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巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇
近所の客一組目 1
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「へぇ~。ヒューリアさん達ってすごい人達だったんだねー」
「でもずっと本拠地不在にして依頼達成してきたんですよね? 上位二十に入るんじゃないんですか?」
双子はカウンターで、冒険者の大先輩二人に尊敬のまなざしを向けながらいろいろと聞きたがっている。
そんな四人に目もくれず作業を続ける店主。
「一チームの一件ずつで達成率とか計算してたら、斡旋所の人達の仕事がままならないわよ。一か月毎まとめて計算するはずよ? 今月はあと二十日以上あるから多くて後三回くらい依頼達成出来たら入れ替えの可能性はあるかも。難易度にもよるけどね」
「上位の人達もそれなりにこなしてればなかなか入れ替えにはならないけどね。受ける難易度もあまり下がらないし」
女子四人が集まってする会話としてはあまりふさわしくない中身。
そんな四人をほったらかしにして店主は仕事に励む朝食後。
「で、あなたたちは斡旋所に登録してからどれくらい?」
「えーっと……一年経ったかな? ねぇ、お姉ちゃん」
「そうね。リーダーのワイアットとギースはもっと前から冒険者してたって。ミュールは冒険者になったのも私達と一緒になったのも、私達のすぐ後だったかな。チーム結成っていうか、チームが今の体勢になったのは十か月前くらいかな」
店主に対してはほぼ丁寧な言葉遣いのウィーナが少し砕けた口調でヒューラーとキューリアの二人と会話をしている。
わずかな時間の間にそれだけ親しい間柄になったのだろうが、店主には特に思うところはない。
自分の店なら客が不在でも、客が来る場所での店の者同士の雑談には軽く注意はする。
アルバイトとボランティアの会話で、しかも店主は責任者という立場でもないつもりでいる『法具店アマミ』でのこと。好きなようにさせている。
「それにしても客来ないねぇ。ねぇ、そういう店なの? ここ」
しかしその会話の先が自分に向けられるとなると話は別。仕事の邪魔にもなる。
「俺が知るかよ! お前らもその一人だっただろうが!」
ヒューラーに話しかけられ、店主の集中力は完全に途切れた。
店主は時折、好きな仕事をしていても集中しにくくなる時がある。
依頼を受けている時は依頼人を待たせるわけにはいかない。気持ちが乗らないときでも仕事をしなければならないときもある。
しかもその邪魔をしてきたのはその依頼主の二人がバイトを巻き込んでのこと。目の前の仕事に集中したい者なら店主の怒鳴る気持ちも分かるだろう。
「失礼。誰かいますかな? ……珍しいモンが並んでおるの……。お、先客かの? なら少し待たせてもらうかの。この椅子、借りますぞ」
老人が一人、『法具店アマミ』に入ってきた。
白い髪の毛とひげ、そして顔や手の甲のしわで高齢と一目で分かるその男性はしかし腰も曲がらず杖もなし。ゆっくりと店内を眺めながら進んで行く。
まるで街中を散歩して、『法具店アマミ』がそのルートの途中にある公衆の休憩場所であるかのように、カウンターの前に椅子を持ってきてそれに座り、くつろぎ始めた。
それを見た店主は口調が一転。優しく丁寧になるが、四人に対してトゲのある言い方になる。
「気にしなくていいですよ。こいつらは客じゃなくてバイトとボランティアの警備係なんで。ってか、羽根の二人はともかくお前ら二人はいらっしゃいませくらい言えよ。バイト代出さねぇぞ」
「ほほう、女の子が四人とは。華やかになったの。いや、何よりじゃ。ワシはこの店の向かいの並びの店でボーカングを扱っとる店をやっとるチェリムっちゅうもんじゃ。もっとも息子らの世代に代替わりになったから隠居の身じゃがな」
「ボーカング?」
店主が聞き返す。
「あぁ、帽子屋チェリムさんね。防具屋さんなら何度も行くことはあるけど帽子屋さんには三回くらいしか行ったことないから気付かなかった」
「私も名前は知ってるけど、お爺さんの事は初めて見るから代が変わって相当経つのね」
ヒューラーとキューリアは、その老人の名前だけは知っていたらしい。
防寒具を扱う店だが寒い季節でしか売り上げが上がらず、一年通して客に店に来てもらうためになぜか帽子に注目したチェリムは従来の品の仕立て加え帽子販売にも特化させた。その結果、帽子屋チェリムの呼び名を定着させるに至った。
「……この店の昔の事は知りませんし知るつもりもないんですがね。セレナって言う女性に無理矢理連れて来られて、一応店主を名乗ってはいますが。それに事情もあって、相当な理由がなければ店外に出られないんですよ。だから近所にどんな店があるかも分かりません」
「え? 出ちゃいけなかったの? なんか悪い事しちゃった?」
「え? お姉さん達、テンシュさんを外に出したの? それまずいんじゃない?」
店主の説明が双子に混乱をもたらす。
外からの客からすれば五人は店のスタッフということになるので、内輪話の類になりかける。そこで盛り上がってしまうとこの老人も来た理由を話題にしづらくなる。
客がいないときならともかく、買い物をするかしないかは別として外から客が入って来たのに雑談のノリが続くのは流石に良くないと思ったのか、店主は顔をしかめる。
