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環境変化編 第九章:自分の力で根を下ろす
事情説明 店主の言い訳 1
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「あの二人はあんたの後継者ってことは秘密じゃなかったのか? それに俺の事も公にするつもりか」
「妾とていつまでも法王の座に座るつもりはない。身を引けば天流教の教主という立場にはなるがな。いずれにせよ、妾の力を持ってすれば、傍に居なくても警護は出来るし、何者かが妾を先回りしてテンシュ殿に何かをすることは絶対に出来ん。これからテンシュ殿を守ることには本気で取り掛かるからの。じゃが安心せい。プライベートまで首を突っ込む気はない。その二人と存分に楽しむがいいわ」
「「た、楽しむって!」」
「照れずとも好かろうが。テンシュ殿に気があるなら、妾が相手にしても良いぞ? 妾もまんざらではないし警護もしやすくなる。ここにいつまでもいられる理由も出来る」
次第に言葉に慣れてきたのか、聞くだけなら訳を介さずとも聞き取れるようになってきた店主。
ウルヴェスの言うことを理解し、呆れて椅子の背にもたれかかる。
「節度ってものを知らねぇのかこの教主。だがまぁ得体のしれない物から守ってくれるってのは有り難いといえば有り難い。二人の身にも危険が及ぶ可能性もあるからな」
「うむ。二人にはそれなりに力はあるから自衛手段もあるだろう。だが力及ばぬ事態になれば、遠慮なく妾を頼るがよい」
「と、ところで猊下、先ほど粛清とおっしゃられましたが、具体的には……」
今まで穏やかな顔だったウルヴェスの表情がセレナの言葉で急変。殺気を見せつけるような雰囲気が漂う。
「……世の中には知らなくてよいこともある。結果として国の民を守ったお主らと、国の民を傷つけようとした者達。どちらを取るかは自明の理。その思いは口にせずとも広まるものよ。……これ以上は触れぬ方が良いかもな。ところで前々から思っていたのだがテンシュ殿」
店主は椅子にふんぞり返ったまま、視線だけウルヴェスに向ける。
「個人的な意見を言わせてもらおう。いい加減身近な者の名前と顔くらいは覚えたらどうだ? 妾には構わんが、この姿に向かってジジィと呼ぶテンシュ殿は、事情を知らぬ者達から誤解を受けてしまうぞ?」
「猊下から心配されるテンシュって、考えてみればとんでもない立場よね……」
シエラの言うことももっともである。しかし店主にはそんな自覚もなければ、事態の把握にも関心がない。
「……向こうの世界じゃ俺の思う通りにならないことがたくさんあった。だからそれなりに礼儀をきちんとする必要もある。けどな」
店主はそこで言葉を止める。客が入って来たためだ。
ウルヴェスは気を遣い、カウンターの脇に寄る。
「……いらっしゃい。用事があるなら声をかけろ。ないなら自由」
「いや、テンシュはまだ言葉きちんと覚えてないから無理して言わなくていいわよ。いらっしゃい。何か用事があるなら遠慮なく声かけてね。あ、ここは初めてかしら?」
「え……えっと……冒険者になったばかりで、一通り装備を替えたいと……」
カウンターの端に寄ったウルヴェスの事を気にしながら、話しかけてきたセレナに相談を持ち掛ける。
法王として広く知られているウルヴェスの今の姿がそこにある。人違いかと思い込みたくもなるだろう。
「初心者用なら展示物から選べ。どうせ成長するんだ。今の実力に見合う物を注文しても、別の物がすぐ必要になる。依頼は思う通りに来ない時期。出費は抑えとけ」
仏頂面のまま店主は客に声をかける。
「体格は人間型か。あぁ、俺は人族だからその視点で考えるんだ。お前の種族を下に見てはいない。獣人だな? だが初心者ならサイズが合う物を優先。強度は考えなくていい。人よりタフな奴らが多いからな。痛みに弱かったら、我慢しとけ。あとはお前の予算の都合くらいか……」
店主は言葉不足なりに、客へアドバイスする。
セレナとシエラがその意図を考えながら詳しく客へ説明していく。
そして店主が最後に一言。
「欲しいものが見つからなければ他の店に行く。欲しい物がきっとそこにあり、ここにはない」
「「まぁたそういうことを言う!」」
二人に咎められるが、客は防具を一通り選びカウンターに持ってきた。
ウルヴェスを気にしながらも普通に会計を済ませる。
「あ、あのぅ……」
「はい、何でしょう?」
シエラがにこやかに対応する。
「道具を作る仕事の依頼も受けるって聞いたんですが……」
「相談を受けてからだな。だがさっきも言った通り、初心者は成長は早い。適正不明だが。だから依頼を受けても無駄になる事も多い。成長しやすい面が分かってからでも遅くない。以上!」
セレナとシエラはどう答えようかと迷う。
が、すぐさま店主が答える。
受ける依頼の数が多くなると店主は依頼の仕事しかできなくなってしまう。業者から品物を卸すことがないこの店では、販売の方が疎かになってしまう。
営業方針はすべて店主に委ねていた。
店主の言葉をセレナが客に分かりやすく意訳して伝えると、客はそれで納得したのかやや安心した顔を見せて退店した。
「……名前を覚えてないとこういう利点もある」
店内の空気が落ち着いてから、店主は一言呟いた。
「妾とていつまでも法王の座に座るつもりはない。身を引けば天流教の教主という立場にはなるがな。いずれにせよ、妾の力を持ってすれば、傍に居なくても警護は出来るし、何者かが妾を先回りしてテンシュ殿に何かをすることは絶対に出来ん。これからテンシュ殿を守ることには本気で取り掛かるからの。じゃが安心せい。プライベートまで首を突っ込む気はない。その二人と存分に楽しむがいいわ」
「「た、楽しむって!」」
「照れずとも好かろうが。テンシュ殿に気があるなら、妾が相手にしても良いぞ? 妾もまんざらではないし警護もしやすくなる。ここにいつまでもいられる理由も出来る」
次第に言葉に慣れてきたのか、聞くだけなら訳を介さずとも聞き取れるようになってきた店主。
ウルヴェスの言うことを理解し、呆れて椅子の背にもたれかかる。
「節度ってものを知らねぇのかこの教主。だがまぁ得体のしれない物から守ってくれるってのは有り難いといえば有り難い。二人の身にも危険が及ぶ可能性もあるからな」
「うむ。二人にはそれなりに力はあるから自衛手段もあるだろう。だが力及ばぬ事態になれば、遠慮なく妾を頼るがよい」
「と、ところで猊下、先ほど粛清とおっしゃられましたが、具体的には……」
今まで穏やかな顔だったウルヴェスの表情がセレナの言葉で急変。殺気を見せつけるような雰囲気が漂う。
「……世の中には知らなくてよいこともある。結果として国の民を守ったお主らと、国の民を傷つけようとした者達。どちらを取るかは自明の理。その思いは口にせずとも広まるものよ。……これ以上は触れぬ方が良いかもな。ところで前々から思っていたのだがテンシュ殿」
店主は椅子にふんぞり返ったまま、視線だけウルヴェスに向ける。
「個人的な意見を言わせてもらおう。いい加減身近な者の名前と顔くらいは覚えたらどうだ? 妾には構わんが、この姿に向かってジジィと呼ぶテンシュ殿は、事情を知らぬ者達から誤解を受けてしまうぞ?」
「猊下から心配されるテンシュって、考えてみればとんでもない立場よね……」
シエラの言うことももっともである。しかし店主にはそんな自覚もなければ、事態の把握にも関心がない。
「……向こうの世界じゃ俺の思う通りにならないことがたくさんあった。だからそれなりに礼儀をきちんとする必要もある。けどな」
店主はそこで言葉を止める。客が入って来たためだ。
ウルヴェスは気を遣い、カウンターの脇に寄る。
「……いらっしゃい。用事があるなら声をかけろ。ないなら自由」
「いや、テンシュはまだ言葉きちんと覚えてないから無理して言わなくていいわよ。いらっしゃい。何か用事があるなら遠慮なく声かけてね。あ、ここは初めてかしら?」
「え……えっと……冒険者になったばかりで、一通り装備を替えたいと……」
カウンターの端に寄ったウルヴェスの事を気にしながら、話しかけてきたセレナに相談を持ち掛ける。
法王として広く知られているウルヴェスの今の姿がそこにある。人違いかと思い込みたくもなるだろう。
「初心者用なら展示物から選べ。どうせ成長するんだ。今の実力に見合う物を注文しても、別の物がすぐ必要になる。依頼は思う通りに来ない時期。出費は抑えとけ」
仏頂面のまま店主は客に声をかける。
「体格は人間型か。あぁ、俺は人族だからその視点で考えるんだ。お前の種族を下に見てはいない。獣人だな? だが初心者ならサイズが合う物を優先。強度は考えなくていい。人よりタフな奴らが多いからな。痛みに弱かったら、我慢しとけ。あとはお前の予算の都合くらいか……」
店主は言葉不足なりに、客へアドバイスする。
セレナとシエラがその意図を考えながら詳しく客へ説明していく。
そして店主が最後に一言。
「欲しいものが見つからなければ他の店に行く。欲しい物がきっとそこにあり、ここにはない」
「「まぁたそういうことを言う!」」
二人に咎められるが、客は防具を一通り選びカウンターに持ってきた。
ウルヴェスを気にしながらも普通に会計を済ませる。
「あ、あのぅ……」
「はい、何でしょう?」
シエラがにこやかに対応する。
「道具を作る仕事の依頼も受けるって聞いたんですが……」
「相談を受けてからだな。だがさっきも言った通り、初心者は成長は早い。適正不明だが。だから依頼を受けても無駄になる事も多い。成長しやすい面が分かってからでも遅くない。以上!」
セレナとシエラはどう答えようかと迷う。
が、すぐさま店主が答える。
受ける依頼の数が多くなると店主は依頼の仕事しかできなくなってしまう。業者から品物を卸すことがないこの店では、販売の方が疎かになってしまう。
営業方針はすべて店主に委ねていた。
店主の言葉をセレナが客に分かりやすく意訳して伝えると、客はそれで納得したのかやや安心した顔を見せて退店した。
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店内の空気が落ち着いてから、店主は一言呟いた。
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