃ無理よ。魔法も武器も町の中で振り回すわけにはいかないもの」
その正体は店主、セレナ、シエラしか知らないライリーとホールスの目が、店主に向けて光る。
この後の店主の発言で、敬愛するウルヴェスの立場がどう転ぶか分からない。
仲良くなりたい相手であっても、二人にとっては警戒は必要な存在になった。
しかしこの人だかりの中で背が低い二人の様子は、店主からは見えない。
「だが俺は『余所者』だからな。これは俺以外に当てはまらない事実だし、皇居の方にもすでに情報が知られている。俺がここから移動したら問題はないかもしれんが」
「つまり、あの村からいなくなったように、また突然ここからいなくなると?」
「だが一般人を危険に巻き込むわけには」
あちこちで論争が起きる。
住民の安全が第一である。
安全を脅かす存在は許さない。
誰もが店主のような覚悟を決める強さは持ってはいない。
「今テンシュは自分のこと『余所者』って言ったけど、テンシュは行く宛があるの? ないんじゃないの? だってあの村からは追い出されたんだよ? ここでは自分からいなくなるようなこと言ったら、都会にも田舎にも、テンシュの居場所どこにもないってことじゃない」
シエラが悲しそうに店主を見る。
「テンシュがここからいなくなると、この町に住む人は安心できるようになる。だけどこの世界ではテンシュの居場所はあるのか? って聞いてるよ」
「お前の知ったことではないだろう? ここから移動した後は、俺が考えなきゃならないことで、お前がその責任を負ってはならない話だ」
セレナがシエラの話の要点をまとめて店主に伝えると、店主はすぐにシエラに返す。
店主の覚えている大陸語と文法は多くない。だから誰にも聞きやすく分かりやすい。
それゆえに、店主の言葉のすぐ後にシエラが反論する。
「だったらテンシュ! すぐあなたの世界に帰ったらいいじゃないですか! いつまでもグダグダとごねて毒吐いて拗ねて! それでも尊敬する所があるから弟子入りしたいってお願いして、私も失礼なこと言ったけどいつまで根に持ってるのよ! うんざりなのよ!」
目を赤くして怒りだすシエラ。しかし誰も止めようとはしない。
常々店主に感じている不満を代わりに爆発させているシエラを止める理由は誰にもない。
セレナの言い換えを通じて、店主が昔を振り返りながらゆっくりと話し出す。
「セレナも一方的にこの世界に俺を連れて来たが、あのクソジジィはもっと一方的だったな。二十年以上もこの顔と体だ。この世界では当たり前みたいだが、俺のこの姿は、俺の住む世界の五十才の姿じゃない。言い方を変えれば、法王直々に俺がこの世界で生活できるように、そんな生命力を……押し付けられたと言えるか。もしそれがなかったら、もちろん向こうの世界に戻っていた。だが俺の世界に押し掛けられる可能性を考えると、俺が自分の世界に災いを連れて来るような気がした。この世界で暮らすには有り難いとは思うが」
「それって、テンシュにこの世界にいてほしいっていう猊下からの希望じゃないんですか?! それだけテンシュにこの世界にいてほしいって熱望されてたんですよ! 猊下もテンシュのために、あなたの居場所を作ってくださってたんじゃないですか! 猊下からも引き留められてるんですよ! テンシュっ! あなたはこの国の代表からも歓迎されてるんです! 今日だってこんなにたくさんの人達がテンシュに会いに来てくれた! 本当にテンシュのこと嫌ってたらこんなに集まらないし、探そうともしませんよっ! あなたの存在を否定する者がいるなら、私がテンシュを守りますっ! テンシュの世界に戻りたいというのが本音だったらば、私が代わりにずっと謝りますっ!」
シエラのその叫びに似た話は、店主はすべてを聞き取れなかった。
セレナの通訳を通じて、何とかシエラの思いを分かることが出来た。
しかし最後の一言は通訳なしでも理解できたようだ。
「……居心地はいいよ。それに俺の力を真っ当に評価してくれる者が圧倒的に多い。俺に家族はいないし、戻りたいと熱望することはない。たとえこの町に俺の居場所がなかったとしてもだ。だから誰からも謝ってもらう必要はないし、謝罪で頭を下げられ続ける人生も真っ平だ」
「……テンシュ、あたしはあんたと会った時に言ったよね? あたしも余所者だって。確かにその次元は違うと思うよ? でも地元で居場所を失ってここに来た者も多い。そんな者達が寄り集まってできた町さ。近所の者として、あたしはあんたを歓迎するよ、テンシュ。もっとも聞かれなかったから喋らなかったってのはいただけないねぇ。その村の連中はどう思ってたかは知らない。けどこの国の恩人ってことは確かだ。その恩人を追い出すことだけは出来ない。やれないね」
「テンシュ、あなたは私ですよ。ここには自分の居場所はない。そう思い込んだあなたは私と同じです。シエラさんの思いは私達も同じです。ですが違う部分もあります。あなたは何を見つめながらこの世界で生活してきたか。ひたすら仕事を中心に生活してこられたのでしょう。だから人付き合いや、人の顔と名前を覚えるのが面倒だったんですよ。でも私達『風刃隊』はそんな店主の生活態度のおかげで救われました。テンシュ、私も、シエラさんと同じ思いです。ここでの生活を妨げようとする者から守りたい。あなたが自分で『余所者』と言い続ける限り。それを言い終わる時は、この世界の住民の一人であるという思いが強くなる頃でしょう。私も姉と思いは同じです。ここにいることを歓迎しますよ、テンシュ」
姉のニィナの後に弟のミュールが続く。
セレナの通訳なしでも店主は聞き取れた。
めをつぶってふたりのはなしを聞いている店主は、まるで自分の心の中にも届かせようとしている様子。
「だからシエラさんとは違って、『すごく面倒くさい』『すごくどうでもいい』と言い続けることは許可しますよ、テンシュ」
しかしその後のミュールのこの一言は、集まった全員から一斉にツッコミが入った。
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