「セレナちゃんから誘われたんか。道理で初めて見る顔じゃ。これでもわしはセレナちゃんと同じくエルフ種でな。亜種じゃがの。よろしくな、兄ちゃん」
そんな店内の雰囲気にも気を悪くすることなく、老エルフはニコニコ笑っている。
「でもずっと本拠地不在にして依頼達成してきたんですよね? 上位二十に入るんじゃないんですか?」
双子はカウンターで、冒険者の大先輩二人に尊敬のまなざしを向けながらいろいろと聞きたがっている。
そんな四人に目もくれず作業を続ける店主。
「一チームの一件ずつで達成率とか計算してたら、斡旋所の人達の仕事がままならないわよ。一か月毎まとめて計算するはずよ? 今月はあと二十日以上あるから多くて後三回くらい依頼達成出来たら入れ替えの可能性はあるかも。難易度にもよるけどね」
「上位の人達もそれなりにこなしてればなかなか入れ替えにはならないけどね。受ける難易度もあまり下がらないし」
女子四人が集まってする会話としてはあまりふさわしくない中身。
そんな四人をほったらかしにして店主は仕事に励む朝食後。
「で、あなたたちは斡旋所に登録してからどれくらい?」
「えーっと……一年経ったかな? ねぇ、お姉ちゃん」
「そうね。リーダーのワイアットとギースはもっと前から冒険者してたって。ミュールは冒険者になったのも私達と一緒になったのも、私達のすぐ後だったかな。チーム結成っていうか、チームが今の体勢になったのは十か月前くらいかな」
店主に対してはほぼ丁寧な言葉遣いのウィーナが少し砕けた口調でヒューラーとキューリアの二人と会話をしている。
わずかな時間の間にそれだけ親しい間柄になったのだろうが、店主には特に思うところはない。
自分の店なら客が不在でも、客が来る場所での店の者同士の雑談には軽く注意はする。
アルバイトとボランティアの会話で、しかも店主は責任者という立場でもないつもりでいる『法具店アマミ』でのこと。好きなようにさせている。
「それにしても客来ないねぇ。ねぇ、そういう店なの? ここ」
しかしその会話の先が自分に向けられるとなると話は別。仕事の邪魔にもなる。
「俺が知るかよ! お前らもその一人だっただろうが!」
ヒューラーに話しかけられ、店主の集中力は完全に途切れた。
店主は時折、好きな仕事をしていても集中しにくくなる時がある。
依頼を受けている時は依頼人を待たせるわけにはいかない。気持ちが乗らないときでも仕事をしなければならないときもある。
しかもその邪魔をしてきたのはその依頼主の二人がバイトを巻き込んでのこと。目の前の仕事に集中したい者なら店主の怒鳴る気持ちも分かるだろう。
「失礼。誰かいますかな? ……珍しいモンが並んでおるの……。お、先客かの? なら少し待たせてもらうかの。この椅子、借りますぞ」
老人が一人、『法具店アマミ』に入ってきた。
白い髪の毛とひげ、そして顔や手の甲のしわで高齢と一目で分かるその男性はしかし腰も曲がらず杖もなし。ゆっくりと店内を眺めながら進んで行く。
まるで街中を散歩して、『法具店アマミ』がそのルートの途中にある公衆の休憩場所であるかのように、カウンターの前に椅子を持ってきてそれに座り、くつろぎ始めた。
それを見た店主は口調が一転。優しく丁寧になるが、四人に対してトゲのある言い方になる。
「気にしなくていいですよ。こいつらは客じゃなくてバイトとボランティアの警備係なんで。ってか、羽根の二人はともかくお前ら二人はいらっしゃいませくらい言えよ。バイト代出さねぇぞ」
「ほほう、女の子が四人とは。華やかになったの。いや、何よりじゃ。ワシはこの店の向かいの並びの店でボーカングを扱っとる店をやっとるチェリムっちゅうもんじゃ。もっとも息子らの世代に代替わりになったから隠居の身じゃがな」
「ボーカング?」
店主が聞き返す。
「あぁ、帽子屋チェリムさんね。防具屋さんなら何度も行くことはあるけど帽子屋さんには三回くらいしか行ったことないから気付かなかった」
「私も名前は知ってるけど、お爺さんの事は初めて見るから代が変わって相当経つのね」
ヒューラーとキューリアは、その老人の名前だけは知っていたらしい。
防寒具を扱う店だが寒い季節でしか売り上げが上がらず、一年通して客に店に来てもらうためになぜか帽子に注目したチェリムは従来の品の仕立て加え帽子販売にも特化させた。その結果、帽子屋チェリムの呼び名を定着させるに至った。
「……この店の昔の事は知りませんし知るつもりもないんですがね。セレナって言う女性に無理矢理連れて来られて、一応店主を名乗ってはいますが。それに事情もあって、相当な理由がなければ店外に出られないんですよ。だから近所にどんな店があるかも分かりません」
「え? 出ちゃいけなかったの? なんか悪い事しちゃった?」
「え? お姉さん達、テンシュさんを外に出したの? それまずいんじゃない?」
店主の説明が双子に混乱をもたらす。
外からの客からすれば五人は店のスタッフということになるので、内輪話の類になりかける。そこで盛り上がってしまうとこの老人も来た理由を話題にしづらくなる。
客がいないときならともかく、買い物をするかしないかは別として外から客が入って来たのに雑談のノリが続くのは流石に良くないと思ったのか、店主は顔をしかめる。
「セレナちゃんから誘われたんか。道理で初めて見る顔じゃ。これでもわしはセレナちゃんと同じくエルフ種でな。亜種じゃがの。よろしくな、兄ちゃん」
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