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網野ホウ

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巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇

『天美法具店』の店主の後悔の始まり 6

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 『天美法具店』の倉庫は、トルマリンの大きな塊が鎮座している通り沿いの隣の建物にある。
 宝石のストックもそこにある。

 店主には従業員に秘密にしていることがある。
 従業員どころか、すでに亡くなった両親にも伝えていなかったこと。
 それは、石を見て触るだけで、それが持つ力を知ることが出来るということ。
 だが実際にはその力の一部しか発揮されない。いわゆるパワーストーンと呼ばれる所以となる力だ。
 気のせいと思われるかもしれないが、店主が石を選別して作るお守りやアクセサリーは、同業者からも一目置かれる。
 それだけ購入者からの評判が高い。しかしその力があることを秘密にしているので、周りからは不思議に思われている。
 もっともそれは店主本人から言わせれば、超能力めいたものではなくただの勘としか答えようがなかったが。

 そして、高価な宝石にも力をほとんど持ってない物はあるし、そこらへんに転がってる石の中にも、宝石よりも力を蓄えられた石を見つけることもある。
 だから店主は、宝石の銘や産出地などにはこだわりは持たない。石の成り立ちにも関心はない。ただ、その石がどれほどの種類や強い力を持っているかどうかだけが『天美法具店』で販売する品物の材料の選別の基準となる。

 セレナが帰還するために必要となる力を所有していると思われる石を判別する。
 しかし今の店主にとっては、別世界の存在とそこに移動するという、これまでにない概念について考える必要があった。
 未知の現象に対応できる力を持っていそうな石を判別する必要がある。
 そうすると鑑別するための視点を変える必要がある。そうなると短時間で見つけられるかどうかが難しい。
 店主から診て目立つ性質や力を持つ石を手当たり次第に空き箱に放り込む。倉庫の中ではセレナとの会話は出来ないが、相談しながら選ぶ時間の余裕もない。
 しかし選ばれた石を見てセレナは目を丸くしている。セレナもある程度の力を判別できるらしく、選んだ宝石の力の判定の答え合わせで驚いているかのよう。
 A4判の封筒の束が入っていた四つの段ボールの空箱一杯に宝石を詰め、急いで店舗の入り口にキャリアで運び出す。

「判別基準をどこに置いていいかわからなかったが、目立つ力を持つ石を入れた。石の種類は関係なかろう? あとは調合するだけだろうが、俺にはそこまでは流石に分からん。普通のドアとしても使えるんなら、さっき言った通り対象者を限定できるなら好きなように細工していいぞ。散らばってるアクロアイトも箱の中に入れとくか」

 拾い集めながら店主はセレナの方を見ると、アクロアイトの塊に向けて杖をかざし、片方の手からは光が浮かび上がり、店の自動ドアに向かって放出されている。

 杖からも光が浮かび、大きな塊と段ボール箱に向かって光が放たれている。
 やがてその光が収まり、左右の自動ドアが接する面に何やら細工を施す。アクロアイトの大きさも少し変わる。段ボールの中に入った石もかなり減っている。

「終わりました。多分これで帰れるはずです。ちょっと協力願えますか?」

 そうは言われても、自動ドアの見た目は何の変化もない。セレナの言う通りこれで問題解決されるとなると、残された問題点は、やや小さくなったがそれでもまだ大の大人が五人くらいいても動かせないアクロアイトの塊が、ショーウィンドウの邪魔をしていることくらい。

 だがまずこのセレナに、元の世界に戻ってもらうことが重要だ。
 店舗の中に入ってからセレナから話を聞く。

「上に彫り込んだ文字に手をかざして、親指でタッチします。その後でいったん閉じてからドアを抜けると帰れるような仕組みにしました」

 親指以外だと偶然触る可能性は高い。だが親指だと、店主の場合は背伸びでもしない限り届かない。
 何のアクションも取らずにそこに親指が届くセレナの背の高さにここで初めて驚く店主。二メートル以上はあるようだ。
 しかも閉じる面に親指で触る。そして一旦閉じる。これを偶然に誰かが行うなどとは考えにくい。誰かが間違えて別のところに移動することはまず起きないだろう。

「テンシュさんもおいでになってみてください。さぁ」
「え? お前、ちょっと待っ……?」

 『天美法具店』の中からは、広くはない舗装された道路が見える。
 しかし突然セレナから無理矢理一緒に外に連れ出されたそこは、いつも見たその道路ではなかった。
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