美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

文字の大きさ
283 / 290
出発・別離・帰宅・番(つがい)編  帰宅

『法具店アマミ』にて 帰ってきた者はどっち?

しおりを挟む
 店主が寝転んでいる場所は洞窟の中だが、日中なら太陽の明るさが届く範囲内。
 しかしいつの間にか眠ってしまっていた店主がふと目を覚ましたのは、太陽が沈んで外もすっかり暗くなった夜。

「……兄弟子に去られ、師匠にも突き放され、そして今度はこの世界でも……」

 ぼそりと口にした言葉は、久しぶりに自分のことを振り返った素直な感想である。

「……夜、か。鍵かかってっかなぁ。ま、締め出されてたらどっかの宿に泊まりゃいいか。ウルヴェスー。そろそろ帰るわ」

 そう声を出すと周りがゆがむ。
 しかしそのゆがんだ景色は一瞬だけ。
 普通の景色に戻った周囲は、照明がすっかり落とされた『法具店アマミ』の内部の入り口。

「お帰り」

 すかさず後ろから声をかけられる。
 その声はすっかり聞き覚えのあるウルヴェスのもの。

「……おう。ただいま。遅い時間に済まなかったな。あぁ、謝罪とかはホントにいらねぇからな?」

 店主は笑顔で軽く応える。
 しかしウルヴェスには、店主のようには笑えない。

(お帰りテンシュ。っていうか、遅いぞ。こんな時間まで何してたの?)

 ウルヴェスを見ている店主には、後ろ、すなわちカウンターから声をかけられた気がした。

「シエラ? まだ起きてたの……お? おぉおお?! な、なんだよお前! な、何かの悪い冗談か?! おい、ウルヴェス! これは流石に怒るぞ! 馬鹿にするのも……」

「な、何の事じゃ。謝罪なら……」

(落ち着きなさいよ、テンシュ。ちゃんと話するから)

 カウンターから声をかけたのはセレナである。
 死んだと思われたセレナがカウンターにいる。

「……テンシュ、何かいたのか?」

「は? おまっ……。あぁ、暗いから分からな……あ?」

 ここで店主は気づく。
 明かりがついてない店内でウルヴェスの姿が分かるのは近くにいるから。
 遠くのカウンターに誰かがいるとしても、誰がいるかは分からない暗さである。
 にも拘わらず、そこにセレナがいると分かるのはなぜか。

「……魔物か?」

(よりにもよって、なんて失礼なこと言うのよ!)

「あぁ、そういうことか」

 納得したような声を出したのはウルヴェス。
 ありえない現象になるほどと腕組みをして頷いている。
 店主はウルヴェスとは対照的に慌てている。

「何一人で解決してんだよ! 説明しろよ! なんでセレナ……あ、本当は生きてたのか?」

「……期待させてすまんがテンシュ。セレナは……死んだ。だからこそそこにいるんじゃな」

「は……はぁ?!」

 ますます目を大きく開く店主。

「まず妾には、カウンターに誰かがいるのは分かるが何者かまでは分からぬ。じゃが推察するに、そこにいるのはセレナ嬢じゃな」

「あ、ああ、そうだが……」

「この世界では、命ある者が亡くなれば、みな次の生へと生まれ変わる。もっとも生まれ変わったら、生まれ変わる前の記憶も消えるのじゃが……」

 ウルヴェスの説明は続く。
 死んでから次の生へ生まれ変わるまでの期間は一律ではない。
 すぐに生まれ変わる者がいれば、次の生まで相当時間がかかる者がいるという。

「生前深く関わりを持つ者がおれば、亡くなった姿でその者と会うことがある」

「亡くなった姿って……」

「ま、簡単に言えば魂が生前の姿に変化して会いに行くということかの」

「それが今の……」

 そういいながらテンシュはカウンターを見る。
 そこには店主の方をにこやかに見ながら手を振るセレナの姿。

「いや待て。ってことたぁ、巨塊の元になった皇太子とやらとか魔導士とやらも生まれ変わるのか?」

「それはない。魔物と契約したり融合したりした者は、魂ごと消滅する。禁忌の業ということじゃな」

 災いをもたらす性分を持つ魂の存在を、この世界は許さないということらしい。
 店主はそれを聞いて少し胸をなでおろす気持ちになる。

「で、会いに来た魂はいつまでそいつのそばに居続けるんだ?」

「それは当人同士の会話によるな。じゃがそうか。セレナ嬢が来たか……なら妾はこれ以上ここにいるのは野暮ってもんじゃ。用心棒の件は続けさせてもらうぞ。じゃ、また明朝な」

 ウルヴェスはそう言うと、店から瞬間移動で立ち去った。
 あとに残されたのはカウンターにいるセレナと店主。
 セレナの笑顔がさらに明るくなる。

(ふふっ。お帰りなさい、テンシュ)

 言われるがままに答える店主。もちろん出てきた言葉はこの一言。
「……ただいま、セレナ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...