12 / 290
巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇
『天美法具店』の店主の後悔の始まり 11
しおりを挟む
店主はセレナの住む世界から『天美法具店』に帰ってきた。
みんな帰った後の戸締りをするために、まずは事務室に向かった。
事務室の扉から、部屋の中の電気が漏れている。
「……向こうの世界でも気に食わん奴がいりゃ、こっちの世界でも気に食わないことをする奴もいる。戸締りくらいはやってもいいが、電気の消し忘れたぁ余分に電気料金かかるじゃねぇか。従業員全員揃ってミーティングして、そのまま帰るってどういうことだ?」
腹立たしい思いを押さえずに事務室の扉を開ける。すると。
「あれ? 社長? お帰りなさい。話の様子ではてっきり全員退社後に帰って来るものだと思ってましたが」
「あ、えーと。伝言通りにはならなかったようで、なんか失礼しました」
九条と注連野が店主の姿を見て戸惑っている。
「な……なんでみんなまだいるの? え? ちょっと待って、今何時?」
「七時過ぎたばかりですよ、社長。明日の予定を確認して終わりですが……来客との用事は?」
店主は言葉が出てこない。
セレナの世界に転移する前に、店主の目に入った時計の時刻は七時になったかならないか。向こうの世界ではいろいろ会話をして、剣の鑑定と説明にも時間はかかっていた。
店の入り口から事務室にたどり着くまでの時間を考えると、向こうの世界にいる間はこちらの世界の時間は止まっているも同然。
「向こうの世界にいる間はこっちの時間が進むことはない。ということは、向こうに仕事を持ち込めば好きな作業のし放題ってことか?」
「何のことですか? 社長」
「え? いや、何でもない。あ、あぁ。今からでもミーティングに参加していいか?」
「もちろんですよ、社長」
心の中で思ったことが口に出てしまった。幸いそれを聞いた従業員達は何のことかは分からないでいるようだった。
店主の職人としての技術は宝石の加工。この作業は手作業を中心に行われることが多いため、作業の完成までには時間がかかる。好きでしている仕事だが、多くの客の要望に応えられないのが悩みである店主にとって、どんなに仕事をしていてもこちらの世界での時間が無駄に消費されないのは非常に心強い味方になる。
おまけにこちらの世界に存在する石が持つ力。これをはるかに超える力を持つ石を望むだけ手に入れられるのも魅力。
しかし向こうの世界は未知な部分が多く、デメリットも計り知れない。
店主はセレナの要望に応えようかどうしようかと迷いに迷う。
「ちょ? しゃーーちょーーっ! きーいーてーまーーすーーーかーーー!」
「うぉう! あ……すまない、ちょっと最後の客からの話で考え事をしてしまった。申し訳ない」
「悪いところがあればすぐに謝って改めるのは社長のいいところなんですけどねぇ……大丈夫ですか? 明日の予定の事なんですが、お配りしたプリントに書かれてありますから。聞き逃しても大丈夫ですけど……風邪でもひきました?」
隣の席に座っている琴吹涼花が心配そうに声をかける。
「あ……いや……。あ、そうだ。東雲さん。発言していいですか?」
ミーティングの進行役は従業員の中で最年長の東雲。
「社長からそんな風に言われると恐れ多いですな。どうぞどうぞ」
東雲は少しおどけながら店主の発言を促す。
『天美法具店』の職場の中では一番上の肩書を持つ店主だが、従業員全員に発言する時には言葉に相当注意をしている。
ただ心の中で感じた事を言うだけでも、それを聞く者はみな部下にあたるので、その言葉を受け止めるときに今後の方針になったり予定や計画の一部になるような誤解をされかねないこともある。
みんな帰った後の戸締りをするために、まずは事務室に向かった。
事務室の扉から、部屋の中の電気が漏れている。
「……向こうの世界でも気に食わん奴がいりゃ、こっちの世界でも気に食わないことをする奴もいる。戸締りくらいはやってもいいが、電気の消し忘れたぁ余分に電気料金かかるじゃねぇか。従業員全員揃ってミーティングして、そのまま帰るってどういうことだ?」
腹立たしい思いを押さえずに事務室の扉を開ける。すると。
「あれ? 社長? お帰りなさい。話の様子ではてっきり全員退社後に帰って来るものだと思ってましたが」
「あ、えーと。伝言通りにはならなかったようで、なんか失礼しました」
九条と注連野が店主の姿を見て戸惑っている。
「な……なんでみんなまだいるの? え? ちょっと待って、今何時?」
「七時過ぎたばかりですよ、社長。明日の予定を確認して終わりですが……来客との用事は?」
店主は言葉が出てこない。
セレナの世界に転移する前に、店主の目に入った時計の時刻は七時になったかならないか。向こうの世界ではいろいろ会話をして、剣の鑑定と説明にも時間はかかっていた。
店の入り口から事務室にたどり着くまでの時間を考えると、向こうの世界にいる間はこちらの世界の時間は止まっているも同然。
「向こうの世界にいる間はこっちの時間が進むことはない。ということは、向こうに仕事を持ち込めば好きな作業のし放題ってことか?」
「何のことですか? 社長」
「え? いや、何でもない。あ、あぁ。今からでもミーティングに参加していいか?」
「もちろんですよ、社長」
心の中で思ったことが口に出てしまった。幸いそれを聞いた従業員達は何のことかは分からないでいるようだった。
店主の職人としての技術は宝石の加工。この作業は手作業を中心に行われることが多いため、作業の完成までには時間がかかる。好きでしている仕事だが、多くの客の要望に応えられないのが悩みである店主にとって、どんなに仕事をしていてもこちらの世界での時間が無駄に消費されないのは非常に心強い味方になる。
おまけにこちらの世界に存在する石が持つ力。これをはるかに超える力を持つ石を望むだけ手に入れられるのも魅力。
しかし向こうの世界は未知な部分が多く、デメリットも計り知れない。
店主はセレナの要望に応えようかどうしようかと迷いに迷う。
「ちょ? しゃーーちょーーっ! きーいーてーまーーすーーーかーーー!」
「うぉう! あ……すまない、ちょっと最後の客からの話で考え事をしてしまった。申し訳ない」
「悪いところがあればすぐに謝って改めるのは社長のいいところなんですけどねぇ……大丈夫ですか? 明日の予定の事なんですが、お配りしたプリントに書かれてありますから。聞き逃しても大丈夫ですけど……風邪でもひきました?」
隣の席に座っている琴吹涼花が心配そうに声をかける。
「あ……いや……。あ、そうだ。東雲さん。発言していいですか?」
ミーティングの進行役は従業員の中で最年長の東雲。
「社長からそんな風に言われると恐れ多いですな。どうぞどうぞ」
東雲は少しおどけながら店主の発言を促す。
『天美法具店』の職場の中では一番上の肩書を持つ店主だが、従業員全員に発言する時には言葉に相当注意をしている。
ただ心の中で感じた事を言うだけでも、それを聞く者はみな部下にあたるので、その言葉を受け止めるときに今後の方針になったり予定や計画の一部になるような誤解をされかねないこともある。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~
月神世一
ファンタジー
紹介文
「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」
そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。
失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。
「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」
手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。
電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。
さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!?
森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、
罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、
競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。
これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。
……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる