美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

文字の大きさ
279 / 290
出発・別離・帰宅・番(つがい)編  別離

巨塊調査の現場にて 調査継続

しおりを挟む
 調査員達の、巨塊との遭遇の予想は当たった。

「ちょっと、これ、見てくださいよ」

 掘削作業員の一人が調査員達を呼ぶ声が響く。
 太陽の光が届かない、深くなった洞窟の奥。しかし魔術による照明がコンスタントに設置され、暗闇による死角はない。

 そんな中で一人の作業員が見つけた不審点。
 日の光が当たらないその奥は、それでも地熱が下から伝わるほどではないため温度が低い。
 洞窟内部の表面は湿り気が十分あることは一目ですぐにわかる。
 そんな湿り気が見られる中、その質が周囲と違う箇所がある。

「ぬめりがありますね。光の反射が見られます。今までのような速いペースで掘り進むのは危険かと思われます」

 作業員達も、ただ掘削と瓦礫の運搬だけすればいいというものではない。
 地質の変化にも注意深く、巨塊に対する知識も叩き込んでなければこの作業を順調に進めることは難しい。
 そしてそのぬめりは、セレナには見覚えがある。

「巨塊が動いた跡、よね」

「しかし、ということはこれも結晶化して宝石に変わるんじゃ……」

「宝石に変わるのは巨塊の体の一部。あくまでもこれは足跡、移動の痕跡よ。もし巨塊の知能が高かったら待ち伏せしてる可能性もあるわね」

 調査員同士の会話に作業員が入る。

「今日の作業の予定もそろそろ終わります。休憩は十分とは言え、疲労すべて解消されているわけじゃない。巨塊の急襲があれば被害は出ます。ここは……」

「うん。今日の作業はここまでにした方がいいんじゃないかと思う」

 セレナの提案にその場にいる調査団の全員が同意する。
 洞窟の入り口で待機していたウルヴェスに一部始終を報告。

「良い判断だったな。良く全員無事に戻ってきてくれた」

「もしやと思い、天井の方も見ましたが、同様のぬめりはありませんでした。何より気配がありません。魔力を感知しようと思ったのですが、魔力を失いながらも生存している可能性がありますので、魔力の存在を感知しないからそこには巨塊はいないという思い込みを避けたかったので……」

 調査員の一人がセレナに続いて報告をする。

「力場針でも調査しましたが、昨日と同様、全く感知しません。しかしぬめりによる光の反射はありましたので、重力に逆らえず下に潜ってからそんなに時間はたってないものと思います」

「うむ、全員いい判断をしてくれた。掘削作業員はその提案通り、進行速度を速めず、周囲に十分注意すること。それと明日からは作業前に、急襲されても抵抗できる魔力防御を妾が直にかける。慌てずに行動すれば怪我なく生還できるはずだ。調査員も感知範囲を広めること。セレナ、いろいろと負担をかけるが全員の警護も同時に頼むぞ」

 自分の命を大事にするなら、この時点で作業撤収するのも悪くはない。
 しかし人材よりも国と国民を憂う心を優先し実行した法王ウルヴェス。
 その心意気に感動し、勇気づけられた者も少なくはない。
 オルデン王国、そして天流法国の歴史上最悪の事態を招いた元凶に止めを刺し、国民全員の平穏な日々を取り戻すための計画からここで降りようとする者はいなかった。
 それはセレナも同様であり、何かしらの調査結果を得るまでは、今回の件も仮に襲撃を受けたとしてもただ逃げ帰るつもりはなかった。

 この日の朝もそうだったが、この時間も『法具店アマミ』のカウンターには、突然の手紙が現れる。

「今日も特に異常はないんだそうだ。ただ巨塊の存在の痕跡は見つかったんだと」

「無事に戻ってきたら、またいつもの毎日ですよね。あ、そしたらこの件の後は、この『法具店アマミ』の三人目の正式なスタッフになるための……」

「お前はまだまだ力不足だな」

 希望に満ちた目をするシエラを店主は一蹴。シエラにとって、多少何事もないとは言えない『法具店アマミ』の一日は終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...