美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

文字の大きさ
40 / 290
巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇

近所の客一組目 1

しおりを挟む
「へぇ~。ヒューリアさん達ってすごい人達だったんだねー」
「でもずっと本拠地不在にして依頼達成してきたんですよね? 上位二十に入るんじゃないんですか?」

 双子はカウンターで、冒険者の大先輩二人に尊敬のまなざしを向けながらいろいろと聞きたがっている。
 そんな四人に目もくれず作業を続ける店主。

「一チームの一件ずつで達成率とか計算してたら、斡旋所の人達の仕事がままならないわよ。一か月毎まとめて計算するはずよ? 今月はあと二十日以上あるから多くて後三回くらい依頼達成出来たら入れ替えの可能性はあるかも。難易度にもよるけどね」
「上位の人達もそれなりにこなしてればなかなか入れ替えにはならないけどね。受ける難易度もあまり下がらないし」

 女子四人が集まってする会話としてはあまりふさわしくない中身。
 そんな四人をほったらかしにして店主は仕事に励む朝食後。

「で、あなたたちは斡旋所に登録してからどれくらい?」

「えーっと……一年経ったかな? ねぇ、お姉ちゃん」
「そうね。リーダーのワイアットとギースはもっと前から冒険者してたって。ミュールは冒険者になったのも私達と一緒になったのも、私達のすぐ後だったかな。チーム結成っていうか、チームが今の体勢になったのは十か月前くらいかな」

 店主に対してはほぼ丁寧な言葉遣いのウィーナが少し砕けた口調でヒューラーとキューリアの二人と会話をしている。
 わずかな時間の間にそれだけ親しい間柄になったのだろうが、店主には特に思うところはない。
 自分の店なら客が不在でも、客が来る場所での店の者同士の雑談には軽く注意はする。
 アルバイトとボランティアの会話で、しかも店主は責任者という立場でもないつもりでいる『法具店アマミ』でのこと。好きなようにさせている。
 
「それにしても客来ないねぇ。ねぇ、そういう店なの? ここ」

 しかしその会話の先が自分に向けられるとなると話は別。仕事の邪魔にもなる。

「俺が知るかよ! お前らもその一人だっただろうが!」
 ヒューラーに話しかけられ、店主の集中力は完全に途切れた。

 店主は時折、好きな仕事をしていても集中しにくくなる時がある。
 依頼を受けている時は依頼人を待たせるわけにはいかない。気持ちが乗らないときでも仕事をしなければならないときもある。
 しかもその邪魔をしてきたのはその依頼主の二人がバイトを巻き込んでのこと。目の前の仕事に集中したい者なら店主の怒鳴る気持ちも分かるだろう。

「失礼。誰かいますかな? ……珍しいモンが並んでおるの……。お、先客かの? なら少し待たせてもらうかの。この椅子、借りますぞ」

 老人が一人、『法具店アマミ』に入ってきた。
 白い髪の毛とひげ、そして顔や手の甲のしわで高齢と一目で分かるその男性はしかし腰も曲がらず杖もなし。ゆっくりと店内を眺めながら進んで行く。

 まるで街中を散歩して、『法具店アマミ』がそのルートの途中にある公衆の休憩場所であるかのように、カウンターの前に椅子を持ってきてそれに座り、くつろぎ始めた。
 それを見た店主は口調が一転。優しく丁寧になるが、四人に対してトゲのある言い方になる。

「気にしなくていいですよ。こいつらは客じゃなくてバイトとボランティアの警備係なんで。ってか、羽根の二人はともかくお前ら二人はいらっしゃいませくらい言えよ。バイト代出さねぇぞ」

「ほほう、女の子が四人とは。華やかになったの。いや、何よりじゃ。ワシはこの店の向かいの並びの店でボーカングを扱っとる店をやっとるチェリムっちゅうもんじゃ。もっとも息子らの世代に代替わりになったから隠居の身じゃがな」

「ボーカング?」
 店主が聞き返す。

「あぁ、帽子屋チェリムさんね。防具屋さんなら何度も行くことはあるけど帽子屋さんには三回くらいしか行ったことないから気付かなかった」
「私も名前は知ってるけど、お爺さんの事は初めて見るから代が変わって相当経つのね」

 ヒューラーとキューリアは、その老人の名前だけは知っていたらしい。
 防寒具を扱う店だが寒い季節でしか売り上げが上がらず、一年通して客に店に来てもらうためになぜか帽子に注目したチェリムは従来の品の仕立て加え帽子販売にも特化させた。その結果、帽子屋チェリムの呼び名を定着させるに至った。

「……この店の昔の事は知りませんし知るつもりもないんですがね。セレナって言う女性に無理矢理連れて来られて、一応店主を名乗ってはいますが。それに事情もあって、相当な理由がなければ店外に出られないんですよ。だから近所にどんな店があるかも分かりません」

「え? 出ちゃいけなかったの? なんか悪い事しちゃった?」
「え? お姉さん達、テンシュさんを外に出したの? それまずいんじゃない?」
 店主の説明が双子に混乱をもたらす。

 外からの客からすれば五人は店のスタッフということになるので、内輪話の類になりかける。そこで盛り上がってしまうとこの老人も来た理由を話題にしづらくなる。
 客がいないときならともかく、買い物をするかしないかは別として外から客が入って来たのに雑談のノリが続くのは流石に良くないと思ったのか、店主は顔をしかめる。

「セレナちゃんから誘われたんか。道理で初めて見る顔じゃ。これでもわしはセレナちゃんと同じくエルフ種でな。亜種じゃがの。よろしくな、兄ちゃん」

 そんな店内の雰囲気にも気を悪くすることなく、老エルフはニコニコ笑っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...